初デュエル
どうも。今回は、前回の後書きで書いた通り戦闘回です。
このゲームの代名詞である、『ゴッドオーダー』を使う時が来ました…。
それではどうぞ。
「なぁ、そう言えばメルは、どういうキャラクリしたんだ?」
と、俺はレイについていきながら、隣を歩いているメルに聞く。
今は、武器屋に向かっているところだ。
「…ハル君。人に何かを聞くときは、まずは自分からって習わなかった?」
と、メルはジト目でこちらを見てくる。
「す、すまん…。えーと。俺は、種族は『人間』、職業は『細剣士』、武器は『片手剣』だな。…今の所は。」
「い、今の所?」
と、メルは俺の説明に首を傾げる。
「あぁ。ま、そのうち分かるさ。」
「そっかぁ…。あ、私の種族は『烏…」
「メル姉。そういうレア種族は、こういう人がたくさんいる場所では言わないほうがいい。」
と、いつの間にかレイが後ろに下がってきており、メルに釘を刺す。
「そうだぞ。メル。俺だって隠したんだから…。なぁ、レイ。このゲームって、武器屋とかはNPCが営んでいるのか?」
と、俺はレイに聞く。
すると、レイは前に戻っていきながら言う。
「NPCが営んでいるところもあれば、プレイヤーが営んでいるところもある。」
「そ、そうなのか。それで?今はどっちに向かってるんだ?」
「今は、NPCの方。プレイヤーの方は、ちょっと値が張るから。」
「なるほど…。」
そりゃそうか。
プレイヤーは利益を出したいんだもんな…。
「じゃあ、そこで言えばいいの?」
「うん。でも、他のプレイヤーがいるかもしれない。だから、ササッと武器を決めて、訓練場に行く気。」
と、レイは後ろを向きながら言う。
そして、右手を上げ、俺達から見て左を指差す。
「そして、もうついた。あそこが、武器屋。」
『カラン』と、ドアに付けられたベルが音を立てる。
「いらっしゃい!」
と、NPC特有の緑色のカーソルが頭に出ている店主が俺達を迎える。
「うわぁ…」
「量が多いな。」
俺達は武器が所狭しと並べられている光景に唖然とする。
「それは、このゲームの武器の種類が多い証拠。」
と、レイはこの光景がさも当たり前のように俺達に言う。
「そ、そうか。」
「それほど多いんだね…」
「うん。ということで、ふたりとも、武器、選んで。」
「「わかった。」」
俺達はレイの言葉に頷く。
「…とはいってもなぁ…。」
俺は悩んでいた。
なにせ、俺が扱える武器が『剣』なのだ。
大雑把なんだよね。
「うーん…職業が『細剣士』だから『細剣』を買うか…?」
多分…それがいいんじゃないかなぁ…?
片手剣は初期装備でも結構使えることが判明したし。
よし。そうしよう。
俺は今あるゴル…この世界の通貨のことだ…で買うことができる…あ、きちんと必要経費は残してある…1番高い細剣を手に取り、レジ?へと持っていく。
「まいどありぃ!」
と、店主の声を聞きながら、俺はメルとレイの下へ向かう。
「おにぃ…遅い。」
「そうだよ!女の子を待たせるなんて、ご法度何だからね!」
と、2人から罵倒される。
「す、すまない。けどこれにはちゃんとした理由があってだな…」
と、俺は言う。
「はいはい。言い訳はいいから、早く行くよ?レイちゃん、お願い。」
完全スルーされた…
「わかった。」
といい、レイは武器屋の後ろにある扉を開ける。
すると、俺達を光が包む。
目を開けると、そこには簡単に言えば『武道場』と呼ぶのに相応しい空間があった。
訓練用の案山子があったり、戦闘用のスペースがあったり。
「わぁ…すごい!」
「…でしょ。ここは、私達以外のプレイヤーは入ってこれない。それで?おにぃ、遅れた理由。」
メルがこの光景に感嘆?している中、レイは遅れた理由を詰めてくる。
というか、ここ、なんか『インスタントマップ』?だったっけ、なんかそんな感じのエリアなんだな。
その言葉が聞こえた瞬間、メルもこちらを向く。
「あぁ。実はだな。俺は、いわゆる『レア種族』を引き当てたんだ。」
「そうなの!?」
「…。」
俺の言葉にメルは驚き、レイは黙りこくる。
「それって何ていう種族!?」
「あぁ、『稀代の人間』っていう種族だ。そしてこの種族、扱える武器が『1ジャンル』なんだよ。」
「えぇ!?」
「…。」
なんかさっきからレイが黙りこくっているが…大丈夫か?
「れ、レイ?」
「…。」
「だ、大丈夫?レイちゃん。」
なんか暗い顔してるが…なんかあったのか?
