晩ご飯はトンカツに決定
「だってぇ~、櫻木さんの方がぁ、なんかアタシのこと好きみたいだしぃ」
「……はぁ?」
「………リサ…何言ってんの?」
私はまともに聞き返す事も出来なかった。
菜々ちゃんがもう一度、今の言葉を尋ねると、「いやマジで!」と自信満々に言ってくるリサ。
大丈夫か?この子。
「だって食堂入ってキョロキョロしたかと思うと、アタシら視界に入る場所に座って、し・か・も!チラチラこっち見るもん!」
「席は偶然でしょ?こっちをチラチラ見るのは多分私達の声が煩いか、気になる話題でもあったんじゃないの?」
「それに営業部は三階でしょ?でもわざわざ私達開発部のある七階の喫煙室や自動販売機使ってるんだよ」
「リサ煙草吸わないくせに見すぎ。それは多分喫煙室は二階から六階にはないし、一階は来客も使うから。ほら二階の経理部や四階の総務部も来るじゃん。そのついでに自販機も使ってるんでしょ」
非喫煙者にはどうでもいいだろうけど、この会社の構造は私達喫煙者にはいい迷惑だ。
敷地内完全禁煙とか、どんどん喫煙者への当たりが強くなってる風潮の中、喫煙所あるだけマシだけど。
私がリサの言葉を次々と切り捨てるとリサは、「それだけじゃないもん!」と叫ぶ。
ほら。
櫻木さんがこっちをガン見じゃん。
やっぱり煩かったんだな。
私はお詫びも込めて軽く頭を下げると、櫻木さんはにっこりと笑って同じように頭を下げてくれた。
人当たりの良い笑顔。
確かにリサの言う通り櫻木さんは素敵なイケメンさんだ。
うん。これは確かにリサが正しい。
でも、それはそれ、これはこれ。
「リサ、周りにも聞かれてるからいい加減黙って」と言おうとしたら再び弟の前からLINEが来たので、リサのことは菜々ちゃんに任せて私は意識をスマホへと戻した。
「……ねぇ、リサ」
「な~に?」
「櫻木さん、さっきからこっちチラチラ見てるけど」
「でしょ!?ナナもそう思うでしょ!」
「いや、だからってリサのこと見てるとは限らないでしょ」
「何言ってんの!?アタシのこと見てるに決まってるじゃん!アタシ以外何見るの!?」
「…………どっから来るの?その自信」
二人が何やら言い合っているけど、私は二人の会話を半分も聞いていなかった。
『今日の晩御飯はトンカツね』
「おっけー」のスタンプを送った私の返事に
「ヤッター!」
と喜ぶ可愛いキャラクターのスタンプを見て、私はまた自然と頬が緩んだ。




