アトラシア・フェンリル:白き鎧の狼/黒き澱の巨人
ちょっと名前変更をしました。だって思いつかないんだもん(*´ω`*)
白き砂の海広がるアナトリウスの聖域。
降り注そぐ太陽の光。
鋭く細めた双眸には、黒くただれた巨人を捉えて、銀の鎧がぎらつく。
ザザザァ……
滑るように着地するままに、立ち上る砂埃。
爪は深々と白き砂の海に突き刺さり、片膝をつき狼の巨人、アトラシア・フェンリルは動きを止めると、にじり寄る黒い肉塊を睨みつけた。
――――グルルルルゥ……!
「怖がるな……大丈夫だ……」
「兄ちゃん、何をするの?」
「戦う!」
「―――夕、グレイプニールを」
「使えるの?」
「王の因子がこのロボットを動かす―――アレは武器じゃなくて、貴方の能力よっ」
「つまり俺がいたらいつでも使える、か。…・…行こうか、フェンリル!」
主の言葉に頷くままに、巨人は徐にその手のひらを虚空にかざした。
―――右手の甲の装甲が剥がれる。
そして、浮かび上がるのは、水のように蒼い球体。
パシャッ
水しぶきを青空に散らし、手の甲の球体が変形していき、出来上がるのは身の丈を超える巨大な刀。
その刃は水晶のように透き通り、刃は腕の太さを超える幅広さ。
刃は日差しに煌めき、滴を滴らせ、黒くただれた巨人の姿を映す――――
――――グルルルルゥ……
低く呻く声。
一歩踏み出すままに、狼の巨人は腰を低く構えて、前のめりに巨大な刀を両手に握りしめた。
ブシュゥウウウウッ
大地が割れ、踏み込んだ脚の関節から噴き上がる蒼い光の粒。
尻尾の毛が逆立ち、その口の端から荒い吐息が零れて、鼻息と唸り声が響き渡る。
その紅き瞳ににじり寄る黒くただれた巨人を捉える。
その透き通る刃を振動させ、柄を握る両手の爪に力を込める。
真一文字に振り薙ぐ――――
――――めくれあがる灰の海。
虚空に刻む一文字の斬痕。
衝撃に土埃がまるで津波の如く噴き上がり、一閃の斬撃が大地をめくり上がらせ、目の前の景色を斬り払った。
ゴォオオオッ
砂煙と共に走る衝撃に、広がる黒いヘドロが弾き飛ばされ、ゾンビの群れが塵に変わり、黒くただれた巨人が仰け反った。
そしてうっすらと爛れた肉塊の表面に浮かぶ刃の閃。
ゆっくりと斬痕が開いていく――――
ブシャァアアアアアッ
黒い血飛沫がアーチを描き、深々と切り裂かれた肉塊の表面から血肉が仰け反る黒い巨人より空へと飛び出した。
――――グォオオオオオオオッ
血飛沫と共に空に響き渡る、黒き巨人の悲痛な咆哮。
パンッ
振り薙いだ刃を勢いよく止めると共に、空気が振動し、刀の形がゆっくりと変形していった。
水のように柔らかに形を変える『ソレ』はやがて、二本の刃を形成する。
そして両腕に絡むままに巨人は二枚の刃を逆手にとりつけると、身体を低く、四つん這いになった。
ビンッと逆立つ尻尾。
口の端から零れる唸り声。
息も荒々しく、背中の装甲を逆立てると、巨人は土埃を激しく巻き上げ地面を蹴りあげた。
走り出す姿は風すら捉えることを拒む白き影となる。
その視界は時の如く、流れていき、その緋色の眼光は仰け反る黒く爛れた巨人を目の前に捉える。
二枚の水晶刃が腕の袖より迫り出し、風を斬り裂く―――
「行けるか……!」
――――黒く汚れた肉塊に浮かぶ十字の傷痕。
飛び散る黒い肉片に黒く滲む水晶の刃。
血飛沫を払い落すままに後ずされば、そこには十字に抉れ、仰け反り痙攣する黒き巨人の腹部があった。
その中からドロドロととめどなく黒い血が滝のように溢れる。
その傷口はぽっかりと空いてまるで底を見せず―――
――――ワレ……死ナズ。
ヌルリと伸びる長い触手。
傷口から迫り出した無数の腕は、飛び退く白き狼の腕を掴むままに、土煙を上げて引っ張りこんだ。
そして開いた傷口がまるで巨大な口腔のように開き、巨人を飲み込もうとする。
巨人は苦しげに顔をしかめ、全身に絡みつく触手から身体をよじる―――
「ヴォレ……」
「突然何を言ってるんですかぁ!?」
「あ、知ってるんだ夕は」
「やめてぇえええええええ! トラウマになっちゃうのぉおおおお!」
――――ガゥ……!
