ワールドエンター
どうも。暁月 しゅかです。
知人の書いているVRMMORPGものに感化されて書きました。
それではどうぞ。
『ゴッドオーダー・グラントリィ』。
略称『GOG』。
ゲーム世界に入り込む、『ワールドエンター』式のVRゲームが大流行している今、『神ゲー』として人気急上昇中の『VRMMORPG』だ。
プレイヤーはゲーム世界に入り込み、世界を冒険することができる。
好きな街を見つけ、そこに移住したり。
採取アイテムを集め、新たなアイテムを生み出したり。
しかし、このゲームの醍醐味は、何と言ってもその『神を自身に降ろし、その神の力を使って戦う』、『ゴッドオーダー』システムだろう。
プレイヤーは、生身のままでも戦えるが、神を降ろしたほうがより強力になる点が、このゲームの人気を加速させた。
そして、ゲームに登場する神の殆どが『現実世界にある神話の神』という点も、このゲームが人気となった要因の一つだろう。
肝心な神の入手方法だが、世界各地に『祠』というものが有り、そこで神から出される試練を乗り越えると神が入手できる。
まさに、『クソゲー』の対義語と、『神を使えるゲー厶』の略称の、ダブルミーニングでの『神ゲー』として、注目を浴びていた。
とある高校…昼休み。
「なぁ、もうそろそろだよな…」
「楽しみだな…」
ガヤガヤと喧騒が響く。
そんな中、俺、『宇沙美 晴翔』は窓の外を見ていた。
窓には、焦げ茶の髪に黒の瞳を持つ、制服を着こなす少年が写る。
クラスの奴らの言葉に耳を傾けていると、節々に『GOG』という単語が含まれていることに気づく。
GOG…『ゴッドオーダー・グラントリィ』。
今、大人気のゲームだ。
なんか最近新イベントが始まるらしく、それが今後のゲームの内容を左右するとか。
…まぁ、そのゲームをやってない俺からしたら、興味ない話であるが。
そんな事を考えていると。
「ねぇ、晴翔君っ!私達も『GOG』、しようよっ!」
と、一人の女子が駆け寄ってきて言う。
その言葉を耳にした男子が、こっちを絶対零度の目でガン見してきた。
こいつは『南野 奏音』。
黒髪黒目。頭の天辺にお団子を作っている。
俺の幼馴染で、『学校1の美少女』と噂される人物だ。
そんな人物がごく平凡な俺に話しかけでもしたら、そりゃあこんな視線が浴びせられるに決まっている。
「奏音…。お前また急だな。どうしてだ?」
と、俺は気だるげに言う。
「…ほら。今、『GOG』、人気じゃん?だから一緒にしたくて。晴翔君、ゲームうまいしね。」
奏音が笑顔を見せて言う。
…こういうところが男子に好かれる原因なのだろう。
その奏音の言葉に、俺は、
「えぇ…。めんどくさそうだから俺はやらないよ。」
と返す。
そもそもイベントとか興味ないし。
俺はのんびりスローライフでも送ることができたらそれでいいんだが…。
「むぅ…。幼馴染のお願いが聞けないっていうの…?」
と、悲しげな声がしたので前を向くと、奏音が上目遣いでこちらを見てきていた。
…なんだその世の中の男子特攻を持つ爆弾は…!
そんな顔されたら…なぁ。
「…はぁ。わかったよ。やるやる。」
奏音の悲しげな顔に負け、俺は渋々GOGをやることに了承した。
「ほんとっ!?やったぁ!さっすが私の幼馴染!」
と、奏音が満面の笑みを見せる。
うん。この笑顔のためだったらやっても良かったかもな。
「…奏音。家にハードはあるのか?」
「…はーど?」
と、奏音が首を傾げる。
…こいつ…やろうって言ったくせにハードウェアっていう言葉知らないのかよ…
「あぁ。『エントランス・ライン』のことだよ。」
エントランス・ライン。
それは、任◯堂、ソ◯ーと並ぶ『3大ゲーム会社』の内の一つ、『デジタル・ユニバース』…略してデジユニが発売しているハードウェアで、ワールドエンター式のVRゲームが流行している今、一家に一台はほしい!というレベルの品物である。
ちなみに、デジユニは初のワールドエンター式のVRゲームを発売した会社であり、それを皮切りに『3大ゲーム会社』として台頭してきた会社だ。ネットでの呼び名は、『全盛期の任天◯』。
「あ、『エントラ』のことかぁ!大丈夫!あれなら“2つ”用意してあるよ!」
「そうか。それなら良か…え、2つ?」
おかしいな…。あれって発売初期こそ5,6万だったけど、人気沸騰しすぎて今や10万近く値段張るよ?
