↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/20

ようやく学校の描写ができるとおもったのに・・・

なんやったんやこれ・・・?

 夕の自宅。


「……兄ちゃん、用意できてるぅ?」

「……無理」


 夕の部屋の前、勇は扉を叩きながら、ドンヨリとした兄の言葉に戸惑いに眉をひそめて立ち尽くしていた。

 制服はブレザーからセーラー服姿に変わり、勇は恐る恐る扉を開け中を覗き込む。

 そこには穴のあいたズボンから長い尻尾を必死に取り出そうとする黒い狼男の姿があった。

 困った横顔がドアの隙間から見え、勇はほっこりとした表情で扉をこっそりと開ける。


「うう……こんな恰好でいいのかよ……尻尾出ねぇ」

「引っ張っていい?」

「――――兄ちゃん、入るなって言っただろうが」

「えへへぇ……」

「ったく……少し引っ張ってくれ」

「うんっ、兄ちゃんっ」


 そう言って引っ張れば、尻のあたりから出てくる長い尻尾。

 安堵に為息を零すと、夕は苦い表情と共にネクタイと制服のブレザーを手に取りつつ鏡に向き合った。

 そして襟元にネクタイを通しつつ、手元の長い爪と毛深い指先を見つめ、狼はため息を零す。


「……なぁ、勇」

「何?」

「いや俺……こんな恰好でいいのかなって。学校行ってもこんな恰好じゃどうクラスの連中と接すればいいのかと」

「適当でいいと思うよ。どうせ気にしないと思うし…ネクタイ歪んでる」

「おう……お前もそのかっこうで?」


 そう言いつつネクタイを引っ張られながら、夕は少し膨らんだセーラー服の胸元を覗き込んだ。

 そこには乳白色の谷間が見え、狼はネクタイを締められながら気まずそうに目を背けた。


「……ったく変に育ちやがって」

「えへへぇ……兄ちゃんいつでも触っていいよ?」

「……下手に触れないさ」

「大丈夫、僕男だからね。いつでも兄ちゃんとお風呂に入れるし、いつでも兄ちゃんが触ってもいいんだよ?」

「……男だから?」

「男だからっ」

「――――お前、男ってそういう意味で?」

「どうだろ?」


 ニッコリと笑って短めのスカートを翻すと、惚ける狼男を背に、弟―――妹はそそくさとその場を後にした。

 そうして部屋から出て行って、扉がゆっくりと閉まる――――


「あ、兄ちゃんが望むなら、下のアレ……とってもいいよ?」


 と、そう言ってドアの隙間から顔を出す勇に、狼男はブレザーの袖に手を通しつつ顔を引きつらせた。


「ば、バカが。自分で決めろ!」

「どっちがいい?」

「――――前も言ったが、俺は男といちゃいちゃするつもりはない」

「えへへ。じゃあ考えておくね」

「おう……」

「行こう。二人も待ってるから」

「―――仲いいのか?」

「兄ちゃんの膝の上を取り合うくらいには」


 そう言って、ドアから小さな顔を引っ込める弟に、夕は苦い表情と共に顔をしかめつつブレザーのボタンを閉じた。


「……仲悪いんじゃないのか、よくわからんが」


 そう呟きつつ首元に指を入れれば、変わらず感じるふさふさ感。

 体毛は既に全身を覆い、人とは思えない容姿が姿見に映り、黒い狼男は紅い目を細めげんなりと顔をしかめた。


「……どうしたものかねぇ」


 そう言って鞄を取りドアのノブを回せば広がる廊下の景色。

 カツカツと床を爪で鳴らしつつ、一回に戻ればそこには慌てて玄関に駆ける佐代子の姿があった。


「あわわ、仕事遅れちゃうよぉ!」

「――――母さん」

「あ、夕君、私行くね! 給料はもらえないけど研究所は貸してくれるってさ!」

「頼むからこの身体元に戻してくれよ」

「無理だから」

「諦めないでぇ! 頑張ってぇ!」

「あはは、まぁ期待しないで。私興味ないことには殆ど注意向けないタイプだから」

「息子の一大事ですよぉおおお!」

「だって私そっちの姿の方が好きだしっ。……じゃ、いってきまぁす!」


 そう言って白衣を翻し飛び出す母親に顔をしかめつつ、夕も後追いかけ土間に脚を下ろした。

