さあ、ギルドに行こう
「さあ!ギルドに行こう。」
異世界のギルド、漫画や物語で読んだことはあるが、本当に行くことになるとは夢にも思っていなかった。思わずワクワクしてしまう。
俺たちは領主の館を後にし、通りをギルドの方に下って行った。
ギルドの青い建物からは頻繁に冒険者らしい人達が出入りをしている。
ギルドのドアを開け中に入っていくと、屈強そうな剣士や杖を持った魔法使いと思われる人達が大勢おり、非常ににぎやかだった。
まだ駆け出しと思われる若いパーティや、熟練者の集まったパーティなど様々だ。
受付は二つ分かれていて依頼の受付でもう一つは買取の受付だった。
依頼の受付には二人、買取の受付には3人の女性の職員がいた。
新規登録は少ないので買取が兼務しているようだ。
俺たちが買取の列に並ぶと、何か周りから視線を感じる。賑やかだったギルド内が俺たちの周りだけ一瞬静かになり、こちらに視線が向けられているのだ。
「おい、あの娘、凄い美人だぞ。貴族の令嬢と言っても良いくらいだ。冒険者なのか?」
「あの獣人族の子もめちゃくちゃかわいいぞ。」
「いや、俺はあの女神様みたいな子がいい!」
「それにしても一緒にいるちんけな男は何だ?あんなのとパーティ組んでいるのか?」
「彼女たち、そんなやさ男とパーティ組んでも約に立たないよ!俺たちのパーティに入らないか?」
えらい言われようだな・・・。
俺たちは野次を無視して受付に向かった。
「すみません、冒険者の登録をしたいんですが。」
「はい、新規の登録ですね?私は受付のリン・シャープと申します。」
登録の受付嬢は細身ではあるが、凹凸もしっかりあり、黒いロングヘアーの知的な感じの秘書が似合いそうな美人さんである。ギルドの制服のタイトスカートがとても良く似合っている。
「俺は新規の登録になります。」
「こちらのお二人は?」
「俺とパーティを組む予定で、二人とも冒険者登録済みです。」
「それでは、貴方はこちらの用紙に必要事項を記載してください。」
「お二人はギルドカードを見せてください。」
ミュウとヴェルスが冒険者カードを出して受付嬢に渡した。
「お二人ともCランクの冒険者でヴェルス・ビーナさんが魔法使い、ミュウ・マオさんが魔闘士ですね。Cランク冒険者の方がいらっしゃるので、冒険者ランクの仕組みはご存じと思いますが、新規登録の方には冒険者ランクの説明をする規則になっていますので説明致します。」
「冒険者のランクは新規のFからE、D、C、B、AそれとSランクの7段階になります。受けられる依頼はそれぞれのランクで決まっており、FはFランクのみ、EはEランク以下、DはDランク以下というようにそれぞれのランク以下の依頼を受けることが出来ますので、ランクが上の方が依頼の幅が広がります。また、依頼の難易度はランクが上がる程高くなり、それに応じて報酬も高くなります。ただし、パーティの場合は、そのパーティのランクの一つ上の依頼を受けることが出来ます。」
「人数が多い方が有利だからということですね。」
「はい、その通りです。」
「俺たちのパーティは混成のランクになるけどパーティのランクは何になるんですか?」
「パーティのランクはそのパーティに所属している人たちがすべて同じランクならば、そのランクですが、今回の様にランクが異なるものでパーティを組んだ場合、パーティにいる最高ランク者の一つ下のランクがパーティのランクになります。あなた方の場合はDランクのパーティということになります。」
「ランクを上げるには自分のランクに該当する依頼を受けていただき、達成した場合は+1ポイント、達成できない場合は-1ポイントとなり、合計したポイントが10になった場合にランクアップとなります。なお、ご自分のランク以下の依頼ではポイントが付くことはありませんので、ご注意ください。それと同じFランクだとしても依頼内容によっては+2ポイントになる場合もあります。難易度はやや高くなりますがランクアップの早道です。」
「パーティの場合、ポイントは一律全員に付与されますが、今回の様に低ランク者と組んだ場合は最高ランク者にはポイントが付与されません。」
「いやあ、結構ランクの規則は厳しいですね。俺が早くランクアップしないといけないんだ。」
