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夢のかけら  作者: 高原 涼子
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 最近は和己が忙しすぎてぐったりしている。高槻さんもあんまり調子が良くないようにも思える。

 二人が超人みたいな所もあるうえに、行事予定が詰まっているから、放課後は生徒会室にほぼ缶詰めか、委員会があればそれに参加してるから、疲れるのも当たり前だ。

 俺としてはスケジュール調整をして、一日くらい何もない日を作ってあげたいのだけれど。

「今週は土曜日も出てくるかぁ」

 俺たち以外に誰もいない部屋の中、片付けをしているとしょうがないという口調で和己が独りごちる。体育祭は来週に迫っているし、最近はそれにかかりきりで他の事があまり進んでいないからそろそろ言いだすかなとは思ってたんだよね。

「……俺は構わないけど、高槻さんとか弘夢は巻き込まないようにしてあげて」

「ん〜?恒も休んでいいよ。そこまで俺に付き合う必要はないし、疲れてるだろ?

 いつも重要度別に書類も分別してくれているから長時間はかからないと思うし」

 言いながら和己が俺の頰に触れる。大きなてのひらが気持ちよくて擦りよせると、親指が唇に触れた。ちょっとしたイタズラ心でそれを舐めると、離れていくかと思っていたのに、一瞬だけピクリと動いた指先はそのまま口の中に侵入してきた。舌に触れる指先を噛まないようにするために閉じられなくなったのをいい事に、和己の親指が口の中を探ってくるから、俺もそれに舌を絡めて吸い上げる。目を閉じて、キスとは違う口の中の感触に夢中になった。

「……んっ」

 鼻から声が抜けて、それが思っていた以上に甘く響いて自分の声なのに下半身から力が抜ける。

 縋るように和己のシャツを掴むけれど、いつのまにか腰に回されていた腕が支えてくれなければ立っていられない。

 口から指が抜かれて、そっと目を開けると今にも唇が触れあいそうなほど近くに和己の顔があって、びっくりした俺は、慌てて目を閉じる。

 和己の唇が、額とまぶたに落とされて、唇にそっと触れたかと思うとすぐに離れていった。それが不満で目を開けた俺は和己を上目遣いでみあげる。

「……学校でこれ以上はマズい」

 苦笑いした和己が宥めるように俺の背中をポンポンと叩く。理性をふっとばすところだったと呟いているのに、腰に回した腕は離してくれない。

「和己」

 声をかけて腕から逃れようと身体を捩るのに、腕を解いてもらえなくて、困る。

「……和己」

 さっきより少しだけ強い声を出す。

「もうすこしだけ」

 甘えるように肩に顔を埋めてきた和己に俺が逆らえるわけもなく、背中に腕を回して抱きしめてみる。しばらく身動きしなかった和己が、ため息をついて顔を上げて身体を離す。

 部屋の中の濃密な空気が抜け落ちる前に、和己の隙をついて首に腕を回してキスをする。

「俺は和己が休み返上するなら、一緒に出てくるからね」

「だから、疲れてるだろうからいいって」

 宣言すると否定の言葉が戻ってくる。

「俺が、和己の側にいたいだけなんだから」

 それでも納得しきれない雰囲気の和己だけど、反対されても出てくるからいいんだけどね。

 夏休み以来、ほとんどの週末を和己と過ごしていて、お互いの家を行き来したり、和己の家に泊まった時は身体を重ねることも増えた。

 もちろん外出してそのまま帰ることも多いけれど、和己が休日に学校に出てくるなら、俺が出てこない理由はないと思うんだ。早く終われば少しくらいデートもできるしね。

「……できる限り出てこなくていいように頑張る」

 終わらなかったら俺も出てくることは拒絶されなかったから、多分何を言っても俺が納得しないことも理解してくれたんだろうな。

 鞄を持って部屋を出る。施錠した和己が俺の髪に一瞬だけ触れる。人がいないのなんて和己は確認済みだったのだろうけど、誰か来るかもしれない学校の廊下でのスキンシップってすごく緊張する。

「そういえば恒は、体育祭はどの種目に出るんだっけ?」

 歩きながら不意に問いかけられる。

「みんなと一緒で基本は本部にいるけど、学年全員参加の競技は出るよ。悠さんほどではないけど俺もそこまで運動が得意なわけではないから、それ以外は遠慮した」

 むしろ生徒会の仕事のおかげでいくつも競技に出なくて良くなってラッキーだと思っていたりする。

 そうかと返事をした和己が俺を見て笑う。

「話は変わるんだけど、体育祭終わったらテストが近くなるだろ?」

 前からお願いしたいことがあったんだけど、なんとなくタイミングが合わなくてそのままになっていたことを思い出す。

「さすがにこれだけ行事がつまってると、予習と復習が追いつかなくて。だから体育祭が終わったら少し勉強見てほしいんだ」

「もちろん、それは構わないよ。……恒がその状態ってことは、弘夢たちも一緒に見たほうがいいかもな」

 快諾してくれた和己が、後半は独り言のように呟く。少し考える様子を見せた後に、ちょっとゴメンと立ち止まってスマホでメッセージを作成する。しばらくして返信を確認した和己が少しだけ笑って俺に告げた。

「体育祭が終わった次の週末、悠ちゃんの家で合宿です」

 あれ、なんか大ごとになった……?

マジメに勉強もしてます。

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