 靴はなく、床を叩く鋭い爪。

 そのまま立ちあがって後ろを振り返れば、そこにはリビングから顔を出すエプロン薄型の父親の顔があり狼男は顔をしかめた。


「……行ってくる」

「行って来いバァカ」

「――――むかつく」

「俺もだよ」

「死んでしまえこのコミュ障が」


 相変わらずのやり取りもそこそこに、そう言って小さく手を振ると、狼男は玄関の扉を開いた。


 ――――ヒラリ……


 舞い散る光。

 眩さに目を細めつつ、足元を見下ろせば、そこには透き通った水晶の葉が散らばっていた。

 ふと視線を上げれば、そこには空いっぱいに広がる水晶の枝葉。

 ザァアアアア……

 風に揺れるままに、まるで手を振るようにざわめく白き枝葉を見つめ、狼は玄関の扉を閉めた。

 そして後ろを振り返れば、そこには夕の家の間後ろに樹があった。

 聳え立つ高さは空を貫く程、枝葉は村一帯を覆う程に広がり、そこには半透明の水晶が大樹の形を作っていた。

 その白き大樹、アナトリウスを見つめ、狼男はげんなりと肩を落とす。


「……おはよう」


 ――――おはようございます、王よ。


 ――――今日も元気にまいりましょう。


「……フェンリルも、か」


 ガシャンッ

 重たい音を立てて歩く音にヒクリと尖る耳。

 振り返れば、そこには見上げるほどに巨大な狼男のようなロボット、白き鎧を纏いしフェンリルが膝を立て座っていた。

 その手はグッと歩み寄る主の足元へと伸ばされ、狼は戸惑いつつ、辺りを見渡した。


「あれ、三人は?」


 ―――既に中に。


「あいよ……」


 そう言ってため息交じりに手の上に乗り、狼男は開くコックピットのハッチを潜り中に身体を潜り込ませた。

 グニュリ

 前のめりに身体を突っ込みながら、鼻先に感じる柔らかな感触。

 匂うのは、懐かしい少女の匂い。

 ハッとなって顔を上げると、そこには照れくさそうに笑う美緒がいて、夕は慌てて顔を離そうとした。


「み、美緒、悪い―――」

「おはようっ、夕君」

「ぐもぉおお!」


 ぐもった断末魔は胸の谷間に吸い込まれ、狼男は目を剥きながら抱き寄せられるままに美緒の胸に顔を埋めた。

 ぐりぐりと柔らかな感触が顔を撫で、狼は血走った目を回し苦しげに鼻息を漏らす。


「こ、こら! やめなさい!」

「えへへぇ。弟君もそうだけど私のおっぱいも大きいよね、もっと触っていいよ」

「わかった、わかったから! 大きくて好きだから離しなさい!」

「うんっ」


 そう言って後頭部を掴んでいた両手を離す美緒の胸から、慌てて顔を離し狼男は興奮気味に荒い鼻息を漏らした。


「ふぅ、ふぅ……あ、朝から元気だね、美緒ちゃん」

「うんっ、今日は私が夕君のお膝の上だよぉ」

「――――ローテ?」


 そう言って上段と中段のシートを見上げれば、そこには少し不貞腐れた調子で頷く可奈とニコニコと笑う勇の姿。


「うう……私一番上なのお姉ちゃん?」

「だって最初に夕君の膝の上座ったの可奈ちゃんだし」

「あれはお姉ちゃんが最初に入ったから仕方なくじゃないッ」

「いいのッ」

「えへへっ、兄ちゃんの背中見れるのって中々にいいねっ。明日僕だよね」

「うんっ、明日弟君だよぉ」


 そう言って、惚ける狼男を引きずりこんで下段のシートに座らせると、美緒は戸惑う夕の上に座り込んだ。

 分厚い胸倉に埋もれる小さな頭。

 グリグリと頬を擦りつけるままに、美緒は幸せそうな笑みを浮かべて苦笑いを滲ませる夕にすり寄った。

 夕はため息交じりにレバーを操作し、目の前のハッチを閉める。


「おい……苦しい」

「にはははぁ……夕君の匂いだぁ……いいなぁ、ずっとこうしていたい」

「だぁめ……学校行くぞ」

「休もう夕君、それで一日中ベッドの中でぎゅっしたいっ。それでいちゃいちゃしたいです」

「それはさすがに爛れすぎです! 親父さんじゃなくてもノーと言います!」

「構わん!」

「ええええええええええええ!?」


 聞こえてくるのはいつも怒声。