触手に浮かび上がる無尽の刃痕。
翻す二枚の水晶刃は冷たき風の如く踊り、身体をよじるままに巨人は飛び散る肉片を払い飛ばした。
そして霧散していく触手を横目に、白き狼の巨人は黒く爛れた巨人に紅く目を細める。
スッと両手に取り付けた二枚の刃を重ねて突き出す―――
「近距離だと兄ちゃんトラウマっぽい……」
「じゃあアレで行こうッ、パパのとっておきの武器!」
「込める弾丸は12・2ミリじゃ済まないがな……!」
パシャッ
水しぶきを上げ変形していく水晶は、やがて半透明の巨大な拳銃となって巨人の手に吸い込まれた。
ドォオオオオンッ
トリガーを引き絞れば硝煙と重たい銃声が響き渡る。
反動に土埃が上がり後ずさる巨体。
長身のバレルが振り上がり、シリンダーが回転するままに弾丸が眼の前の黒く爛れた巨人へと放たれる。
その大きく開いた傷口へと吸い込まれていく―――
――――黄昏ノ狼……何ヲイワンヤ……何ヲ望マンヤ……
シュルリ……
傷口が閉じ中に吸い込まれていく透明な弾丸。
黒く爛れた巨人は平然とした様相で、ズルリと身体を引きずりながら白き狼の巨人へと歩み寄る。
ニィと笑って、狼の騎士を捉えて無数の腕を伸ばす―――
――――汝……神ノ子ニ非ズ……何故ニ刃を向ケントス……。
―――――グルルルルルゥ……。
―――――愚カナ……愚カナマデニ……愚直……『死』スルニ値。
「あ、今ので会話成立するんですか……」
―――――我、シュトゥルフ……神ヲ消去センタメ……世ノ底ヨリ生レシ者……。
―――――ガゥウウウウウ……!
―――――所詮……暗ガリノ獣……
―――――王の魂を受け継いでいる者を護る……我にあるはただ忠誠のみ。
「喋ったぁああああああああああああ!」
―――――愚カナ……神ヲ殺サネバ……神ヲ殺サネバ……。
―――――その愚行に世界も王も巻き込むこと罷りならず、立ちふ塞ぐというなら我、全霊を以って相手になろう。
―――――ソノ強ガリ……後悔スルゾ……
―――――グルルルルルゥ……!
「わ、わかった……!」
シュルルリ……
迫り出す触手はまるで弾丸の如く、刹那、向き合う白き狼の巨人へと飛び出した。
削れる銀の鎧。
身体をよじり触手の刃から身を反らすままに、白き狼は身体を低く、土埃を上げて地面を蹴り飛び出した。
引き絞るトリガー。
大地に罅が走るほどの激しい衝撃。
身体を低く銃を構えながら、反動に走り出した身体が大きく後ずさり、バレルが振り上がった。
グニャリとS字に捩る黒い巨体。
弾丸は大地を抉りながら飛び出し、黒く爛れた巨人の右腕を抉った。
そして弾丸は空の向こうへと突き刺さる――――
「はぁ!?」
飛び散る無数の黒い肉片。
それでも身体を引きずり歩きだす黒い肉塊の動きは止まらず、白き巨人は振り上げたバレルを下ろした。
「夕君次弾!」
「リロードだ……!」
「バカ夕! なんでそんな銃作ったのよ!」
「格好いいからだよ!」
ガシャンッ
白煙を上げ迫り出す上下回転式のツインシリンダー。
空薬莢が灰の海に沈む中、白き巨人は弾丸を詰め込みつつ、目の前ににじり寄る黒く爛れた巨人を見つめる。
その航行が大きく開いて、白き狼の巨人を喰らおうとする―――
――――アトラシア……。
大地を上下に揺さぶり、走る地響き。
刹那、迫り出す水晶の柱。
否、巨大な水晶の根っこが片膝をつく白き狼の巨人の脚元より迫り出し、黒く爛れた巨人を貫いた。
飛び散る血飛沫は黒く、空に舞い散る。
――――グォオオオオオオッ
迸る咆哮は空を揺らし、迫り出した巨大な水晶の根に護られながら、巨人はゆっくりと立ちあがった。
「アナト……リウスさん?」
――――畏まらないでください……私はいつもあなただけの所有物……。
「は、はぁ……」
フレームに収まるシリンダー。
持ちあげた銃口の先に、よろめく黒き巨人の姿を捉え、白き狼の巨人はトリガーを引き絞った。
バキンッと破裂する水晶の根っこ。
そして弾丸が音もなく、黒く爛れた巨人の中へと吸い込まれていく。
静寂だけが広がる――――
――――虚無ノ中ニ全テ消エヨ……!
