マウスバンドリウス
チック症ニキ
「安藤くん入れてなくない?次入れなよ〜」
デンモクが回ってきた ついにこの時が来てしまった…
ピッピッ…ピピッ!
「お!安藤ついに歌うのか!」
「湘南センスあるじゃん!」
「普通に楽しみだわ〜」
皆の目が集まる…緊張しちゃダメだ…歌詞とpvの動きに集中して…
「エンドレスウォウォんあ!ん、ん、んあ!」
シーン
「えなにそういうネタ?」
「どしたん?」
「体調悪い?大丈夫?」
…
悔しい…引きつった左目の付け根あたりが熱い…
バタッ
思わず部屋から飛び出してしまった…もう戻れない…あ、会費…渡し忘れた…引っ越すからもう会えないのに…
今日は中学の卒業式の打ち上げにクラス全員でカラオケに来ていた
みんな楽しんでたし俺もその場にいるだけで楽しかった
断ったら空気を壊してしまうと思って…浮かれていけると思って…大事な空間を…
…またあの時の夢だ
結局学校が始まる今日まで同じ夢を見続けた
あの後すぐにラインで謝った
みんな気にしてないよとは言われたが…それで晴れるような簡単な事じゃないんだろうな…
合格発表の日も心からは喜べなかった…
「隆介!遅刻するよ!あんた岡山は電車来ないんだから早くでなさい!」
あの後俺は2日後には荷物を纏め親の転勤の都合で岡山に来ていた
中学の定期テストはチックが止まらず大変でろくな成績じゃ無かったが、売名で得た内申と、距離の都合上個室での遠隔での受験が許されたため人に見られる緊張のない空間でレベルの低い田舎者と戦うのは簡単すぎて拍子抜けだった
「行ってきます」
たまに泥道になる剥げたコンクリの道を20分かけ歩き最寄りの駅から電車に乗った
今日入学であろうまだ丈の余る制服を着た生徒達が土人言葉で大声で話している…田舎者はマナーが悪いな…岡山に友達のいない俺には少し羨ましくも見えたが…エアコンの効きも悪い…景色もどこを通っても代わり映えしない…まあ人が少ない利もあるが…
今まで住んでいた神奈川との違いを楽しんでいるとあっという間に入学する岡山南高校に着いた
年季の入った汚い校舎だ
神奈川で高校体験で回った高校のどれよりも黒ずんでいて汚い…
まあ金のない田舎らしい高校だな、風情はある
校門に近づくと新入生を体育館に誘導する教師がいた
土人語が聞き取れないが恐らく前の番号を確認して並べと言っているのであろう
番号を確認し並んだらちょうど前後に女子に挟まれた
なにか話さないとなとは考えていたがまだ土人語は理解できないし女と話せるわけもないし話しかけてももちろん来ない
緊張を透かされないよう平静を装いながらチックを抑えるため必死に服の中で手をつねっていた
入場後は式典やありがたい話があったがもちろん土人言葉は聞き取れないし葬式で念仏を聞いている気分だった
長い式典が終わり担任発表と名前呼びだ
自分の名前はかろうじてすけの部分がききとれたので返事ができた
古臭い名前をつけてくれた親に感謝だ
シンプルなはいのみだったのでチックを抑えられたことに安堵しつつ教室に入った
前に掲示された席にぞろぞろと座ると
「僕が担任の室井亮紀だ!お前ら留年だけはするなよ!」
担任は土人語使いじゃないのか、立ち振る舞いからは都会の匂いがする、安心できそうだ
「とりあえず自己紹介するぞ!出席番号順に座ってるから順番が来たら立ってくれ!まずはあの安藤からだな!出身と好きな物とか夢とかなにか一言頼む!」
…まずい…心の準備はしていたがトップを意識すると途端に苦しくなる…初日からチックは出来ればバレたくない…
「困ってるのか?僕が手本を見せよう!銀河の果てからメテオに乗って室井亮紀参上!好きな物はポエムで将来の夢は車を飛ばすことだ!1年間よろしくな!」
…なんだこいつ…こりゃ土人島送りにされるわ…
教室は大ウケでみんな笑っている…嘘だろこれが土人ノリ…むしろ緊張してきた…
「じゃあ安藤!頼むな!」
やるしかないか…
ガタッ
「俺の名前は…安藤隆介…出身は…千葉だ…夢は…夢は…気持ちよく歌えるよんあ!んあ!んあ!」
…シーン
「…大丈夫か?トップはやっぱ緊張するよな!王の僕もそう思う!」
…最悪だ…俺の後に続き土人達の自己紹介が繰り広げられたが全員同じ顔にしか見えないし内容もろくに聞き取れない…俺はこれからどうすれば…
初日は自己紹介までで教科書を買えば帰れるようだ…自己紹介が終わり教師の軽い話の後誘導で体育館に連れられ、教科書や体操服を買って…そのまま最寄りに行き家に帰った
行きは田舎の空気を楽しんでいたが…俺は飲まれつつあった…
トゥレット症ニキ