 そこには傷だらけの顔になった鷲人がニコニコ顔の春香と共に白き巨人フェンリルの足元に立っていた。


「夕君、ワシらの目的は『王』を生みだす事だ。君が持つ因子、というよりオリジナルである君の因子は三人に分散して埋め込まれている。

 つまり、君は三人を喰らわねば王にはなれんのだ!」

「食べるんですか!? 俺そもそもそんな事に協力したくないのですがぁ!」

「ここに君の部屋から徴収した大量のエロ雑誌があってだな!」

「やめてぇえええ! それ川岸で苦労して集めた奴なのぉおおおおお!」

「無論だ、これは私が川岸で君用に撒いてきた奴だからな!」

「おじさん何してるんですか一体!?」

「君の趣味を探るためだ!」

「ほげぇええええええ!」

「どうやらおっぱいの大きい、背の小さい子が特に好みだと聞いている!」

「やめてぇえええええ! 大音量で喋らんといてぇええええ!」

「良かったわねぇ。可奈に美緒、これから一部遺伝変換してドンドンおっぱい大きくするからねぇ」

「うむ、弟君もワシの所に来たまえ! おっぱいを更に強化してあげよう! 夕君はおっぱいの大きな小さい子が好みだからな!」

「もうやめてぇえええ! 社会的に死んじゃうのっぉおおおおおお!」

「じゃあ、行ってらっしゃい四人とも」

「うむ、また夕方も寄り道して帰ってくるんだぞ!」

「でもホテルはダメよ、お金が掛かるから」

「監視カメラで録画もできんからな!」

「もう出ていってぇええええええええ!」


 翻す長い尻尾。

 やがて田畑を横切り歩きだす白き狼の巨人の背中を見つめ、鷲人は満足げに手を振っていた。


「……あの子達、うまくやれるかしら」

「やれる! でなければこれからも世界が滅ぶのみだ!」

「――――オルティスの文章。アレは本当でしょうか?」

「ワシのオリジナルだ、嘘をつくわけがない、ワシは信じる!」

「そうですね……」

「―――おッ」






「まじか……」


 モニター越しに空を見上げつつ、狼男の視界の端に映るのは何かの破片。

 パキン……

 破れる空の景色。

 景色の破片がまるで砕けるガラス窓の様に飛び散って、破片が空全体へと飛び散り『穴』ができた。


「……今日までで何回目だよ」

「これで十回目だね兄ちゃんッ」

「数えなくていい……本気だなしかし」


 左右のレバーを握りしめながら、夕はため息交じりに内側から食い破れる景色を睨みつけていた。

 景色の破片が飛び散って周囲の田畑に突き刺さる。

 ズムリ……

 何かを踏みしめる重たい足音。

 脚を止めるままに白き狼の巨人フェンリルが顔を上げれば、破れた空の景色の向こう、何かが這い出していた。

 黒く爛れた何か。

 全身を炎で覆い、手足はまるで蛇のごとくうねり、百の目が見開いて虚ろなる闇の底から顔を出す。

 その殺意が、黒き狼の身体を貫き、全身の体毛が逆立つ――――


「……フェンリル、アレは何だ?」


 ―――古きドグナの子。深淵の敵対者、百体いる内の一体です。


「昨日もなんか同じ個体を倒した気がするぞ」


 ―――やったね王様、個体が減るよ。


「やめて!」


 バキバキバキ……

 相当の巨体なのか、身体をよじるままに、空の裂け目が広がっていき、べチャリと黄色い肉片が大地に滴る。

 その目は、立ちつくす白銀の鎧の巨人を捉えてほくそ笑む―――


 ――――黄昏ノ紅キ瞳……黒キ狼……。


「殺してやる……御託を並べる前に掛かってこい」


 ブシュゥウウウウ……

 白き鎧からから噴き上がる蒼い光の粒。

 口の端から洩れる唸り声。

 腰を落としその巨体を低く構え、フェンリルは背中を打ち震わせ、異界からの使徒を睨みつけた。

 その紅い瞳がぎらつき、荒い鼻息が漏れる。

 やがて樋之継手村に降り立つ巨大な化け物を前に、白き鎧を身に纏い狼の巨人は咆哮する。

 その唸り声が大地を震わせ山を軋ませ空を穿ち、世界に広がる。

 敵対する者との戦いへの狼煙を上げる――――


「……行こう、学校行く前に終わらせんとな」


 ――――御意!