「……うるせぇバカ」
パンッ
破裂する上半身。
大量の血飛沫がまるで噴水のように放射状に花開き、抉れた上半身の肉片が大量の空へと飛び散った。
そして残るのは、よろめく巨大な下半身のみ。
その断面に暗闇の虚を覗かせ、シュトゥルフはユラユラと下半身の身で身体を左右に揺らす。
ズルリ……
そして、身体を引きずりそれでも白き狼の巨人へと歩きだす――――
――――王ヨ……ソノ力……ソノ……ソノ力……!
「ないものにすがりつくなよ」
パシャッとはじけ飛ぶ水晶の拳銃。
水しぶきが掌から飛び散って、灰の海へと吸い込まれ、迫り出した水晶の根と共に消えてく。
――――王よ。彼の者はかつて王のお力を狙いこの地を訪れました。
「なんのためだよ……ていうかおたく誰?」
――――我らは『獣』……王に仕えしもの……神より世界を追いだされし者……。
「……ん」
――――王はその力で世界の創造の鍵を渡し、そして我らは闇に身を浸した……。
「……。その、よくわかんないです」
――――アレ敵ですから早く殺してください。
「ざっくばらんですね!?」
――――あなたはいつも言っても聞かない人でした……今もそう。
「あれ、怒ってます?」
――――ぶち殺すぞ……。
「すんましぇん……」
――――さぁ、参りましょう、アトラシア。あの方が再び目覚めた記念に。
ボコリ……
盛り上がる足元の地面。
――――では、参ろうか……。
刹那、地面から迫り出すのは、無数の触手。
その色はまるでガラスの如く透き通り、折り重なって水晶の鎖がいくつも白き狼の足元から飛び出した。
――――王よ……あなたの力は一つ……世界を支配する事……。
――――物事を破壊し、創造し、そして世界の形を作り変える、祖は王なる者。
黒く爛れた表面に突き刺さる水晶の鎖。
それはまるで蛇の如く、黒く爛れた巨人の下半身へと巻き付くままに、鎖は敵の動きを押しとどめた。
ズムリ……
足元からひと際大きく盛り上がる砂。
やがて砂埃を巻き上げ、迫り出す巨大な砲塔を前に、白き狼の巨人はその右腕を突き出した。
「おお……すげぇ……」
―――祖は力、祖は炎。夜明けを導き、世界を飲み込む大いなる『命』
―――祖は『王』……我らが王、異界の力を飲み込み、その魂、全てを包む神も超える。
「――――グレイプニール!」
グォオオオオオッ
その突き出た口腔から飛び出る低い方向。
ガシャンッと重たい音を立て、巨人は右腕を突き出し地面から迫り出した巨大な砲身へと接続した。
地面に突き刺さるトライポット。
グッと伸びる巨大な砲身。
その向こうに飛び散った黒き巨人の下半身を捉え、白き狼は鋭く紅い瞳を細めて荒くと息を漏らす。
尻尾が逆立ち、全身の装甲から蒼い光が噴き上がる――――
「こいつ殺せばいいんだなッ!」
――――その者は王の力を奪う者……異界の底へと押し込み、貴方自身が世界を制するのです。
「そんなつもりはない! ただ俺は皆で家に帰るだけだ!」
――――意のままに……。
「行くぞ、まだ学校も残ってる、さっさと帰って今日もテスト勉強だ……!」
――――御意のままに……さぁ、アトラシア!
――――消えされ化け物……!