「…メル姉、種族は?あと武器と職業。」
「わ、私?私は『烏天狗』で、武器は『ナイフ』、職業は『手品師』だよ?」
と、メルが言った時、レイの表情はもっと沈む。
「…メル姉、それ、『レア種族』。」
「え、そ、そうなの!?」
「なんで知らないんだよ。…あぁ…レイ…お前…。」
俺は、ここである1つの結論に思い至る。
それは…
「レイ…一人だけ『レア種族』じゃないのが気になってるのか。」
「…っ!お、おにぃには関係ない!」
どうしたものか…
あ、そういえば。
俺は自分の眼の前を人差し指と中指でタップしてメニューを開き、ストレージからあるアイテムを取り出す。
突如、俺の手の中に、デジカメが出現する。
「ハル君、何そのカメラ?」
「これか。これは『鑑定機・改』だ。」
「か、改?」
と、理解していない様子のメルに、俺は説明する。
「さっきの輩が落としていってくれたんだ。説明は…『鑑定ができる機械。プレイヤーに向けると、自分が見たい項目の詳細が1つ見られる。』…らしい。」
「ってことは…?」
「レイ、こっち向け。」
と、俺はレイに言う。
「…。」
レイは、暗い顔をしながらこっちを向く。
俺はレイにカメラを向け、写真を撮る。
『パシャリ』
と音がして、俺の眼の前に画面が浮かび上がる。
それと同時に、手の中にあったカメラが砕け散る。
『プレイヤー名 『レイ』
見たい項目をタップしてください。『種族』 『武器』 『職業』 』
俺は、この中から迷わず『種族』をタップする。
『 『種族』エルフ(精霊姫の器) 精霊神【マキナ】に認められている精霊。あるアイテムを手にすると、【進化】できそうだ。」
よしきた!
俺は、この画面を可視化する。
すると、その画面をみたメルが、レイに言う。
「レイちゃん!てぃたーにあ?の器だって!」
「ティ…ティターニア?」
レイは顔を上げ、俺が可視化した画面を見る。
「あるアイテム…?」
レイは首を傾げる。
「その『あるアイテム』っていうのがなにかはわからないが、レイは『進化』する素質を持っているってことだろ?だったら、どうにかして進化しようぜ。」
「そうだよ!私達みたいに、『最初から強い』じゃなくて、『努力した結果強い』のほうがなんか強そうだよ!」
「メル…お前なぁ…。まぁ、そういうことだな。だから、お前はクヨクヨする必要ないんだ。」
「メル姉…おにぃ…。」
俺達の声で、レイは顔を上げる。
その目には、少し涙が溜まっていた。
「ありがとう…おにぃ、メル姉。」
「あぁ。どうってことないぞ。」
「うん。そうだよ。」
俺達はレイを励ます。
「うん…。元気出た。おにぃ、私と戦って。」
とレイが言った途端、俺の眼の前にメッセージウインドウが表示される。
『プレイヤー名『レイ』から1撃決着式デュエルを申し込まれました。
了承しますか? YES NO 』
俺は迷わず『YES』をタップする。
すると、2人の間に『準備期間』という表示が出て、回転しだす。
その下に『残り60秒』という表示も出て、1秒毎に数字が減っていく。
なるほど。こうやってデュエルが進んでいくのか。
俺はメニューを開き、装備している武器を片手剣からおニューの細剣へと変える。
腰にあった重みが少し軽くなる。
『シャラン』
と、俺は音高く細剣を抜き、構える。
対するレイは、左手を前にかざす。
すると、その手に光が集まり、弓が現れる。
それと同時に、腰の後ろにも矢筒が現れる。
残り準備期間…5秒。
レイが弓を構える。
残り4秒。
「準備はできたのか?」
と俺は聞く。
残り3秒。
「バッチリ。」
と、レイが自信満々に答える。
残り2秒。
「じゃあ…行くぞ。」
1秒。
「絶対に…負けない。」
――0。
数字が0になった瞬間、俺は駆け出す。
しかしそれと同時に、レイが矢を放つ。
「ふっ!」
俺は射出された矢を避ける。
しかし、矢は次々と放たれていく。
俺は、それも避ける。
細剣じゃあ矢は防ぐことはできないだろう。
やっぱり現実とVRじゃあわけが違う…!
「このままじゃ…埒が明かない。『ゴッドオーダー』。」
レイがゴッドオーダーを使う。
レイの体を青い光が包む。
光が収まった時、俺の眼の前にはメイド服とは打って変わって、藍色に染まった着物を着ているレイが居た。
しかし、メイドの面影は残っているのか、いわゆる『和風メイド』というような衣装に変わっていた。
そして、体が青く光り輝いている。
「か、かわいい〜!」
と、メルが叫ぶ。
「あれが…ゴッドオーダー!」
俺は、レイから発せられる威圧感に狼狽する。
「…行くよ、マキナ。覚悟してね…おにぃ!」
レイは矢を番える。
そして矢を放たれる。
その矢は、こちらに向かって飛翔しながら数を倍増していく。
「おい、まじかよ…」
流石にこの量は避けることができない。
どうする…?
