第八十六話 母娘の確執
私はナトリに全てを託した。私の体がなぜボロボロなのか、ソフィアに聞くことにした。
ソフィアは私を楽園に入れたくなかったみたいだが、無理矢理入った。
「母親であるイリス様が鍵だと思われます。彼女はもう悪魔ではないのに過去を遡っているみたいです」
「え? そ、それじゃあ私どうなるの」
「──私が止めます。それまで、あなたをしっかりと守ります」
「ありがとう、ソフィア」
私はソフィアに寄り添う。息苦しくて、声はもう出ない。ソフィアが優しく抱きしめてくれる。
「あ、あなたは」
「ソフィアにハナ。どうしたの? 」
お母さんが現れた。ソフィアが身構える。その格好は私が屋敷で会った時よりも不気味だった。
「私は魔女。だからこそ時の遡りについていけるのよ」
「人間でありながら魔女なのか」
「ええ、まあそうね。──ハナ、大分弱ったわね」
「やはりイリス様の仕業ですか」
「私に邪魔者はいらないの。役立たずは余計にいらない」
「──! 」
邪魔者……? 役立たず……? お母さん、どうして、そんなことを言うの? 私は……。
「それはハナのことですか」
「当たり前でしょう? 私、無理矢理ハナと再会したようなものだから」
「──さすが冷酷な魔女」
「誉め言葉としては上出来ね」
「イリス様、あなたは間違ってます」
「それはどうかしら」
笑うお母さんは昔の優しいお母さんと全く違っていた。泣きそうになりつつ、私はこらえる。
「リサテアはきちんと理解していたけど……あなたには私がどう見えていたわけ」
「……優しいお母さん」
「リサテア以下ってところかしら、理解力」
お母さんは私をにらんだ。リサテアの両親の話なんて聞いたことはないが、確か戦争の時に死亡したと……。
お母さんは私の体を踏みつけた。痛い……でも、私が……。
「ハナ! 」
「時の管理者は駒で遊んでいるみたいだからとことん邪魔してあげようと思うのよ」
「っ……」
「文句言ったって無駄だよ、これが私の本性なのだから」
「……」
お母さんは去っていった。踏みつけられ、かなり痛む。
「しばらく一緒に身を潜めましょう」
「ええ……」
まず、治療してもらう。ここには魔法を使えるものがいないので包帯巻くレベルだけど。
「……リサテアの母親は傲慢な女でした。異父姉妹であるイリス様はそんなのとは違う優しい方という印象でした」
「本性だとか言っていたわ、どういうこと」
「恐らく、他の者の知らないところであの様な性格だったのでしょう」
「……ねえ、さっき言っていた異父姉妹って」
「イリス様の母親は傲慢で浮気性のある女です。本当に罪深い女ですよ」
ソフィアの顔つきが険しくなる。そう、だったのか。
私にもその血が流れているんだろうな……。