…それを2台…?
え、えぇ?
「うん。2つだよ?」
「そ、そうか。ソフトは?」
危ない危ない。計20万近くの値段に狼狽するところだったが、なんとか気を保つことができた。
「それも大丈夫だよ!ちゃんと“2つ”あるから!」
「…2つ…。」
「え?だって晴翔君エントラもGOGも持ってないでしょ?」
と、奏音が聞いてくる。
「ま、まぁ、持ってないが…。」
「やっぱり!だったら2個買って正解じゃん!」
いやあれもだいたい7,8千するよね…。
エントラの値段と合わせて大体36万…。
え、何、金持ち?
あぁ、そういやこの子いいところのお嬢様だったわ。
「…?なにかおかしい?」
「い、いや。特に。」
一つ言おう。金持ち怖い。
「ま、まぁ、集合時間はいつだ?」
「うーん…。まだわからないから、できる時間になったら連絡するね。」
「わかった。待ってる。」
奏音はそう言うと、俺に手を振り自席へ戻っていく。
俺も奏音に手を振ると、午後の授業に集中しようと、気合を入れ直すのであった。
〜晴翔の家・晴翔の部屋〜
現在、夜8時。
あの後俺は奏音からエントラとGOGを受け取り、家に帰った。
そして、今はパソコンを使い、ゲームの下調べをしているところだ。
「プレイヤーはまず最初に、『種族』、『武器』、『職業』を選ぶ…か。」
これはキャラクリで詰まりそうだな。
種族だけでも見ただけで大量にあるぞ。
『人間』やら『精霊』やら『魔物』やら…。
しかも、上記のものは大まかな括りで、本来はもっと細かく決めなければいけないらしい。
武器でも、『剣』、『弓』などがあり、それも細かく分けられているらしい。
また、『銃』や『鞭』などもあるようだ。
『職業』にしても、『傭兵』や『盗賊』、『錬金術師』等があるようだ。
「…まいったな。こりゃあ時間がかかるぞ。」
「…何見てるの?おにぃ。」
俺が何にしようか渋っていると、後ろから透き通った声がした。
俺が慌てて後ろを向くと、焦げ茶の髪に茶色の目を持ったポニーテールの美少女兼妹、『宇沙美 麗奈』がいた。
「なっ!?れ、麗奈!?いつからそこに!?」
「…今さっき。」
と、麗奈は済まし顔でいう。
「そ、そうか。」
「これ…GOG?…わたしやってるよ?」
「ほ、ほんとか!?い、意外だなぁ…。」
なんと。麗奈もやっていたのか。
「麗奈の種族とかは何なんだ…?」
「私…?私の種族は『エルフ』。武器は『弓』。職業は『メイド』。」
「め、メイド…?」
そんなんもあるのかGOG…。
「そう。パーティーメンバーに与えるバフが少し強力になる。」
「ま、マジすか。」
結構使えるくないか、それ。
「ちなみに、神は『精霊神【マキナ】』。」
「な、なんだそれ…。」
「ゲームオリジナルの神。精霊系の種族の魔法のクールタイムが短くなるのがパッシブスキル。ゴッドオーダー使用時はMP自然回復と、魔法攻撃超強化。『神威攻撃』…いわゆる必殺技は、『アクアヴェール』。力をためて、3本のレーザーを出す攻撃。」
「なるほど、魔法系特化型か。」
「そう。」
メイドが魔法を使ってる姿か…うん。想像しづらい…。
そう麗奈から教わっていると、スマホがメールの受信を知らせる。
差出人はもちろん奏音。文面はこうだ。
『晴翔君、おまたせ!こっちは準備終わったよ!先にあっちで待ってるね!名前は『メル』だよ!外国表記だと『Mel』だよ!』
と、送られてきていた。
メル…?
あぁ。奏音⇒音⇒メロディ⇒Melody⇒Mel⇒メルか。
俺はそれに、
『外国表記いるか?まぁ、できたらすぐわかるところに立っていてくれ。俺の名前は『ハル』。外国表記だと『Hal』だ。』
俺の方は、晴翔⇒晴⇒ハル(Hal)だ。
すぐに既読がつき、返事が返ってくる。
『もう…自分が外国表記いらないって言ったのに…まぁ、いいや。わかった。待ってるね!』
と送られる。
俺はスマホの電源を消し、麗奈に言う。
「俺はもうキャラクリしなきゃだから、いくわ。…あ、待てよ?麗奈、名前は?」
「私?私は『レイ』。…外国表記だと、『Rei』。」
と、したり顔で麗奈は言う。
というか、麗奈⇒麗⇒レイ(Rei)か。
なんか奏音以外名付けが単調というか…!
