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リバイアサン②

 次元槍ディメンションスピアに貫かれたリバイアサンはゆっくりと川に倒れていき盛大な水飛沫を上げた。


「よし、ちょっと奴の所に行ってくる。」


「何をするつもりじゃ?」


「奴を助ける。」


 ゼントはそう言うとブルーと一緒にムーブで転移していった。


「奴を助けるだと?何を考えてるんじゃ?」


 ゼンは怪訝そうな顔で川に倒れているリバイアサンを見つめた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 コントローラが埋め込んであった場所は急所なので普通は即死なのだが、リバイアサンは強い生命力によって辛うじて生きながらえていた。


 ゼントはリバイアサンの頭の上に立つと、腰をかがめてリバイアサンに右手を当てた。


(橋を壊そうとしたのはお前の意志か?)


(なんだ貴様は?人間か?お前の勝ちだ、さっさと止めをさせ!)


(良かった、やっぱり対話できるんだな。それなら俺の質問に答えてくれ!橋を壊そうとしたのはお前の意志なのか?)


(ふん、誰が好んで真水に近い所まで来るか!我は陸になんぞ興味は無い。恥ずかしながら、背中に打ち込まれた何かに操られておったのよ。せめて、こいつを打ち込んだ奴に一矢報いてやりたかったが・・・・我はお前達に負けた。これ以上生き恥をさらす気はない、早く止めを刺してくれ。)


(そうか、じゃあ一矢報いてやろうじゃないか。)


(なんじゃと?)


 リバイアサンの体はゼントが触っていた部分から輝きだし、輝きは全身に広がっていった。


(これは・・・・エクストラヒールか?)


(ああ、そうだ。)


(何故、我を助ける?)


(お前って別に悪いモンスターじゃないだろう?)


(悪い?モンスターに悪いも良いもない、それはお前ら人間の見方だろう。)


(ごめん、言い方が悪かった。お前は人間を攻撃したり食べたりするわけじゃないだろう。嵐の中で難破した船の乗組員達を助けたこともあるそうじゃないか?)


 ゼントは水中に没している時、リバイアサンのことをコネクトに調べてもらったのだ。


(我の主食は海藻じゃから、人間などは食わん! 助けたというのは・・・まあ、気まぐれだな。)


(そんな奴を殺すってのはちょっと気が引けたのでね。背中に打ち込んであったコントローラを破壊したんだ。)


(あれはコントローラと言うのか? 忌々しい!)


(誰があれを打ち込んだのか覚えてないか?)


(打ち込まれたのは覚えているが、どこぞの誰かは分からん。そう言われてみれば、魔力で動く船を使っておったな。)


(魔力で動く船?)


(そうじゃ、あの船の動きが速く、攻撃してきた一艘をを追いかけておったら、あっという間に何艘かに囲まれたかと思うと背中にそのコントローラと言うものを打ち込まれたんじゃよ。)


(そうか、その場所はどの辺だった?)


(サルガス海の西の方だったかな。)


(オーマ国に近い場所ってことか・・・。)


(確かにオーマ国に近い場所じゃったな・・・まさかオーマ国が!)


 リバイアサンは体を起こし怒りに満ちた目をした。


(いや、それは確定事項じゃないって。)


(いや、最近あの国の方から毒水が流れてくるようになったんじゃ。それで様子を見に行く途中でコントローラと言うやつを打ち込まれたんじゃよ。)


(毒水?)


(そうじゃ、妙な味がする毒水じゃ、あの水を濃い状態で飲んだら普通の魚やモンスターは助からんじゃろうな。)


(ん、もしかしてお前飲んじゃったの?)


(もちろん、もっとも儂はあんな毒水はものともせんわい!)


(ちょっと待って。)


 ゼントはリバイアサンとの会話を止めてコネクトと相談し始めた。


(こいつが毒水飲んだってことは体内に毒があるってことだよね。コネクト、血液を調べればどんな毒かわかるか?)


(ハイ、オソラク分析出来ルトオモイマス。リバイアサンノ体ニ着イテイル血ニ触レテクダサイ。)


 ゼントはコネクトが言うようにリバイアサンの右手近くに付着している血に触れると、手が触れた辺りが少し輝きだした。


(な、何をしておるんじゃ!)