「…。やるか…!『ゴッドオーダー』!」
俺はゴッドオーダーを使う。
赤い光が迸り、あたりを染める。
光が収まったときには、俺の衣装は変わっていた。
初期装備から、赤い武士の鎧のようなものになっている。
これ、女性プレイヤーの場合どうなるんだろう。
まぁ、いいや。
初心者プレイヤー全員に必ず与えられる最初の神『戦闘神【ライア】』。
この神はゴッドオーダー使用時に攻撃パラメータを2段階上昇させるという効果がある。
その時に、『剣術』スキルを使うと…
俺は細剣を後ろに引き絞り、前に突き出す。
「『エストック』!」
凄まじい風圧が発生し、矢が吹き飛んでいく。
この技、本来は『細剣』スキルの1番最初の技らしい。
威力がバグっているが。
「うそ…。」
「今度はこっちの番だ。行くぞ。」
俺はレイに突っ込む。
この鎧、見た目よりかは重くないんだな。
「なっ!?『神威:【アクアヴェール】』!」
レイは神威攻撃を使う。
確か3本のレーザーが出てくるんだったか?
厄介だなぁ…。
「ならこっちもだ!『神威:【ノックアウト】』!」
対するこっちの神威攻撃。
それは、次の攻撃の攻撃力が2倍になるというものだ。
風圧で、3本のレーザーごと吹き飛ばす…!
「貫け、『エストック』!」
ちょうど、レイの持つ弓から3本の青いレーザーが出てくる。
そのタイミングに合わせ、俺は細剣を突き出す。
先程より数倍強い風が吹き荒れる。
俺が放った技は3本のレーザーの内“2本”を消し去る。
「嘘だろ…。」
“1本”…残った…。
その残った1本は俺の体を貫く。
レイが選んだのは『1撃決着式デュエル』。
1撃でも食らったら、負け。
…つまり。
地面に大の字で倒れた俺の眼の前に、『YOU LOSE』の文字が出てくる。
「まじ…かぁ。」
その時、張り詰めていた気が抜けたように感じ、俺の衣装がもとに戻る。
「おつかれ。おにぃ。」
いつの間にかメイド服に戻っていたレイが手を差し出してくる。
「あぁ。にしても強いな。さすがは先輩だ。」
俺はレイの手を取りながら素直に褒める。
「すごかったよ!レイちゃん!」
メルは…うん。もうちょっと語彙力をどうにかしようか…。
「そ、それほどでも。」
レイはそれを受け取り、照れているようだ。
「よーし!次は私だ〜!」
と、メルがやる気を見せる。
しかし。
「あー…メル。今何時か知ってるか?」
と、俺はメルに問う。
「え?今は…じゅう…にじ…え、12時?」
「そうだ。」
そう、もう夜の12時なのだ。
しかも明日も学校。
もう寝る時間帯だ。
「えぇ…まだやりたかったよぉ…」
「大丈夫。明日は金曜。存分に遊べる。」
と、レイがサムズアップする。
なんか今更だけど、メイド服で敬語じゃないと違和感あるな。
どうでもいいか。
「あ、そうじゃん!やったぁ!じゃあ、また明日もやろうね!ハル君!レイちゃん!」
「わかった。」
と、メルの言葉に俺は頷く。
「あー…実は、私『ギルド』に入ってて…今日はメンバーに無理言って抜けてきたから、明日は無理かも…。ごめん。」
と、レイは申し訳無さそうに言う。
「ううん!全然大丈夫だよ!むしろごめんね!私達のために!」
と、メルは謝る。
「大丈夫。また、なにか困ったことあったら言って。ログアウトはメニューにボタンがあるから。じゃあ。」
と言い残し、レイはログアウトする。
レイの体が光に包まれ、消え去る。
「さて…俺達もログアウトしようか。」
俺はメルにログアウトを促す。
「うん。」
メルは素直に頷く。
俺達は、同時にログアウトした。
現実世界で覚醒し、そのまま体を起こす。
ヘッドギアを頭から外した瞬間、スマホがメールの受信を知らせる。
差出人は、奏音。
『晴翔君、今日はありがとう!また明日もやろうね!じゃあ、おやすみ!楽しかったよ!』
と、送られてきていた。
「また明日も…か。」
正直、あのゲームは楽しかった。
『VRMMORPG』がここまで面白いとは、思ってもいなかった。
「こりゃあ、世間が注目する意味がわかった気がする…な。」
俺は夜空に視線を向ける。
一つ、星が明るく瞬いた気がした。
「さて…。」
俺は奏音に返信し、ベッドに入って眠りにつく。
奏音に送った文面はこうだ。
『今日は俺も楽しかった。また明日な。おやすみ。』
次回は、冒険回にしようと思います…。
2人は、この広大な世界を冒険して、新たな神を見つけられるのか…!?
それではばいなら!




