第八十四話 自らの手で
「八木中学校って不良だらけで有名なんですよ」
「へえ、不良だらけ……」
「私が3年生の時は窃盗が毎朝起きていたんです。犯人は分からないまま。物は返ってきませんでした」
「……それで、私の能力を? まあ別にいいけど」
すると、糸に何か引っかかったようだった。ミーナさんと共に確かめに行く。
教室には、糸に引っかかって転んでいる私の親友がいた。その手には──。
「……みっちゃん、朝早いね」
「凛子こそ」
「中学生の時の話はタブーって言ったけど、やっぱりおかしいよ」
「何言ってるの? 」
「……その財布、桂木さんのだよね」
「……」
「ミーナ、お願い」
「はーい☆……記憶操作っと」
みっちゃんが天然でほわほわした天才テニスプレイヤーになったのは高校生からだった。いわゆる高校デビュー。中学生の頃を黒歴史として封じたくなるくらいみっちゃんは不良だった。
みっちゃんだけではない。まだまだいる。早くどうにかしないと……。
「みっちゃんの犯罪は序の口だよ。器物破損、傷害……発覚すれば少年院送り免れないぐらいの犯罪もあってね」
「……人間も残酷ナノネー」
「ドン引きしたでしょ」
「まあね」
ミーナは自由に糸を操り、私が触れることのできない授業中のサボリ不良の監視もするらしい。すごく助かる。
HRも終わり、授業に。一度受けたはずなのに新鮮に感じる。
そしてお昼休み。みっちゃんと食べるために今日は屋上に行く。
「帆乃も一緒にいれたらいいのにね」
「そうだね~」
みっちゃんがお茶を買いに行っている間、私はミーナと会話をする。
「だいたいのことが分かったの。この中学校の勢力図がね」
「え」
「桂木若葉──彼女がこの中学校のトップね」
「……当たりだよ。その子に帆乃は目をつけられているの」
「それでさっき凌川みちるが桂木若葉の財布を盗もうとしたのは彼女が無力で大した力も持たないのだから私がリーダーなのだと示そうとしたから」
「すごいね」
「ま、そんな感じ? 」
「じゃあ、放課後に」
────
桂木若葉。凛子には悪いが、彼女については伏せることにした。どうせ糸使いのリーデルヒや私、リサテアぐらいにしか分からない。
「ルクシナ様」
「──ルナリによく似てるわ。ふふ、何かしら」
「ルクシナ様はどうやってここに? 」
「私をなめないでくれるかしら? この中学校、おかしいんだから変えたくてね」
「シルディと契約した彼女の記憶も改変するとは怒られますよ」
「別に気にしないわ。時の管理者も私に対しては怒れないでしょうし」
「……ところで、楽園の管理者は」
「近くにいるものよ。見落としてはダメよ。……さて、私は不良らしく演技を続けないとね! 」
すると、近くに時の管理者が現れた。不機嫌そうな顔を人形がしている。
「あんなイレギュラー、楽園の管理者が手を焼くのもよく分かる。でも、始末するのはこの私にとっては簡単。そう、この時間に閉じこめればいい──」
「……」
「人間への干渉はやめなさい。自分の手で変えさせるべきよ」
「……」
「駒だということを忘れないで。あなたの駒を落とすのは簡単なの、分かるかしら」
「それでも、こんな残酷な運命は……」
「黙って、見届けたかったけれどやはり許せないわ。人間と駒は違う。交わってはならないの」
「あなたは間違ってます、私達は仲良く出来ます」
「例えばだけれど、人間の中には宇宙人というのを信じない人もいるらしいじゃないの。そういう人は私達なんて信じられないわ、沢田明石のような奴はあまりいない」
時の管理者は消えた。──なぜ、なの。




