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ホームルームの後は、普段なら掃除をしてから生徒会室に行くけれど、学期の最終日は前日に大掃除をしていることもあり、そのまま昼食をとってから移動になる。
……なるはずなんだけど。
「恒」
なぜかいい笑顔で俊に手招きされた俺。
「オスワリ」
目の前の椅子を指さして命令されました。俊はもちろん、弘夢までステキな笑顔で座っているので、逃げることもできそうにない。逃げたところで行く先は一緒だし、逃げきれるわけもない。
大人しく座った俺に笑みを深くした俊が一言。
「まあ、朝からの態度見てたらわかるけど。……白状してもらおうか」
眼鏡の奥の瞳が楽しそうにほそめられ、俺はめでたく取り調べを受けることになりました。
話すといってもたいした時間がかかる訳でもない。昨日の帰り際、先輩に呼び止められた後のことをかいつまんで話して、付き合うことになったと伝えて終わり。先輩にも弘夢と俊には話しておくと伝えていたから支障がある訳でもないのだけれど。
「まあ、僕は兄さんから悠ちゃんが和己兄のこと焚きつけたって聞いてはいたし、そんなところだろうとは思ってたんだ」
弘夢の言葉の中にちょっとだけ、気になるものがあった。
「焚きつけた……?」
誰かに背中を押されたから、先輩は俺の事を特別だっていってくれる気になった?
「兄さんから聞いた通りに伝えると、恒がもやもやするのもわかるよ。僕としては焚きつけたって言い方が悪いと思うけどね」
俺の心の中を読んだように苦笑いしながら弘夢は続ける。
「生徒会の中では、和己兄が一目惚れした編入生を職権乱用で会長付に指名したって宣言してたから、恒以外はみんな知ってたんだ。その状態で恒のことを見てると、恒も和己兄のことが好きなのが伝わってきてたんだけど、当の本人が無自覚だったし、和己兄も気づいてないようだったから知らん顔してた」
弘夢の言葉を引き取るように俊が言う。さっきまでと違って、眼鏡越しの視線も柔らかい。
「何のタイミングでかはわからないけど、恒が自覚してから、ちょっとだけ挙動不審な感じになっただろ?ぼんやり和己兄に見惚れたかと思えば、目があったら不自然に逸らしたりしてた」
「俺はごく自然に視線を外してたつもりなんだけど」
「あれが自然なら世の中の不審者は絶滅だ」
ちいさな反論は更なる反論によって弾圧された。普段優しい顔してるのに、こういう時は俊の顔が凶悪に見える。
「まあ、それは置いといて。俊が言うように、君の行動に関しては和己兄が関わるとわかりやすく不自然だったよ。……で、兄さんから聞いたところによると、さすがに和己兄もその不自然さに気がついていて、恒に嫌われたんじゃないかって泣きついたらしいんだよね」
俺が先輩のこと、嫌うはずがないのに。
どうしてという気持ちが表情に出ていたのだろうか、俊が苦笑する。
「片想いしてる相手から視線を逸らされたりすれば、嫌われてるかもって思っても仕方ないんじゃないか?」
恒だって、知らない時に和己兄からそんな態度とられたら気にすると思うと続けられて納得する。
「それで、和己兄が泣きついたから、恒のことも周りで見てた兄さんたちが、発破をかけたんだよ。
悠ちゃんも夏休みの旅行に恒を誘いたいと思ってたこともあって、それまでにギクシャクした感じをなくしたかったみたいだよ
二人揃って周りの事は良く見えるのに、自分のことは無頓着だから、お互いに意識してるのに気づかないから、このままだといつまでたっても仲良しの先輩と後輩のままだっただろうしね」
弘夢と俊に代わるがわる説明されて、少し恥ずかしい。何よりそんなにわかりやすかったのかなと、反省もする。
「……付き合うことになったっていっても、学校の中では今まで通りにするように気をつけるから」
そう言った俺に、二人が驚いたような表情になる。顔を見合わせてから俊が言った。
「無理だと思う」
なんでだ。
「恒、和己兄の側にいるだけで幸せそうな笑顔になってるから、見たらすぐわかる」
ポーカーフェイス、向いてないよと弘夢にもトドメを刺された。
「でもまあ、落ち着くところに落ち着いてくれてよかった」
自分の事のように言ってくれる二人の優しさに、感謝しないといけないと思う。
「昼ご飯、学食でいい?」
急に話が変わったけど、ちょっとだけお腹も空いてきたところだし、俺たち育ち盛りだし仕方ない。
もちろんと頷き返して動き出す。
ご飯の後は片付けと、夏休みの予定を確認して終わり。今日も和己先輩と一緒に帰れるのが楽しみだ。
放課後のひと時。
次回から夏休み。




