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夢のかけら  作者: 高原 涼子
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先輩が俺の名前を知ってる理由は分かった。想定以上のトンデモ理由だったけど。脱力した俺の歩みが少しだけ遅くなったのを不思議そうに見ながらも、先輩は歩調を合わせてくれる。

「……俺、じゃなくて僕は、消しゴム拾ってやった時に名前を見たんだよって言われると思ってたんですけど」

呟くと声に出さずに笑った先輩は

「あの日は寒かったし、恒は緊張してただろ」

とフォローしてくれる。

苦笑いまでムダにかっこいいってなんなんだよ……、とか考えてたら聞き流すところだった。今さらっと名前を呼ばれたような?

「この学校は幼稚園からの持ち上がりがほとんどだから、苗字で呼ぶなんてよほど気が合わない者同士以外でないんだよ。もちろん恒が嫌なら改める」

先輩を見上げると、多分俺の反応も予測していたのだろう回答がきた。特に嫌だとは思わなかったのでそう伝えると、ちょっとだけ安心したような様子をみせてくれた。

「ついでに知りたい事はない?」

ある!

ありますとも!

多分今聞かないと、このままうやむやになりそうだし、入試の時から知りたかった事だし。

「先輩の名前を教えてください」

俺の言葉に先輩はキョトンとした表情を浮かべて、それから笑い出す。

「そ……そういえば自己紹介してなかった。俺が恒の名前を知ってたからつい忘れてた」

笑いを収めて、改めて俺に向かって笑顔を見せてくれた。

「二年の関和己と言います。改めてよろしく」

「川崎恒です。よろしくお願いします」

自分からは名乗ってないので、俺も自己紹介して。

「和己先輩って呼んでもいいですか?」

俺の事を不意打ちで名前で呼んだことへの意趣返しにはならないだろうけど、問いかけたら少しだけ驚いた表情をした先輩が、もちろんと答えてくれる。

この学校では当たり前のことなのかも知れないけれど、なんだか特別な気分だ。

ようやく名前を教えてもらえました。

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