ま、いいか。
俺は麗奈に向かって口を開く。
「お前…奏音とのやり取り見てたのかよ…。まあいい。それなら話は早い。奏音のところに行ってやってくれないか?」
「わかった。奏音姉に近づくやつは全員ぶっ飛ばす…!」
おぅ…随分とやる気だな…。
「おう。任せた。じゃあ。」
「わかった。」
といい、麗奈は部屋を出ていく。
「さて…行くか。」
俺は部屋の電気を消す。
そして、ヘッドギアを頭に被り、ゲームの世界に入るために、ちょうど耳の部分にあるボタンを押す。
すぐに姿勢をリラックスさせろという旨の文章が出てき、俺の意識は遠くへ飛んでいく。
目を開けると、俺は白い空間に来ていた。
あたりにはいかにもファンタジー風なBGMが流れている。
俺がそのことを認識した瞬間、『ピコン』と電子音がなる。
そして、眼の前に文章が現れる。
『ようこそ、『ゴッドオーダー・グラントリィ』へ!!』
盛大なファンファーレのあと、次の文章が表示される。
『初期設定をします。貴方の名前を打ち込んでください。』
その文章の下に、2つのボックスが表示される。
上の方は『国内表記』。
下の方は『外国表記』と書かれている。
恐らく、ここをタッチすると…
『フォン』
という電子音とともに、パソコン配列のキーボードが出てくる。
俺は国内表記のほうに、『ハル』、外国表記の方に『Hal』と打ち込み、OKボタンを押す。
『ようこそ、ハル様!』
『まずは、種族を選んでください。』
という文章とともに、リストが表示される。
「何がいいんだろうな…。」
俺はリストをスクロールする。
『人間』や『エルフ』、『天狗』、『ケットシー』等があるが、『天使』等といったものはない。
それを選択できるようにすると本末転倒だからか。
「…まぁ、こういうのは無難なものでいいか。」
と俺は思い、『人間』をタップする。
すると、俺のアバターが出てくる。
…なるほど。デフォルトだとリアルの俺まんまか。
確か、バイザーにカメラ機能があるんだっけか。
ゲーム機も進化したもんだ。
俺は、特に手を加えることなく『OK』を押す。
すると、『ピロン』と音がし、眼前にメッセージが表示される。
『ハル様は『希少種族:稀代の人間』を引き当てました。』
「稀代の人間…?」
俺が呟くと、眼の前にtipsが出てくる。
『稀代の人間…ありとあらゆる種族に進化する素質を持っている希少な人間。』
と。
「あー…レア種族ってやつか。」
ゲームが進めやすくなりそうだ。
ラッキー程度に思っておこう。
『次は、武器を選んでください。』
という文章とともに、リストが表示される。
「…武器はなぁ…一つに決まってんだよなぁ。」
俺は『剣』のリストを開き、『細剣』や『両手剣』がある中、迷わず片手剣を選ぶ…選ぼうとしたのだが。
『稀代の人間は、1ジャンルの武器をすべて扱うことができます。』
と出てくる。
「1ジャンル…?なんか強くね…?ま、まぁいい…のか?とにかく、じゃあ『剣』で。」
俺は『剣』と書かれたボタンを押す。
『武器を、『剣』に設定しました。『剣術』スキルを習得しました。次に、初期装備を選んでください。』
ここで、剣のジャンルのリストが出てくる。
「ここで選べるのか。」
俺は改めて『片手剣』を選び、OKボタンを押す。
『続いて、『職業』を選んでください。』
ここでも、リストが出る。
「なにか『敏捷』が上がる職業はないかぁ…?」
というと、リストが整理される。
声に反応するのか…
「うわぁ…最先端。」
俺は、適当に一番目に来ていた『細剣士』というものを選択する。
この職業は、『敏捷』が上昇するのと、『武器の最高火力のクールタイム』が短縮されるらしい。
ただし、細剣装備時のみだが。
なら、何故俺がこの職業を選んだのか。
それは、一重に種族のおかげだった。
『稀代の人間の効果で、職業、【細剣士】がパッシブスキルに昇格し、更に効果が強化されました。』
と、システムがアナウンスする。
そう。種族のお陰で細剣士がパッシブスキルとなったのだ。
本当に『稀代の人間』様々だ。
『ハル様。初期設定が完了いたしました。それでは、ゴッドオーダー・グラントリィの世界をお楽しみください!』
