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夢のかけら  作者: 高原 涼子
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 さすがにホワイトクリスマスとはいかなかったけれど、まあとにかく寒い。

 お昼前に待ち合わせた駅の改札前もものすごく寒くて、俺はマフラーに顔を埋めるように首を竦める。電車の到着時間の差で待っているだけだから、和己もすぐに到着するはずだ。

 今日は俺が前から観たいと言っていた映画を観る予定で、夏にはじめて和己とデートしたショッピングモールに行くことになっている。

 あの時は和己が改札前で本を読みながら待ってたな、なんて思いながら立っていると、やがて到着した俺の家とは反対方向からの電車の乗客が改札にやってくる。その中に見慣れた姿を見つけた俺は、和己が出てくるのを待って歩き出した。

「おまたせ」

 和己の笑顔が俺だけに向けられるこの瞬間がとても好きだ。




 観たい映画は有名なスペースオペラの続編で、過去に何作もシリーズ化されているものの最新作だ。俺、あまり映画とか観ないんだけど、これだけは新作が出るたびに観てるくらい好きなんだよね。

 和己が興味なかったら誰か他の人を誘うつもりだったけど、たまたまその話をした時に、和己が映画鑑賞が趣味って知った。和己の知らないところを少しずつ知っていくのはとても嬉しい。

 俺がホラーは苦手だって話したら、それはもう楽しそうにホラー映画について語ってくるのには閉口したけど、それ以外の作品について話してくれる和己はとても楽しそうで、俺も興味を持った作品はいくつかレンタルしたんだ。

 そんなわけで、俺、今日はとても楽しみなんだよね。


 ◇◇◇


 俺は映画が楽しみだって言ってたはずなんだけど……。

 フードコートで簡単に昼食を摂って、シネコンに移動する。先にチケットを購入してからご飯にすればよかったと思うくらいには適度に座席も埋まっていて、一番後ろの列だけ運良く真ん中が空いていた。

「ここでいいか」

 端末を操作した和己がチケットを発券する。俺の分のチケット代を手渡して、しばらく時間があるからグッズを見てみることにする。

 パンフレットは後から購入することにして、他にもいいなと思うようなものがないかみているのも楽しいよね。付箋セットなんかもキャラクターがついているものがあってこれなら使い途もありそうだし、買ってもいいかなって思った。

「和己は何か買うの?」

 自分でもわかるくらい声が弾んでる。

「パンフレットは買う。後は財布と相談だな」

 実は和己の部屋の本棚の一部分は映画のパンフレットが占領してるんだって、最近知ったんだ。

 だから座席にもこだわりがあるのかなって思っていたんだけど、そういうものでもないみたいだ。

 予告編が流れてくるといくつか興味の湧いてくるような作品に出会う。後で和己にも言ってみて、お互いに観たいものが一致したものはまた観に行けたらいいななんて思いながら本編の開始を待つ。しばらくしてシアターが真っ暗になって本編が始まった。

 ストーリーはさすがというか、最初から物語に引き込まれるようで、息つく暇もないような展開だった。

 ……だったんだけど。

 不意に和己の手が触れた。偶然なのかなって思って気にしないでいると、手の甲をくすぐるように指先が撫でる。思わず声を上げそうになるのをこらえて手を引こうとしたのに、それを咎めるように上から握りこまれて動かせないようにされる。何度か手を引こうと頑張ったけれど、緩まないてのひらに諦めると、それが伝わったのか緩められたてのひらが今度は手を繋ぐように握られた。指を絡めて和己の足の上に導かれると、そのまま動かせなくなった。時々いたずらな指先が繋いだてのひらをくすぐって、そのたびに身体が揺れる。こんな事、真ん中の方の席でしてたら、俺は不審人物決定だな、なんて思っていた時に、一番後ろの席を和己が選んだ理由がわかって、複雑な気分になった。

 ストーリーと和己のどちらも意識していたら、なんだかとても疲れてしまって、映画観終わったら、絶対文句を言ってやろうと思っていたのに、明るくなったシアターの中、ふわりと笑う和己の笑顔を前にするとそんな気持ちが失せてしまった俺って、つくづくちょろいなあと苦笑いするしかなかった。

クリスマスデート。

次でクリスマス終わりの予定です。

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