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夢のかけら  作者: 高原 涼子
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 ようやく後輩たちとも円滑に物事を進めることができるようになって一安心したのも束の間、また一人で思考の海にどっぷりと浸かっている恒に気づいて和己はどうしたものかと悩む。

 時々淋しそうな表情を見せるから、その考えていることは思い当たるものが二つあるのだけれど、下手につついて違う方を指摘してしまうと、どちらも同時にフォローするのは大変な労力がかかる事は想像に難くない。いっそのこと恒に直接聞いてしまうのが一番なのではないかと、実行することにした。




「あんまり無防備にしてると、襲っちゃうよ?」

 そんな言葉が聞こえて、和己が言葉の主である悠へ視線をやると、後ろから腕を回した悠を見上げる恒の額に唇を寄せたように見せかけていた。悠のスキンシップが多めなことに慣れてきた所為もあり、恒は基本的に無防備すぎるので、そのまま悠の好きにさせているのが和己にしてみると少々気にくわない。

 高槻に視線を移して、なんとかしろと表情だけで伝えるけれど、お前が動けとばかりに無視される。ちいさなため息をついてから

「これ、俺のだから」

 悠の腕をやんわりと外させて、恒を自分の腕の中に取り戻した。

 瞬間、恒は和己の腕に安堵したのだが、衆人環視の状況に気づいて腕から逃げ出そうとする。悠に対する警戒心はないのに、自分に対してはこれだと呆れて、和己は意趣返しとばかりに少しだけ腕の力を強くして、簡単に逃げられないようにホールドする。

 以前はそんな時には一生懸命に抵抗して腕を外させようとしていた恒だが、最近は諦めたのか抵抗せずに和己に全てを委ねることもある。自分の独占欲はどこまで恒に伝わっているのだろうかと時々和己は不安になる。

(……どうせほとんどわかってないだろうなぁ)

 とにかく向けられる好意に鈍感な恋人は、想いが通じあっているにも関わらず、和己が向ける恋心にも気づかないことがある。

 きっといつまでも、追いかける恋になってしまうのだろうと、和己もそこは達観してしまった。

 恒は和己の腕の中でそっと力を抜いて凭れかかってくる。

 そういうところがかわいいなと思うし、誰かが同じ空間にいてもキスしたいと思ったり、その先の行為を思ったりするのはもう仕方ないことだと開き直ることにしている。

 あまり長い時間スキンシップをはかっていると、また色々と面倒なので、適当な頃合で恒の身体を解放して、和己はとりあえず生徒会長の仮面を被ることにした。

「恒くん」

 圭吾が話しかけて恒がそれに答えている。ごく当たり前の日常の景色なのだが、ほんの少しだけ、圭吾の耳が朱く染まっているのに気づいて、和己はおもしろくない気持ちになる。だから初日から牽制して、うっかり拗らせる原因を作ってしまった。そこに関しては一応、反省している。

 一通り圭吾と話した恒が、誰にも気づかれないようにため息をつく。最近よく見かけるようになった憂いを帯びた表情は、和己にさえ気づかれていないと思っているのだろうか。

「和己兄」

 穏やかな声が届く。

 視線を上げた先には、次の生徒会長に立候補している弘夢の姿がある。選挙といっても他に候補者はいないため、ほぼ慣例となっている通り、そのまま信任され、今の役員が指名されて通常通りの運営がされていく事は既定路線だ。

「早めにあれ、なんとかしてくれないかな」

 弘夢の声はずっと穏やかなまで、困っているとか急かすとかそんな意図は全く感じられない。

「……なんとかねぇ」

「頼んだからね」

 早速動けとばかりの表情と、声のギャップに思わず笑ってしまった和己に念押ししてから、何事もなかったかのように振舞う弘夢も、恒のことを気にかけているのだと気付かされる。

「……高槻」

 手早く帰宅の準備をしてから、生徒会室の鍵を持つもう一人に声をかける。

「戸締り任せていいか?」

 高槻が頷いたのを確認してから、和己は恒に荷物をまとめるように促す。二人分の鞄をまとめて持つと、あとはよろしくと声をかけてから恒を引っ張るようにして部屋を出た。

久々の和己目線です。

もう少し続きます。

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