「お名前はゼント・タナミさんですね。スキルは『魔剣士』?」
「魔剣士ですか?魔剣士だとオリハルコンの剣をお持ちということですね?」
「いや、俺の剣はこれなんだけど。」
「ぼ、木刀ですか? オリハルコンの剣が無いからと言って冒険者登録が出来ないわけではありませんが、せめて鉄剣が無いと冒険者としてはやっていくのは難しいですね。」
「いや、この木刀を魔剣替わりに使えるのが俺のスキルなんだ。」
「ほ、本当ですか?・・・・よろしければ見せていただけませんか?」
思い切り疑いの目で見ている。
俺は木刀に魔力を付与して輝かせてラ〇トサーベルの様にブンブンとうならせて素振りをした。
受付嬢は目を丸くしてその様子を見ており、周りの冒険者たちも物珍しそうにその様子を見ていた。
「本当・・なんですね。こんなスキルは初めて見ました。ありがとうございます。」
「えーと、それでは、この用紙にパーティ名とメンバーの名前を記載してください。」
俺は3人で決めていた名前『白銀の翼』を用紙に記載した。
「それでは、こちらがゼントさんの冒険者カードになります。最終的な登録のためにここにカードのこの部分に貴方の血液を一滴垂らしてください。そうすれば他の人がこのカードを悪用したりすることはできなくなります。」
「それと、こちらがお二人様の冒険者カードになります。パーティ名を記載してありますのでご確認願います。」
「それでは新規登録とパーティの登録、合わせて銀貨8枚のお支払いになります。」
俺はケイン様に貰った袋から金貨を一枚出して渡した。
「金貨でのお支払いですので、おつりは銀貨7枚となります。」
「ところで、魔物関連の素材を買い取ってもらいたいんだけど。」
「どのような素材をお持ちですか?」
「魔石が主で、牙とか角とか。」
「それでしたら、そちらの受付に掲示してある依頼の中から該当する依頼を選んでいただければ、ポイントもついてお得ですよ。」
「そんなやり方もOKなんですか?」
「ええ、全然問題ありません。」
笑顔で答えてくれるリンさんがとてもかわいい♡ なんてことを考えていると。
「ゼントさん、早くあちらの受付に参りましょう。」
ヴェルスが引きずるように俺を依頼受付に連れて行った。
え?なんで・・・。
依頼の受付の脇の掲示板には様々な依頼が紙に書かれて掲示されていた。
薬草採取から、魔物の素材収集、魔物討伐、中には人探しなどもある。
「ゼント、ここにラインウルフの魔石5個というのがあるよ。」
「本当だ、これなら手持ちで十分足りるな。」
「こちらにはスピアブルの角1本というのがありますよ。」
「あ、でもこちらはBランクの依頼ですね。」
「ラインウルフはCランクだから受けられるね。数が多いせいか3ポイント付くぞ!」
「よし、まずはこれにしよう。」
依頼書を受付の女性に持っていこうとしていると・・・。
「ゼントさん、ちょっと待ってください!」
振り返るとリーナさんがそこに立っていた。
「ゼントさんの冒険者ランクは何ですか?」
「新人だから当然Fだけど?」
「やっぱり・・・、すみませんが、私と一緒に来てください。」
リーナさんは俺の腕をつかむと依頼の窓口にいる受付嬢に向かって。
「エーバさん、ギルマスいますか?」
「はいリーナ様、2階の部屋におりますが。」
「冒険者に関してお話があるので、少し時間を空けていただけないかギルマスに確認してください。」
「はい、畏まりました。」
エーバさんは、ギルマスに確認をとるため2階へ行き、少しして降りてきた。
「今からでもお会いすることが出来るとのことですので、2階のギルマスの部屋へどうぞ。」
「ありがとうございます。」
俺たちは、エーバさんの案内で2階のギルマスの部屋に入っていった。
部屋の中では左側の窓側に大きな机があり、手前にはL字型のソファーとテーブルが置いてあった。
机には品の良い初老の男性が腰かけていた。
「リーナ、君がギルドに来るなんて珍しいな、何の用だい?」
「ケニーおじ様、お忙しい所、お時間をいただきありがとうございます。実はこちらにいるゼントさんのスキップ(飛び級)のお願いをしたく、お伺いしました。」
「ほう、リーナからそんな話が出るとは思わなかったな、面白そうだから聞こう。」
