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第4話 境界を超えるとやばいのか?

 レムスと名乗った少女が警戒するように俺の様子を窺っている。

 一方ラムスと名乗った少年は足がガクガク震えて泣きそうな顔をしていた。

 

 かなりビビっているのだろう。

 それでも、レムスのことを守っているとは微笑ましい。


 まあ、大人の余裕でも見せてやろう、安心させてやるのだ。

 俺は、できる限りの友好的意思を笑顔という形で表現した。


 『マスター、パンツ1枚のほぼ全裸で、そんな表情したら不審者です。』


 うるせえええ。


 「…ここは、天空の精霊、ユピテル・オプティムス・マクシムスが太古から眠る禁忌の地、

 あなたはそのユピテルの中から現れた…誰一人、その中に踏み入ることのできないユピテルの中から…

 ロム様…あなたは何者なんですか。」


 レムスは、畏怖するように震えていた。


 ルパ、どういうこと、こいつら何言ってんの?


 『乗船許可なく船内に立ち入ろうとした者は、対人出力のディゾルバー砲で

 瞬時に蒸発していただいております。

 彼らは、まもなく警告範囲内に入ります、右舷ディゾルバー砲120門が既に照準済みです。』


 ルパさんや…。


 『なんでしょうマスター、即時排除をご希望ですか?

 しかし、国際法に則り事前警告は必要なので0.1秒ほどお時間をください。』


 そう言うことじゃねえええ。

 いたいけな少年少女を蒸発させるとかおかしいだろ。

 しかも事前警告0.1秒ってもう、事前警告じゃないからね。


 『マスターが接触をご希望するなら仕方がありません…。

 が、先方は、領域内進入の事前通知を当方に行っておりませんし、

 国際法上、こちらに正統性があります。

 威嚇行動があった場合は即座に実力行使に移行させていただきます。』


 わかった、わかった、子供相手に大げさなんだよ。

 それより、ルパ、お前ユピテル何とかって呼ばれてんの?

 めっちゃ、カッコ良くない?


 『この場所に不時着してから、3万年が経過しており、

 臨界暴走状態にある主機関からの余剰パージの様子から現地住民が私につけた呼称ですね。』


 なんだかよくわかんねえけど、羨ましいな。

 それなら、俺ももっとかっこいい名前にするんだったな。


 俺は、ルパとの通信から意識を切り替え、カッコいいポーズを止めて立ち上がり、ゆっくりと双子の方に視線を向けた。

 双子は、立ち上がった俺を見てさらに警戒を強めたように見える。


 「そんな警戒すんなよ、なんか食べるか?」


 「…。」


 俺が優しく平和的で温かい笑顔で話しかけたが、ラムスもレムスも無言のままだ、リアクションないと困るんだよな…。

 しかし、一瞬の沈黙を挟んでラムスのお腹が鳴った。


 ふふふ、仲良くなるチャンス到来。


 これは、王道の打ち解けイベントというやつではないか?

 ルパ、直ちに食事を用意しろ。


 『賞味期限が49万9999年6月超過しておりますが、

 無償提供できる食べられる可能性がゼロではい物体が数点あります。そちらでよろしいでしょうか?

 マスターは絶対に食べないでください。』


 ふざけんなあああ。

 消費期限も遥かに超過してんだろうが。

 物体と表現するようなものを子供に提供しようとするんじゃねええ。

 しかも、事実上、食べ物ゼロってことじゃねええか。


 『また、冷凍冬眠するのはどうでしょう?空腹になりませんよ。』


 絶対に嫌だ。

 なんとかしろ。


 俺が文句を言うと、一条の光が迷宮の上方に放たれた。

 複数のドローンが飛翔していく、何のつもりだ?

 食べれるものでも調達したのか?


 『近くにいた大型の炭素系生物をディゾルバー砲で狩猟いたしました。

 多目的ドローンであるピクス5機で運搬を開始しています。

 ご安心ください、間もなく、新鮮な食材が調達されます。』


 やるじゃねええか、ルパ。

 大型炭素生物ってことは、猪とか鹿とかかな?

 これは、バーベキューだね。

 最高だぜ、俺はウキウキが止まらなくなってしまう。


 ん?


 デリバリーされたのは、巨大で漆黒の狼だった。

 大きさは、10メートルを超えているだろうか。

 これは食べきれないぞ?


 んん?


 「…神獣フェンリル様…。」


 レムスが驚愕と絶望の表情で震えるようにつぶやいた。

 ラムスが脱力したようにその場にへたり込み、呆然としている。


 んんん?


 なんだろう?

 なんかやらかしたような気がするなあ…。


 「姉さま、ここは危険です、逃げましょう。」


 ラムスの瞳に光が戻り、立ち上がってレムスの手を引き、立ち上がらせた。

 レムスは、狼を見つめて悲しそうな顔をしている。


 「…守り神でもある神獣様を殺めるとは…。」


 「姉さま早く、私が必ず守ります。…お前の好きにはさせないからな。」


 なんか、すいません。

 でも、焼けば、そこそこ美味しいと思うからさ、落ち着こうよ。


 ラムスは、レムスの手を引いて、引きずるように境界の外に向かって勢いよく走り始めた。

 嫌な予感がする。


 『マスターの予想のとおりです。中には、入れますが外には出れません。

 エネルギー障壁に触れた場合、蒸発して塵も残らないでしょう。』


 ふざけんなあああ。

 さっさと、エネルギー障壁を切れえええ。


 『そんな…私との約束を破る気なのですか?』


 いちいち重いんだよお前は。

 そういう場合じゃないだろ、子供が危ないんだよ。

 

 まずい、もうそんなに距離がない。


 「行くな二人とも、そこの境界を超えるな、見えない危険な壁があるんだ。」


 「そんなのとっくにお見通しだ、私たちを捕まえるつもりだったのだろう。」


 「違うって、誤解だから、死んじゃうからあああ。」


 「この程度の結界、私達には無力だ、残念だったな、あはははは。」


 俺の叫び声を無視して、ラムスが勝ち誇ったような笑い声をあげて、境界を越えようとする。

 まずい、このままでは、管理者責任である俺はまた犯罪者だ。

 親御さんからの罵声を浴びたくない。


 「ラムス、これ、なんかダメ。」


 何かを感じ取ったレムスがラムスを庇った。

 ラムスは境界の内側に突き飛ばされて転び安全圏に戻されたが、反動でレムスが境界に重なってしまっている。

 まばゆい光が生じて、周囲が真っ白になっていく。


 『ジエンドです。』


 ふざけんなああああ。


お読みいただき、ありがとうございます。

本作はゆるいノリで建国系スローライフ異世界魔法ファンタジーとして展開していく予定です。

面白いと感じて頂けましたら【評価★★★★★】【ブクマ】【感想】を頂けると嬉しいです。

あと、同じ世界線(12000年後)の別シリーズもございます。

そちらは極寒シリアス系なので、興味があったら覗いてみてください。

【深緋瞳の魔王孵化器】

 迷宮の底で僕は宇宙を語るエルフと赤い瞳の少女に拾われた・観測外異世界物語


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