 リバイアサンの戸惑う念話がゼントに聞こえてきた。


(毒がなんだか調べているんだ。)


(そうか、お前そんなことも出来るのか?)


(血液ノ分析ガ終ワリマシタ。異質ナ成分トシテシアン化合物ト金属成分トシテクロムと錫ガ検出サレマシタ。)


(シアン化合物って猛毒じゃないの?一体何でこんなものを海に?)


(コレハ推定デスガ、電気メッキニ使用シタ溶液ヲ排水シタモノデハナイカト。)


(メッキねぇ。まあ、この世界では排水処理なんて考えていないか。日本でも昔は公害騒ぎがあったっていうしね。あんたもうオーマ国には近寄らない方が良いよ。)


(ああ、そうすることにしよう。)


(それじゃあ、もう帰っていいよ。)


 ゼントはヴェノを使ってリバイアサンから飛び立った。


(な、なんじゃと我に帰ってよいじゃと?)


(ああ、エクストラヒールで血液から毒水の成分も排出出来ているからもう大丈夫でしょ。)


(いや、そういう意味じゃない。我に礼をさせぬ気か?)


(お礼なんていいよ。こっちもかなりあんたをいたぶったんだし。)


(いや、それでは我の気が済まぬ!)


(・・・・・そうじゃ、我がお主の従魔になってやろう。どうじゃ!)


(お断りします!!)


 ゼントは間髪入れずに答えた。


(何でじゃ————!我は海の王者だぞ!)


 なんか面倒くさい奴だなとゼントは思った。


(こんなでっかい龍が王都にいたらみんなパニクルだろう!)


(いやいや、我は小さくなれるし、陸でも生活できるぞ!)


(ダメ―!ゼントの従魔僕だけ!)


 ゼントが反論する前に肩に止まっていたブルーが口を出してきた。


(なんじゃ、おお、先程の青い鳥・・・・まてよ、お前は聖獣じゃないか!)


(聖獣かどうかはしらない。でもゼントの従魔、譲らない!)


(聖獣を従えるほどか、ますます気に入った。我は主の従魔になるぞ!)


 リバイアサンはそう言うと自身の魔力を解放してゼントを包み込んだ!


「お、おい何を!」


 リバイアサンの魔力に包まれたゼントは動けなくなってしまった。魔力量ではリバイアサンの方が遥かに上なのだ。


(黙っておれ、今済むから!)


「済むって何が―————! おわ———っ!」


 ゼントは急に輝きだし左手の甲に驚いて見つめていると、光が急激に強くなったかと思うとパッと消えた。


「えっ?何この痕?」


 ゼントの左手の甲には不思議な形をした模様が刻まれていた。


「どうじゃ、格好いいじゃろう!」


(ドウヤラ主ハ勝手ニ従魔契約サレタヨウデス。)


「何だと―!」


 コネクトの説明に驚いたゼントはゼントはリバイアサンの方を見て凝固した。


「ど、どちら様で?」


 ゼントが見た方向には金髪グラマーな美女が素っ裸で宙に浮いていたのだ!


「儂じゃよ、儂!リバイアサン!」


 ゼントは状況が飲み込めず一瞬凝固した。




 こいつ見た目は美人なんだが、何でばあさん言葉なんだ?まあ、もう一人似たようなのがいるけど・・・。


「とりあえずこんな所にいてもしょうがないから橋まで行くぞ。」


「そうじゃな。」


 ゼントとリバイアサンが橋に飛んでいくと、ヴェルスとミュウが走り寄ってきた。


「ひ、ひぃ!」


 リバイアサンはミュウ達を見て真っ青な顔で怯えてゼントの後ろに隠れてしまった。


「ゼント、誰だこの女? 何怯えてるんだ?」


「そうですよ、私達を見て怯えるなんて失礼じゃあないですか!」


 ヴェルスが珍しく不機嫌そうな顔でリバイアサンを覗き見ると、顔を青ざめて縮こまってしまった。


 リバイアサンはとどめを刺したゼントの攻撃は一瞬だったので恐怖は無かったのだが、右手を落としたゼン、逆鱗を思い切り叩いたミュウ、最後に絶対シールドで押しつぶしてきたヴェルスには死の恐怖を味わされたためトラウマとなっていたのだ。


「ひ、ひぃ———————!」


「この女性はリバイアサンだよ!」


「「え??」」


 ゼントの言葉を聞いて二人共目を丸くして口をぽかんと空けていた。


「とりあえずこんな恰好をさせておくのも何だから、ヴェルスの服をかしてもいい?」


「ええ、でもサイズが合うかどうかわかりませんよ。」


「大丈夫じゃ、体形はそのおなごを参考にしたでな。」


「え、いや、なんてことをするのよ!」


 ゼントは思わず裸のリバイアサンと恥ずかしそうに両手で胸辺りを手で隠すように抑えているヴェルスを目線で比較してしまった。


「いや――!ゼントさん何考えてるんですか!エッチ!」


 バッチ———ン!

