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7話 手折らぬ筋が…?

「……またあんたかい。しつこい男は嫌われるよ」

ドラセナとユッカに突き飛ばされ、廊下の冷たい板間に尻餅をつくのは、これで何度目だったか。直里の額には滲んだ汗と、屈辱による赤みが混じっていた。

「まだだ。まだ、話が終わってない!」

直里は立ち上がり、閉ざされた扉に向かって叫んだ。

一度目は門前払い。

二度目は小判をぶちまけて無視された。

三度目は山荷葉大学の赤本を放り込まれ、破り捨てられた。

それでも直里は引かなかった。彼にとって、この「験担ぎ」は単なる迷信ではなく、初めて自分自身の足で向き合うべき「壁」に変わっていた。

「竜舌さん! あんたが山荷葉サンカヨウを嫌うのは勝手だ。でも、俺はあの大学で、この国の本当の姿を学びたいと思ってる。あんたが抱えているその『317年』を、ただの妄想で終わらせたくないんだ!」

扉の奥は、しんと静まり返っている。

廊下の陰でその様子を見ていたやり手婆が、呆れたように鼻を鳴らした。

「若旦那、無駄だよ。あの女はね、一度へそを曲げたらたとえ将軍様が来ようと、天変地異が起きようと、その座から動かない。それが『月下美人』一の意固地、竜舌の筋ってもんだ」

だが、その時だった。

ス……と、音もなく扉が数センチだけ開いた。

「……筋、ねぇ」

中から届いたのは、低く、湿り気を帯びた竜舌の声だった。

「坊や。あんた、さっき『本当の姿』と言ったね? 教科書のインクの匂いしか知らないガキが、本物の血の匂いを嗅ぐ覚悟があるのかい?」

「……ある。俺は、嘘を信じるためにここへ来たんじゃない」

直里がまっすぐに扉を見据えると、沈黙のあと、ふっと竜舌の嘲笑うような溜息が聞こえた。

「よかろう。そこまで手折られぬ筋があるというなら、その根性、少しだけ買ってやる。ただし……」

扉が大きく開け放たれる。

奥に鎮座する竜舌は、あどけない17歳の容姿に、老練な魔女の如き威圧感を纏って手招きした。

「ここから先、あんたが信じてきた世界はすべて瓦解する。山荷葉という名の花が、泥の中で何を吸って咲いているのか。その根元にある『死体』を、一つ残らず見せてやるよ」

竜舌の細い指が、手招きするように直里を誘う。

それは蜘蛛が獲物を巣の核心部へ引きずり込む、残酷なまでの優雅さだった。

直里はゴクリと唾を飲み込み、再びその禁域へと足を踏み入れた。

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