領主の娘に対して妙に馴れ馴れしい感じもするが嫌味はなく、昔からの知り合いといった感じだ。
ギルマスは立ち上がり、こちらに歩いてきた。
背は190cmぐらいだろうか、長身でがっちりした体格である。
「私はここのギルドマスターをしているケニー・ヒキンズといいます。」
「俺はゼントといいます。」
「我はミュウです。」
「私はヴェルスと申します。」
「立ち話もなんですので、そちらのソファーにお座りください。」
俺たちは腰を下ろすと、リーナさんが俺がラインウルフを倒したこと、俺のパーティでは俺だけがFランクであってパーティとしての活動が不利であることを話していた。
「なるほど、お嬢様はこのゼントさんをFランクではなくスキップさせてより上のランクにしてほしいということですか?」
「そうです。これだけの力量の者をFランクとして扱ってはギルドとしても損失は大きいと思います。」
「確かに過去にスキップを行ったことはありますが、それでもある程度冒険者として実績を積んだ者ですので、新規登録者をいきなりスキップさせたことはありませんね。
「それでは、おじ様は父をFランクだというのですか?」
「いや、リーナも知っているようにケインはSランクだろう・・・。」
「・・・っ、まさか、ケインとやり合ったのか?」
「ええ、ほとんど互角に、最後になんとか父が勝ちましたが。父は身体強化のスキルを使ってましたので。」
「スキル無しでケインの身体強化と互角にやったってのか??」
「そうです。」
「そりゃあ、Fランクじゃないな。」
ギルマスは血相を変えていた。
ケイン様ってSランクだったの??? 俺、もしかして殺されるところだったのか?
「分かった。だがSランクは無理だぞ。」
「ええ、パーティを組んでいるお二人がCランクなので、Cランクはどうでしょうか?」
「Cじゃあ勿体なくないか? まあ、いきなりAランクも無理があるか。」
なんか、俺の意思とは関係なく話が進んでいるような・・・悪い方向じゃないからいいけど・・・。
「よし、Cランクにスキップだ。」
そういったかと思うとギルマスはテーブルの上のボタンを押してリンさんを呼んだ。
「リン、ちょっと来てくれないか?」
『はい、直ぐに伺います。』
機械を通したような声がテーブルのボタンから聞こえてきて、しばらくすると。リンさんが部屋に入ってきた。
イ、インターホンがあるんだ! ちょっと驚いた。
「なんの御用でしょうか?」
「ここにいるゼント君をCランクにスキップさせる処理をしてくれ。」
「え?、先ほどFランクで登録したばかりですが・・・。」
「私がサインをするから、スキップの書類を作ってくれたまえ。」
「は、はい直ぐに。ゼントさん、ギルドカードとパーティのカードをお貸しください。」
リンさんは俺のカードを持ってそそくさと部屋の外に出ていった。
「ケニー様、リーナ様、本当にありがとうございます。これで依頼の形で素材を引き取ってもらえる幅が広がりました。」
俺は二人に頭を下げてお礼をした。
「いや、優秀な冒険者を低ランクのまま使っては勿体ないのでな。」
「そうですよ、Cランクでも足りないぐらいですから。」
こんな褒められ方をされたので、俺は妙に照れ臭くなってしまった。
「ところで、今『素材を引き取ってもらう幅が広がった。』といったようだけど、手持ちで何か素材を持っているのか?」
「ええ、ソーリの森で収集した素材を結構持っていますよ。亜空間のスキルがあるのでそこにしまってあります。」
「何、亜空間のスキル持ちか? 冒険者で持っている者はほとんどいないぞ!そんなスキルがあれば商業ギルドで一旗揚げられるからな。」
「ゼントさん、どんな素材をお持ちなのですか?」
しまった、亜空間のことは言うんじゃなかったか・・・まあ、いずればれるか。
「ちょっと待ってください。」
俺は小物が置いてある区画だけを開けて手を突っ込んだ。
「えーっと、まずはホーンラットの角、フォレストバットの牙、キングバットの牙、スピアブルの角、ファイアーボーアの牙、・・・・各種魔石、あと薬草なども結構ありますね。」
俺は手持ちの『小物』をテーブルの上に次々に置いていった。
「・・・・・・・・」
・・・・ギルマスとリーナの目が点になっている。
俺もしかしてやっちゃった?
