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第九話「車輪の音」④
街道の途中で、昼食を取った。
女主人が持たせてくれた包みを開けると、硬いパンとチーズと干し肉が入っていた。
質素だが、十分な量だった。
荷車を道の脇に止めて、四人で草の上に座った。荷台の五人も、それぞれ体を伸ばして休んでいた。
「昨日の宴、楽しかったね」
と蒼依が干し肉を齧りながら言った。
「そうだな」
とディルクが答えた。
「あの村で、あれだけ笑い声が聞こえたのは久しぶりだったと思う」
「ディルクさんは、あの村によく行くんですか」
「荷の運び先の一つだ。女主人には世話になっている」
ディルクはパンを手でちぎりながら続けた。
「あの村だけじゃない。街道沿いの集落は、互いに荷を融通し合って生きている。一つの村が打撃を受けると、周りにも影響が出る。だから賊の話は、他人事じゃない」
夜久はチーズを口に入れながら、ディルクの顔を見た。
荷運びの仕事をしている人間、ということ以上のものがある顔だった。
この街道の人の流れを、自分の血管のように感じている人間の顔だった。
「ディルクさんは、ずっとこの仕事を」
と夜久は聞いた。
「十五年になる」
とディルクは言った。
「親父の仕事を継いだ。自分の足で道を覚えて、顔を覚えて、それだけだ」
ゼータは食べながら、空を見上げていた。雲が一つ、ゆっくりと流れていた。