砲身から蒼い光が零れ、放たれる光は渦を描いて、飛び出した
グッと反動に押し出される巨体。
光は大地を深々と抉り、射線の向こうに黒い巨体を捉えて激しい光の奔流の中へと流し込んだ。
蒼き閃光の中へと覚えれていく黒い巨体。
光は雲を割り、水平線を貫き、割れた空の景色の隙間へと突き刺さった。
そして地面に飛び散った黒い破片を残さず飲み込み、光の奔流は放射状に広がり、異界の果てへと押し流していく。
全てが白く染まっていく――――
――――王ヨ……。
「……」
――――イズレマタ……会ウ事ニナロウ……汝ノ力……神ヲ殺ス刃ナリ……!
「とっとと出ていけ、このゲテモノぉ!」
――――ワレ……死ナヌ……死ノ先ニ我ノ地アリテ……死ナヌ……。
そう呟く声が、光の向こうへと消えていく――――
融けていく砲身。
やがて迸る光が収束していき、射線が細くなっていき、ゆっくりと抉れた大地の爪跡が光の中に露わになった。
そして光が途切れて、砲身から溢れるエネルギーが消失する――――
ガシャンッ
融けた砲身が砂の海に崩れ落ち、ゆっくりと下ろす右腕。
白き狼の巨人はその右腕を抑えつつ、辺りを見渡せば、そこには赤熱して煙を上げる白い砂漠の景色があった。
辺りにはまるで鳥が引き裂いた痕の様に、光の通り道が走る。
白煙が地面から立ち上り、風にゆらゆらと草葉の様に靡く。
そして長い尻尾が揺れて、白き狼の巨人は目の前から一片なく消え去った巨人の跡に満足げに頷いた。
――――ガゥウウ……。
「……えっと……終わったの?」
「終わったぁあああ!」
コックピットの中、惚ける黒き狼へと最初に飛び出すのは美緒。
上段のシートから跳ねあがるように少女は飛び上がると、戸惑う夕の首元に抱きついては顔を埋めた。
「にはぁあああ……やったやったぁ! 夕君の勝ちぃ!」
「……何に、勝ったの?」
「敵に勝った」
「誰が敵だよ! こちとら訳もわからぬままここに乗せられて戦わされて、気がつけば勝ちましたとか!」
「巻き込まれたなんて今更じゃない」
「そっかぁそうだよねって違います! お前らが無茶をしなかったらこんな所にいないでしょうが!」
「そうだよそうだよッ」
「お前が連れてきたんでしょうがぁあああああ!」
ギョッと目を剥き黒き狼は息まいて吼えていると、全方位式のモニターの端、何かが動くのが見えた。
ドォオオンッ
土煙は至る所で立ち上り、そこには白き大樹の根元で何かが駆けまわっていた。
長い尻尾を翻し踵を返すままに、白き狼の巨人はスゥと目を細め、モニターが一方向をズームしていく。
そして小さく立ち上る景色が拡大していく――――
『健二ぃいいいいいいいい!』
――――拳銃を持って暴れる男が一人。
『ぶっ殺してやるぅううううううう!』
――――刀を持って暴れる男が一人。
ペタン……
巨人の聴覚センサー越しに聞こえる二人の罵声の掛け合いに、狼は耳を垂らすと愕然とした表情で肩を落とした。
「……親父さん……ていうか親父」
「おおおっ、頑張れぇパパぁ!」
「負けるなお父さんッ!」
「――――あほくさ」
ため息もそこそこに目を背ける可奈をよそに、美緒と勇は両手を上げてズームした視界の向こう、銃と刀を突きつけ合う二人を応援する。
狼男は唖然とした表情を浮かべつつ、徐に自分の姿を見下ろす。
「まったく……何喧嘩――――」
――――そこには毛深い自分の身体があった。
カチンと固まる躯体。
顔を強張らせるままに、狼男はハッとなって自分の四肢を舐めまわすままに凝視しては喉を鳴らした。
艶やかで毛深い全身の体毛。
長い爪、突き出た口腔、ペタンと垂れる耳。
目は未だに紅く、そこには狼男のような自分の身体があった。
「……え?」
「どうしたの、夕?」
「―――なぁ可奈ちゃん。なんか大事なこと忘れてる気がするんよ僕ね」
「ああ、身体は元に戻らないわよ」
「どうしてですかぁあああああああああ!?」
『王の因子は魂の姿。
そこに乗っていたかつての君はね、今の君と全く同じ姿をしていたの。だからそれが君の本来の姿だよ』
「ママぁあああああああ!?」