「これ、お前が全部倒したのか?」
ギルマスが点になった目を大きく見開いて聞いてきた。
「ええ、大部分は、あ、ああミュウが倒した魔物もありますが。」
「失礼します。スキップ用の書類とギルドカード、パーティカードを更新しましたので、持って参りました。」
リンさんがドアを開けて入ってきた。
「え、えーーー!!!」
え、どうしたの?俺何かまずいことした?
「な、なんですか素材の大群は? FランクからAランクまで選り取り見取り!!しかも全部ほとんど傷が無く一級品じゃあないですか~!」
リンさんが嬉々として俺が出した素材を見ていた。
なんかさっきと人格変わってない?
「ケニーさん・・・リンさんて・・・まさか・・・。」
「そう、彼女は素材マニアだ。それが高じて今の仕事をしている。」
ケニーさんはため息をつきながら頭を抱えていた。
「リン、落ち着きなさい!」
「あ、はいー!」
ケニーさんの一括でやっと我に返ったようだ。
「この素材はゼントさん達が収集したのですか?」
「ああ、そうだ・・・ほとんどゼント君の様だが。」
「それだったら、いっそゼントさんSにしちゃいますか?」
「それは流石にダメだ。君にもわかるだろう。」
「え、ええ、でもこれらを私の所に持って来てくれたら直ぐにAランクですよ。」
「え、ああ確かに、そうですね、いきなりCランクでも目立つのに、すぐにAランクは目立ちすぎなので、ぼちぼち持っていくことにします。」
「私もそれが賢明だとおもう。」
「え、そんなー勿体ないじゃないですか!」
「リン、いい加減にして仕事に戻りなさい。」
「はい!わかりました。」
ギルマスの一括で背筋を伸ばしたリンさんだったが、後ろ髪をひかれるように仕事場に戻っていった。
「これで君の実力がよく分かった。この実力なら今後は君たちを指名依頼をすることもあるので、よろしく頼む。」
「はい、わかりました。今日は本当にありがとうございました。」
俺はケニーさんと握手をして、部屋から出ていった。
「今日はスピアブルの角の依頼だけにしようか?」
「そうですね、その辺が無難と思います。」
俺たちはスピアブルの依頼の紙を受付のエーバさんの所に持って行った。
「この依頼を受けたいのですが。」
「はい、こちらの依頼ですね。それでは、ギルドカードとパーティカードを提出してください・・・・こ、この依頼は・・・。」
「ど、どうしたんですか?」
また、なんかやっちゃったか?
「この依頼はBランクなんですが、スピアブルを見つけることが困難なので誰も受けようとしなかった『デッド・クエスト』なんです。当初金貨12枚だったのが半年たっても依頼を受ける方がいないので、金貨18枚にアップしてポイントが2になっても受けていただける方がいないので困っていたところです。」
「この依頼は受けてから1か月以内に達成していただく必要があります。本当に大丈夫ですか?」
「ええ、問題ありません。」
「それでは依頼達成時に、この書類をもってあちらの受付までお越しください。」
「はい!」
俺は書類を受け取るとそのままリンさんの受付まで歩いて行った。
「ゼントさん、そちらの受付に行くのは依頼を達成してからですよ!」
エーバさんが驚いたように俺に呼び止めた。
「はい、既に達成しているので。」
「はぁ?」
エーバさんが間の抜けた声をあげてこちらを見ていた。
「リンさん、これお願いします。」
「はい!ゼントさんお待ちしておりました。」
俺はバックパックからスピアブルの角を出して目を輝かせているリンさんに渡した。
「ああ、この美し艶と輝き、傷一つない極上品ですね。間違いなくスピアブルの角ですね。
惚れ惚れします~。」
リンさんが恍惚とした顔でスピアブルの角にほおずりしている・・・。
「あのぉリンさん、もしもーし。」
「あ、ああ、はい、すみません、ちょっと行ってしまっていたようです。冒険者カードとパーティカードを出してください。」
「はい。」
俺たちはカードをリンさんに渡してポイントの登録をしてもらった。
「こちらが、依頼の達成報酬金貨5枚になります。」
「はい、ありがとうございます。」
後の話と辻褄が合うように登録料と買取金額を見直しました。




