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#29 無茶は駄目だよ。

双魂譚と並行させて投稿しています。

――コンコンッ


扉を叩く音。

リリンの瞳がぱっと輝く。


リリン

「来た!」


足音を響かせ、

勢いよく扉を開けた。


そこに立っていたのは、

ヒュトロダエウスだった。


ヒュトロダエウス

「やあ!エメトセルクが起きないって聞いたよ」


その軽やかな声に、

部屋の重い空気がふっと和らぐ。


アゼムは、

すっと立ち上がる。

丁寧に頭を下げた。


アゼム

「お忙しい中、お呼び出ししてしまい、申し訳ありません」


ヒュトロダエウスは

両手をひらひらと軽く振る。

柔らかな笑みを浮かべた。


ヒュトロダエウス

「気にしないでいいよ。むしろ、キミの使い魔にちょっと貴重な体験をさせてもらったくらいさ」


ヒュトロダエウスは、

ベッドへゆっくり歩み寄る。

顔を近づけて覗き込む。


ヒュトロダエウス

「さて……どんな寝顔かな?」


その瞬間、

彼の瞳はぱっと大きく見開かれた。

息を呑む。


ヒュトロダエウス

「魂に、鎖が。それに…消えかけている」


アゼムは眉を寄せる。

低く。

声を震わせる。


アゼム

「え?それって…」


リリンへ振り返る。

視線は険しい。

声を張る。


アゼム

「リリン!昨日のこと、すぐにヒュトロダエウスに伝えて!」


リリン

「はーい!」


小さく跳ねる声。

ヒュトロダエウスへ駆け寄る。


両手を少し前に差し出した。

きらきらした瞳でヒュトロダエウスを見上げる。


リリン

「握手するの!」


ヒュトロダエウスは、微笑みながら頷く。

そっと手を取る。


触れた瞬間、

淡い光が指先からじわりと広がりる。


部屋の空気が、

静かに変わった。


リリンは、

嬉しそうに、

目を輝かせる。


ヒュトロダエウスは目を細める。

眉をひそめて険しい表情を浮かべた。


ヒュトロダエウス

「状況は把握したよ。リリン、ありがとう」


リリンは、

小さく頷く。


少し誇らしげに胸を張った。


頼もしさが、

小柄な体から伝わる。


ヒュトロダエウスは、

視線をそっとベッドに落とす。


沈黙が部屋に広がる。

重く張り詰めた空気が、エメトセルクの寝息と交錯する。


やがて、

重く悩むように声を絞り出した。


ヒュトロダエウス

「もしかすると……何かの呪いかもしれない……」


アゼムは、

目を大きく見開いた。


アゼム

「呪い……!?」


ベッドを見つめる。

部屋の緊張がさらに深まる。

アゼムは腕を組み、眉をひそめた。

思考を巡らせる。


アゼム

「どうすれば……この鎖、解けるの?」


ヒュトロダエウスは肩をすくめた。


ヒュトロダエウス

「夢に介入できれば……何かわかるかもしれない」


リリンは、

小さく胸を張り、

瞳を輝かせる。


リリン

「できるよ」


その一言に、

ヒュトロダエウスは思わず驚く。


ヒュトロダエウス

「え……今、キミが……?」


アゼムは慌てた。

リリンの肩に手を添えた。

低く落ち着いた声で言う。


アゼム

「リリン、無茶は駄目だよ」


リリンは、

少しむっとした表情を浮かべた。

瞳は揺るがず、真剣に頷いた。


アゼムは腕を組む。

深く息をつきながらリリンを見つめる。


アゼム

「たとえ夢に介入できても、どうやって現実に戻るつもり?」


ヒュトロダエウスは肩をすくめる。

静かに息を吐いた。


ヒュトロダエウス

「そこが、問題なんだよね」


リリンは

小さく胸を張る。

両手をぎゅっと握りしめた。


震えながらも力強く言った。


リリン

「リリンも、夢の中に行くから帰れるよ」


二人は、

視線を交わした。

互いに頷き合った。


ヒュトロダエウスは、探るように問いかけた。


ヒュトロダエウス

「……試してみるかい?」


アゼムは、

深呼吸した。


リリンの手をそっと握りしめる。

その温もりを確かめるように。

ゆっくりと頷いた。


アゼム

「怖い……でも、リリンが一緒なら」


二人は、

静かにフードをかぶる。

仮面を装着した。


まるで、

儀式へと臨む者たちのようだった。


アゼムは、

リリンへ視線を送る。


アゼム

「リリン、お願いできる?」


リリンは

ぱっと笑顔を浮かべる。

小さく手を握り返した。


リリン

「はーい!」


二人の掌がしっかりと結ばれる。


そこから溢れる魔力が、

やがて一つの流れへと繋がろうとしていた。


床に刻まれた、

魔法陣が淡く光を帯び、ゆらりと浮き上がる。


周囲の空気が震え、

耳に微かな低音が響く。


胸の奥に、

ひんやりとした感覚が広がった。


光が二人を包み込み、視界がゆっくりと歪む。

世界がふわりと揺れる。


床の感触が消え――二人は夢の中へと転送されていった。

最後まで、読んで頂き、ありがとうございます。

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