という文章が表示されるとともに、浮き上がる感覚がする。
そして、視界が白く染まった。
光が収まると、俺は街に出ていた。
「…ここが…GOG…。1番最初の町…『王宮都市アスペント』。」
俺は、あたりを見渡す。
街にはきれいな装飾がしてあり、きらびやかだった。
更に、このゲームは時間が現実世界の日本と同調しているため、あたりは夜だったので夜景が更に綺麗だった。
俺はその街に見とれていた。
その時、
「や、やめてください!」
と、悲鳴が聞こえる。
聞き覚えがある声。
これは…
「奏音…!」
俺は悲鳴がした方に全速力で向かう。
そこには、チャラそうな男に腕を掴まれている黒髪黒目で、頭の頂点にお団子がある初期装備の『メル』というプレイヤーと、もう一人の男に腕を掴まれている銀髪青目で長髪のメイド服の『レイ』というプレイヤーがいた。
間違いなく奏音と麗奈だ。
奏音は現実世界そのままの容姿だ。
麗奈は…恐らくキャラクリしたんだろう。
「おいおい、抵抗すると殺すぞぉ…?」
と、チャラ男①は2人を脅す。
その男が出すオーラに当てられ、奏音は怖気ついてしまったようだ。
「ボス。もうやっちゃいましょうよ!」
と、もう一人の男…チャラ男②は言う。
それに、ボスと言われた男は答える。
「そうだな…もう、いいか。」
といい、短剣を取り出すと、頭上にかざす。
「やっ…やめっ…」
それを見た瞬間、俺は腰から剣を抜き、全速力で二人の間に割り込む。
俺が割り込んだ瞬間、男は短剣を振り下ろす。
「はぁっ!」
俺は振り下ろされた短剣を弾き飛ばすと、麗奈の手を掴んでいた輩を蹴り飛ばし、奏音の手を掴んでいる愕然としている輩も蹴り飛ばす。
俺は奏音の方を向き、言う。
「…悪い。少し遅れちまった。」
「…っ!お、遅いよ…!」
奏音は少し涙ぐんで言う。
「麗奈も、すまない。」
というと、麗奈は
「…おにぃは女心をわかってない。」
と、心にぐさりとくる言葉を放つ。
「うぐっ…」
「それと、『レイ』。ここでは、私はレイ。奏音姉は、『メル』。そう呼んで。おにぃ。」
と、釘を刺してくる。
うん…?
「え、俺はおにぃなのか?」
「うん。」
えぇ…違いはなに?
「おい…お前ぇ…自分が何をしたのかわかってんだろうなぁ!」
「叩きのめしてやるよ!」
と、先程の2人が起き上がってくる。
「はぁ…それはあんたたちだよ。かかってこい。」
「はっ!命知らずが!」
といい、2人が襲いかかってくる。
俺は初期から使える『剣術』スキルを使い、剣を脇に構える。
「「うおぉぉぉ!」」
と、男たちは考えなしに突っ込んでくる。
そして、剣の間合いに入った時。
俺は剣を振り抜く。
「『ライナー』。」
このスキルは、ただ単に剣を水平に振り抜くだけだ。
まぁ、本来『片手剣』スキルの最初の技らしいし。
しかし、俺の『稀代の人間』で強化された『細剣士』と、『剣術』スキルが乗れば、結構なダメージが狙えるだろう。
その証拠に、襲いかかってきた二人の男は、ポリゴン片を残してあっけなく死んでいった。
…ゴッドオーダー使えばよかったかな…。
『職業、【暗殺者】を撃破しました。132ゴルを獲得しました。経験値を獲得しました。ハルのレベルが3になりました。10スキルポイントを獲得しました。アイテム、【鑑定機・改】をドロップしました。』
というアナウンスが聞こえる。
あいつら暗殺者なのかよ。だからデュエルもせずに攻撃できたわけだ。
「ふぅ…お待たせ。かの…いや、『メル』、『レイ』。」
俺は振り向きつつ言う。
「…はると…『ハル』君っ!」
と言いながら、奏音…メルが飛び込んでくる。
「すまない。」
「謝ることないよ!さぁ!行こう!」
俺が謝ると、メルは関係ないよ!と言いたげな顔をする。
「あぁ。そうだな。じゃあ、レイ、案内よろしくな。」
「わかった。おにぃ。メル姉も、ちゃんとついてきてね。」
レイは俺達に忠告をする。
「わかった。」
「よろしくね。」
といった途端、レイが歩き出す。
俺達は置いて行かれないように、レイについていくのだった。
はい。
次回は、戦闘回にしようとおもいます。
このゲーム上では、どのような戦闘になるのでしょうか…!
ソレではばいなら!