ep.0~俺、天宮 前 高校二年生~前視点
彼女を愛してる
彼女の事を誰よりも愛してる。
彼女がいなくては俺の人生は終わってしまう。
彼女は俺の全てだから。
彼女を愛してる。
いつからなんてもう忘れた。
昔から……もうガキの頃から彼女を愛してた。
俺は彼女を愛してる。
彼女を愛して何がいけない?
彼女への俺の愛を誰にも否定させない。
彼女を愛してる。
世間が許さない?
知ったこっちゃない。
俺は彼女を愛してる。
俺の
バチンっ!!
「~~~~~~っ!? いっっったぁあ~~!!」
「授業中にボーっとしてんな、天宮」
「何してんの!? ソレ教科書でしょ!? 教師が生徒の頭を教科書で殴っちゃ体罰だろ!? しかも俺の教科書じゃん、ソレ!!」
「学生が授業中に授業を受けないのは職務怠慢だな。お前の場合は放棄か」
「職務怠慢って! 放棄ってなんだよ!? ちゃんと授業受けてんじゃん! お嬢!!」
「誰がお嬢だコラ!!」
「体罰だ!今の絶っっっ対に体罰だ!!訴えてやる!ネットに晒してやる!現代高校生のSNS舐めんなよ!!」
「カスハラって、きっとお前みたいな奴がそのまま大人になってやってんだろうな」
「どういう意味!?」
そう。
今はお察しの通り授業中。
俺は今、高校二年生。
青春を謳歌している。
天宮 前。
そして俺が愛しい彼女への愛に浸ってる真っ最中に俺の頭を、これまた俺の教科書で殴ったのが、お嬢こと、
城崎 要♂
「何度も言うが、男に『お嬢』っておかしいだろ」
「お嬢はお嬢様育ちなんだからお嬢だろ。城崎家の三男坊。しかも城崎だから城の城と嬢かけてんじゃん? むしろ褒めてよくね? 俺、凄くね?」
「よし。お前、放課後職員室来い」
まったく。
学校ってのは、ただでさえ億劫なのに、すんなり帰る事も許されないらしい。
そんな退屈な時間に愛しい彼女の事を考えるだけで、そんなに悪いってのか。
「ほら、んな事してたら授業も終わったぞ」
「よし。昼飯食おうぜ、翔」
「お前ね……。まぁ良い。放課後ちゃんと来いよ。あと、俺の事は城崎先生と呼べ」
「わかった。お嬢」
「何もわかってねぇよな、お前は」
やっと昼だ。
長かった。
俺が学校にいる間、唯一彼女を感じられる時間。
「翔、今日はどうする?」
「暑いから食堂行く」
こいつは中学からのダチ。
高瀬 翔太郎。
「んじゃ、行くか」
「………いいのか?」
「何がだよ」
「俺じゃなくて、可愛い彼女と一緒に食えよ」
「ジョーダン言うな。女子の中に一人で入って飯なんか食えねぇよ」
「……緒方と二人で食えって意味だけど」
「詩織と? なんでだよ。クラスも違うし……そもそも女子は女子同士で、恋バナとか陰口とか言いながら飯食うだろ?」
俺がそう言うと、翔はあからさまに大きく肩を落として、ため息をついた。
なんか失礼だな、コイツ。
「……誘えよ」
「誘ってんじゃん。基本毎日」
「俺じゃなくて、緒方だってば」
「だからなんで?」
「……………もう良い。行くか」
「??? おう。今日は何食うんだ」
「冷麺」
「あ~~……イイね。美味そう」
「と、見せかけて日替わり」
「……お前、たまに訳わからんボケをかますな」
翔の訳わからんボケは今に始まった事じゃない。
でも律儀につっこむのも、いい加減疲れてきた。
――食堂――
「今日の日替わり何だった?」
「無難にトンカツ」
「一切れくれ」
「じゃあ、お前のおかずも何かよこせ」
「断る。取られるくらいならトンカツいらない」
翔は昼休み、食堂で食うか、購買でパンやおにぎりを買う。
弁当も持って来てるけど、部活の朝練の後に部室で他の部員達と食ってしまうらしい。
そして俺は毎日弁当だ。
退屈な学校生活での唯一の癒し。
こればっかりは翔にもやらない。
絶対やらない。
翔も多分本気で欲しいと思ってない。
あれは俺が中学の頃。
クラスメイトにおかずを取られた俺は、即座にそいつに回し蹴りをかました。
床に倒れたそいつの股間を力いっぱい踏みつけるのも忘れずに。
翔はそんな俺の姿を間近で見てたからな。
俺の弁当は、愛しい彼女が毎日俺のために作ってくれる手作り弁当。
さて、俺の自慢の弁当、今日は何かな?
・枝豆ご飯
・鶏の唐揚げ
・海老フライ
・卵焼き
・きんぴら
・インゲンの胡麻和え
「今日子さんの弁当は相変わらず美味そうだな」
「これ見て『不味そう』とか言う奴いたら目潰ししてやる」
「………………………あっそ。さっさと食おう。また食った後に今日子さんに感想LINEするんだろ?」
「当たり前だし」
「………………………シスコン」
俺の愛する人の名前は
天宮 今日子。
俺は姉ちゃんを愛してる




