ボーイペロアスール9
戦いは終わった。
雄哉は、その場に座り込む。
目を瞑ると光は入ってこない。
真っ暗闇である。
全てが終わったという安堵感がある一方で、
かけがえのない者を失った喪失感でいっぱいだった。
「雄哉先輩」
雄哉は恩田の声が聞こえたような気がした。
顔を上げてみるが、そこに恩田の姿はない。
周りは暗くなっていたため、遠くまでは見えない。
「天田先生は?」
雄哉は、まだ震えている足にムチを打ちながら、立ち上がった。
周囲を見渡すが、天田の姿は見えない。
少しずつ、天田が倒れたと思われる方向に近づいていく。
ようやく、雄哉の目に天田が映りこんでくる。
ここからでは、意識があるのかどうか、その生死すら分からない状態だった。
ゆっくりと雄哉は近づいていく。
これ以上早く歩けない。
もう少しで、天田の側だ。
「雄哉君?」
天田の声だ。
雄哉は、天田の倒れた姿を確認できた。
「天田先生、大丈夫ですか?」
「大丈夫、といったら嘘ね。立ち上がれないわ」
雄哉は天田の状態を起き上がらせる。
立ち上がらせることはできないようだ。
移動せず、その場で、天田が話し始めた。
「なぜ、私が再度戻ってきたか、って聞いてきたわよね」
「はい」
「私には、分からない謎があったの。その謎を解くために戻ってきたの」
「えっ?」
「混乱させてしまったわね。 初めから話すわ」
天田は立ち上がろうと試みるが、うまく立ち上がれなかった。
骨折などの重傷ではなさそうだった。
「私が雄哉君に初めて会ったのは、子供の頃よ」
「子供の頃?」
「私は、雄哉君を暗殺するために未来から派遣された。」
「えっ、それって」
「私はウリエルよ」
「あの我がまま娘が!」
「我がまま娘で悪かったわね」
ようやく、天田は立ち上がり、公園のベンチに向かいながら話を続けた。
「私たちは、ラファエル発見・帰還されたしという指令が届いたの。
誰がラファエルを転送させ、どのような結末を迎えたのか私たちは知らなかった」
天田はゆっくりとベンチに向かっていた。
まだ、足がおぼつかない。
「雄哉君に聞いても知らないって言うし」
「つまり、僕は、この後、シラを切らないといけないということなんですね」
「ごめんなさい。
でも、これは私が誘導したのか、雄哉君が言い始めたのか分からないわね」
「そうですね」
2人にやっと笑みがこぼれる。
それは、完全に2人が戦いの気持ちからいつもの状態に戻ったことを意味していた。
「それにしても、恩田君がラファエルだったとはね。
私も毎日見ていながら気付かなかったわ」
「そんなもんじゃないですか。
僕だって、久しぶりに会う中学時代の同級生なんて、駅であったら分からないですよ。
同級生だから思い出せるなんてこともありますからね」
「確かに、人間の記憶なんてそんなものよね」
ようやく、ベンチに着き腰掛ける。
天田の疲れはピークに達していた。
油断するとそのまま寝てしまうくらいだったが、力を振り絞って話を続けた。
「青い髪の少年。
それだけが頼りだったもの。
それにしても、あの青い髪はどうしたのかしら?
黒髪だったわよね」
「不都合が多いから、髪を染めているって言っていましたよ。
てっきり、金髪かなんかだと思っていましたが、今思えば、
青い髪を染めていたということになるんですかね?」
「欺く為だったのかしら?」
「本人はいじめられたりした嫌だからとは言っていましたけどね」
「まぁ、今思えば、っていうことばかりね」
「この世界の恩田健太郎という人間はどうなってしまうんですか?」
「その点は雄哉君は心配しなくていいわ」
「えっ」
「そのうち分かるわよ」
「まぁ、いいです。
卒業して、会えなくなった親友とでも思っておきます。
ところで、天田先生はどうするんですか?」
「えぇ、私の役目は終わったわ。未来に帰るわ。
「また来るんですか」
「私はもう限界ね。
時空を飛ぶということは決して楽ではないの。
精神的・肉体的苦痛が伴うわ。
私の場合、合計4回飛んでしまった。
根拠はないけど、5回前後が限界といわれているの。
よほどのことがない限り、私はこちらの世界に来ないわ。
用事があるときは誰かを遣わすかもしれないけど」
「よかった、また面倒くさいことになりそうだったから」
「失礼ね、人をトラブルメーカーみたいにいわないでよ」
「トラブルメーカーじゃないですか」
2人は笑ってしまった。
握手をし、最後の別れをする。
「鉄道研究部の顧問は別の先生にお願いしたわ」
「ありがとう、天田先生、いやウリエル」
天田がゆっくりと公園から遠ざかる。
雄哉は、闇の中に消え行く天田、いやウリエルを見送った。
この作品は初の長編?中編作品として完結させることができました。
温かいご支援があったからこそと考えています。
今後は、時間の空いている時に加筆修正していきたいと思います。
短い間でしたけど、ありがとうございました。