通信機越しに聞こえてくる佐代子の言葉に、夕は目を剥いて叫んだ。
「どういう事ですかぁ!?」
『だから元に戻らないよ?』
「OBT社破壊したら元に戻るって、あれ嘘ですかぁあああ!」
「うん」
「ええええええええ!?」
『やったね夕君、人間離れしたね』
「やめて!」
『極力戻るようにしてみるけど、今はその姿のままでいてね。私の大事な夕君っ』
「……まじでぇ?」
引きつった顔はそのままに、夕はズルリとシートからずり落ちそうになるほどにその場に崩れ落ちた。
そして引きつる狼男の上に馬乗りになり、可奈は少し困ったような表情を滲ませる。
「……ごめんね、本当は言うべきだったんだけど」
「……なんで教えてくれなかった」
「――――希望的観測。もしかしたらここに来たら君が治るかもって」
「……。だよなぁ……」
「ごめん……その……お兄ちゃん……」
「―――少し元気出た」
「……。何大きくしてるのよ、バカ」
ムクリと垂れていた耳が尖り、狼は強張った表情はそのままに少し興奮に鼻息を荒くすると身体を起こした。
そして顔を赤らめる可奈を膝に乗せると、ムスッと頬を膨らませる妹の頭に顔を乗せた。
そしてグリグリと鼻先を長い黒髪に擦りつけるままに、狼はレバーを握りしめ、巨人を動かす。
「いやぁ……お兄ちゃんって毎回言ってくれると嬉しいな俺も」
「――――やだ」
「……。にひひっ、可奈は可愛いな」
「も、もぉ……アレどうするのよ!」
そう言って指をさせば、そこには未だに割れた空の景色があり、未だに何かが蠢いているのが見えた。
翻す長い尻尾。
ムフゥと興奮に荒げる鼻息。
白き狼の巨人は空が破れて覗かせる『異界』の景色を睨み、その右手をそっと翳して広げた。
「アナトリウス……」
―――意のままに。
ザァアアアア……
舞い散る水晶の葉が頭上の白き大樹の枝葉から零れ、風に靡く。
風に乗り、水晶の葉は光を浴びて、その表面に空の色を映しながらゆっくりと砂漠の海を流れていく。
そして水平線の向こう、破れた空の景色へと吸い込まれる――――
「なぁ、でっかい樹よ」
――――はい……。
ペタリ……
景色の破れた部分へと貼りつけられる、水晶の葉。
空の景色を映し出したその水晶葉はやがて、集まり重なるままに異界の入り口を塞いでいく。
そして異界の入り口が消え、空の景色が再び、水平線の向こうに広がる。
「俺、これから何をすればいいの?」
―――――何をしようと、全て御意のままに。
ゆっくりと下ろす右腕。
冷たいクリスタルの風を受けながら、白き狼の巨人は立ちつくしたまま、気持ちよさそうに目を細めた。
「俺が世界を滅ぼしても?」
――――勘違いなされているとお思いですが……この世界は貴方様が作りしものです。
――――全て残らず王のもの。滅ぼす生み出す、望むままに。
「オリジナルが出てきても文句言わせないぜ?」
――――見間違えるわけがない。
――――あなたは間違いなく、我らが『王』。
――――お帰りなさい、我らが黄昏の狼よ……。
――――本当に……長かった。
ザァアアアア……
手を振るように、揺れる水晶の枝葉を見上げ、黒き狼は呆れた様な、照れくさそうな笑みを滲ませた。
そしてレバーを動かせば踵を返す白き狼の巨人。
その前面のモニターに敵を捉え、狼は未だにモニターの向こうで戦う二人の姿を見つめて呻いた。
「……これからもあんなのが一杯出てくるのか?」
――――王の魂は存在全ての鍵……『神』という存在すら定義し、或いは消す力。
「ならしっかり護ろうか……頼むかね……フェンリルよ」
――――御意……!
「手始めにあれ、止めて来い」
――――御意!
「殺すつもりで行けよ……でないと止まらないから」
――――元より!
飛び出す影は、まるで風の如く――――『フェンリル』は飛び出すままに白き大樹の根元へと駆けこんだ。
その爪は鋭く、振り下ろす先に二人を捉える。
ニィと紅くぎらつく目を見開き、白き巨狼、アトラシア・フェンリルは咆哮する――――
あ^~疲れた。もう少しで終わりですので、見ている方はもう少しだけご辛抱を。
まぁ我慢してみるものでもないですけどね(*´ω`*)