 

 ゼントは思い切り頬を叩かれて橋の欄干まで吹き飛ばされた。


「どうじゃ、やっぱり怖いじゃろ。」

 

  リバイアサンがゼントに近づき同意を求めるとゼントは欄干に張り付いた状態で頷いた。


 ヴェルスはゼントに駆け寄ると抱き着いて泣きながら謝っていた。


 リバイアサンがヴェルスの服をご満悦で自分の姿を確認していた。


「ほう、人間の姿もなかなかいいもんじゃのう。」


 背格好が本当にヴェルスと一緒だ、顔も少し似てるけど目がつっていてきつい顔してるな・・・・どっかで見たことあるような・・・・そうだウル・・。


 ピカッ!ドンガラガッシャ————————ン!!


 ゼントが心の中でウルまで行ったところで、天空からゼントに雷が落ちたのだ。


「けほっ!」


 ゼントは黒焦げでチリヂリの頭になって呆然としていた。


「姉さんなんでゼントさんの心を読んでるの?」


 ヴェルスは自分もゼントの心を読んでいることを棚に上げてぼそりと呟いた。


「なんで雷で遊んでるんじゃ!」


 落雷で黒焦げになっているゼントを蔑む様な目でゼンが見ていた。ゼンはゲンに船の代金を支払った後、橋まで走ってきたのだ。


「お、お前がリバイアサンかい。」


「ひっ!わ、儂じゃが、う、腕はやらんぞ!」


「お、すっかり元通りかい。まあ、そんなものは要らんわい。」


「ああ、そうかい。あんた話がわかるな。」


「それより、折角服を着たところ悪いんだが、もう一度元の姿に戻って川に入ってくれかのう。」


「な、何だい、ま、また皆でいたぶろうってのかい?」


 リバイアサンは怯えた目でゼンを見つめた。


「いや、元の姿に戻って海に帰ってくれればそれでいいんじゃよ。」


「な、なんでじゃ?」


「お前が死体も無しに突然消えたとなると、リバイアサンが川に潜んでいるのではないかという疑心暗鬼で王都中の人がパニックになる可能性があるのでな。はい参りました———って感じで皆に分かるよう川を下ってほしいんじゃよ。」


「いや、でも折角人間になったのだから、少し人間の街でも見たかったんじゃがな・・・・。」


「そうか、それなら今度は左手がよいかのう?」


 ゼンはにやりと笑いながらこれ見よがしに村雨を少しだけ鞘から引き抜いて見せた。


「は、はい分かりました。貴方様のいうとおりに致します。」


 リバイアサンは流れるような見事な土下座をして頭を橋に擦り付けていた。


「まあ、海に出た後戻ってくるか否かははお主の好きにすればいい。人間の姿で戻ってくるなら問題は無いじゃろう。」


「それでは主様、我は直ぐに戻ってまいりますので、寂しがらずにお待ちください。」


 リバイアサンが橋の欄干の上に立ち右手を上げてゼントに向かって挨拶をすると。


「いや、1ミリも寂しがっていないから! お前の好きな生まれ故郷の海に骨をうずめてくれ!」


 そんな―。と言いながらリバイアサンは橋の欄干から川に飛び込んでいった。


 ドザ——————ッ 水面が盛り上がると、再び巨大な黄金の龍が出現した。


 (じゃ、主様行ってきます。)


 リバイアサンはゼントの方を振りきに頭を下げた後、再び海に顔をむけてゆっくりと海に帰っていった。晩秋の午後の低い太陽の光が黄金の龍を美しく照らし出していた。


 うん、ゴ〇ラ海に帰っていく時みたいだ。いや、キン〇ギ〇ラか? ゼントは密かに思っていた。

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