「行くぞ美緒、可奈……勇頼んだ!」

『はいっ』

「……最後までやってやるよ。これで村が平和になるって言うんだったらな」

 

 地面を蹴りあげるままに飛び散る土埃。

 駆ける様は疾風の如く――――田畑の水の漲に波を立て、白き狼の巨人が樋之継手村を駆け抜けた。

 その紅い瞳に、巨大な化け物を捉え、飛び上がり鋭き爪を振り上げる。

 五つの刃が虚空に斬痕を刻む――――







 報告書。

 著者 ウォーダン・ハベルク・オルティス。

 彼の者がこの星よりはびこり十年が経った。

 ひどいものだ。

 アメリカの主要都市は全て壊滅し、ヨーロッパに残っている人を探してみたが、見つけたのは数人だけだった。

 皆、私の様にあの異形の化け物の影響を受けた後だった。

 アレは何かと聞かれれば、恐らく破壊者だろう。

 頭の中に時折声が響く。

 人の言葉ではない、何か記号のような何か。

 彼の者を殺せ、世界を破滅させ、『神』を滅ぼせとの声が幾度となく響き、私の頭を狂わせる。

 そして『王』を捕らえよ――――


「がぁあああああ! 硬い!」


 ――――王よ、グレイプニールをうまく使いなさい!


「おうよ! フェンリル行くぜ!」


 ――――御意!


 おそらくその王なる存在を捕まえに、奴ら、化け物はやってきたのだろう。

 感染者より名前を確認できただけで、いくつもあった。

 シュトゥルフ、ドグナ、アテル。ボドロフィア、アポクリファ、カイネル、デイズ、シェマフ。

 個体によっての名前なのか、種族としての名前なのかはわからない。

 ただわかるのは、彼らが異世界より来訪し、この世界を蹂躙しているという事だけだ。

 ただ宇宙の外からというわけではない。

 そんな近い場所ではない、もっと遠い、時間や空間すら超越した深き闇の底より彼らは這い出しているのだ。

 神を殺すために、彼らはこの世界へとやってきている――――


「美緒! 俺にもっとよれ!」

「うんっ!」

「可奈、状況把握急げ、敵の数がまだ確認できない!」

「わかってる!」

「勇、エネルギーの内蔵チャージはどれくらい溜まった!?」

「もうすぐで全部溜まるよ!」

「なら今使う――――行くぜ、グレイプニール!」


 自分の意識がどこまで保てるのかは分からない。

 この言葉にならない声を聞き続け、やがて私は自分の意識、いや自分の存在すら牛なのかもしれない。

 だがやらねばならない。

 感染した奴らから話を聞けば、どうやら切り札は地の底にあるとのこと。

 行こう。

 生き残った人々を集め、彼らに対抗するため、我々は『王』にあわねばならない。

 そして、異形なるもの達を滅ぼし、そして平穏を取り戻さなければいけない。

 私の意識がいつ彼らに浸食されるかは分からない。

 それでも――――


「これで……終わりだぁ!」


 ―――消えされ、古きドグナの腰巾着!


「うぉおおおおおお!」


 ――――戦いは永遠に続くかも知っれない。

『王』に会った所で戦いに勝利はないかもしれない。それでも世界を滅ぼさないために私は向かう。

 この地の底に、希望があると信じて。

 王よ……黄昏の狼よ。

 この滅びし世界を、どうか護りたまえ――――


「――――俺の、勝ちだ!」


 どうか。


というわけで一旦終わり(*´ω`*) 

楽しめました?まぁまだまだなら頑張りますし、楽しめたのならそれでいいです。

じゃあ、またどこかで会いましょう。

といってもちょこちょこ色んなところで書いてますから、見かけるかもしれませんけどね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。