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第1話 古代宇宙飛行士説なのか?

 扉を開き、周囲を見渡した。

 見覚えのない、予想とおり見覚えのない光景だ。

 視線を落とし、両の掌を見る。

 そこには、間違いなく、俺の手があった。


 「おい、おい、誰か居ないのか、刑期終わったんだろ、服くらいくれよ。」


 返事もないし、人の気配も感じられない、こういう時ってこんなもんなの?

 記憶がなんかあいまいだ、刑期ってなんだ?


 でも、刑期でここに居たって言う認識がある。

 記憶が断片的な気がする。


 もしかして異世界転生…してしまったのか?


 『違います。』


 人が話しているように流暢だが温度を感じないしゃべり方。

 AIの合成音声だろう。

 異世界転生ではないというのは残念だが…。

 話が通じそうなやつがいて助かった。

 

 「どちら様か分かりませんが、状況説明してくれませんか?」


 『簡潔に説明します。ここは星間移民船の船内です、事故により乗員は全て退避し、

 主機関及び推進器に致命的な損傷が生じた当艦は遺棄されました。』


 「へええ、そうなんだ…で?」


 『あなたは、事故の際、自由刑の執行により、冷凍冬眠刑で受刑中でしたが、

 乗員の非難を優先した結果、取り残されました。』


 「はあああ?」


 『現在、メインサーバーとの通信は回復していませんが、

 あなたが生存可能な惑星への不時着しているため、刑期が終了したのであなたを蘇生しました。』


 つまり俺は、前科持ちで、謎の惑星で蘇生されたってことか?

 そうなんですか…?

 遭難ですね…いや、どちらかと言うと島流しだよ今の状態。


 「ふざけんなよ、迎えくらい呼んでるんだろうな?」


 『当然です。ですが、今のところ約50万年の間、返答はありません。』


 「はああああ。」


 このAIは便利なもので、俺の頭の中に話しかけてくる感じだ。

 全裸だったので、何か服がないかと頭の中で考えただけで、ブリーフを1枚くれた、どうせなら、パンツ以外もよこせよ。

 俺が外の様子を見てみようと考えると、通路にガイドマーカーが点灯した。


 それにしても記憶がはっきりしない、そんな長い間、刑の執行を受けるとは、俺はとんでもない犯罪者だったのか、伝説の宇宙海賊的な?


 『無銭飲食です。』


 はい?


 『被害者に対する弁済がなされていませんので、

 民事で賠償請求をされる前に、瓶ビール1点、醤油ラーメン1点の代金、

 及び、遅延延滞金年5分換算で、3,750万1,500円の弁済を推奨したします。』


 「ふざけんな、バカ野郎、瓶ビール1点、醤油ラーメン1点の無銭飲食で

 50万年も氷漬けにされたあげく、3,750万円払えってか?

 というか、そもそも刑罰重すぎねえか?」


 『人類が決めたことですので、刑の軽重について、意見を述べる立場にありません。』


 はい、はい、どうでもいいです。

 そもそも、宇宙のどことも知れない惑星で、50万年後に目が覚めたんだ。

 時効だよ、時効。


 記憶がはっきりしないせいか、なんか実感わかないんだよな。

 何とかなりそうな気がするし、この惑星でスローライフでもしますかね。

 王道中の王道だよね。


 宇宙船の外に出てみると、地下の空洞の中にでもいるようで、化石化した巨大な木の根のようなものが、宇宙船にびっしりと巻き付いていた。

 不時着したのは、昨日今日という感じじゃないな。


 「記憶がはっきりしないんだけど、俺の蘇生失敗してないだろうな?」


 『事故発生時、あなたは、粉々になっていましたので、

 多少の記憶の欠落が生じていることが予想されています。

 しかし、身体機能には一切の支障は生じていません。』


 へえええ?

 結構衝撃的な事実なんだけどなあ…もしかして事故の時、粉々だったから、

 死んだものとして置き去りにされたのか?


 『正確には、他の乗員の避難に支障が生じるので当方が残置するよう推奨しました。』


 「ふざけんな、バカ野郎。」


 『私には、乗員を守るという使命が必要なのです…

 あなたは、当艦の最後の乗員です。

 私の全ての管理権限を解放します。

 私の名前は「ルパ」

 貴方を全力でお守りし、あなたのご命令に絶対服従いたします。』


 まるで臣下が王に忠誠を誓って宣言したかのような荘厳さを感じた。


 マジか…。

 

 星間移民船が俺に絶対服従するってか?


 それってチートじゃん。


 俺は、万能感に包まれ、ブリーフ1枚の姿で身震いした。

 少し寒かったのかもしれない。


 「早速命令だ…。」


 『はい、マスター、全能力をもってお答えいたします。』


 「タバコくれ。」


 『健康に悪いので駄目です。』


 まるで地下の古代遺跡のような巨大構造物である、宇宙船の外壁に立つ俺の身体を、地下の異様な湿気を帯びた風が吹きぬけていく。

 淡く光る地下空洞の壁が神秘的であった。


 「ふざけんな、絶対服従誓った直後に最初の命令断ってんじゃねえよ、そもそも、あれだろ。

 人工知能として、乗員ゼロになれば、存在意義失うから、事故の時、

 わざと俺のこと置いていけとか提案したんだろ。

 お前は、そういうやつな気がするね。」


 『そのような、記録はありません。』


 「記録がないは、事実じゃないと同義じゃないからね。おまえ、1ミリも忠誠心とかないだろ。」


 『見解の相違です。

 ところで、マスター、現住巨大生物が当方に接近中です。

 マスターの生命に害を及ぼす可能性があります。

 主砲で排除いたしますので、中にお入りください。』


 急に何言っていやがる。

 主砲だと?

 嫌な予感がする…。


 『重量子反応砲最大出力発射体勢に入ります。

 当艦はエネルギーバイパスを行うため、トランスフォーメーションを行います。』


 「おいおいおい、威力過剰なんじゃねえのか?」


 『惑星ごと吹き飛ばします、必要物質は塵にしてから回収いたしますので、

 作業能率が上がります、

 なお、ブリーフ一枚では、爆発の衝撃に耐えられない可能性がありますので

 早く中にお入りくださいマスター。』


 「ふざけんなバカ野郎、刑期が終わって目覚めたばっかなんだよ、

 お前推進器壊れてるって言ってたよな?

 惑星なくなったら、どうすんだよ、宇宙船から出れねえじゃなええか、

 それってもう宇宙ニートでしかないだろ。

 ご近所様に迷惑だろーがあああ。」


 『発射シークエンス、30、29、28…。』


 ふざけんなバカやろおおお。


お読みいただき、ありがとうございます。

本作はゆるいノリで建国系スローライフ異世界魔法ファンタジーとして展開していく予定です。

面白いと感じて頂けましたら【評価★★★★★】【ブクマ】【感想】を頂けると嬉しいです。

あと、同じ世界線(12000年後)の別シリーズもございます。

そちらは極寒シリアス系なので、興味があったら覗いてみてください。

【深緋瞳の魔王孵化器】

 迷宮の底で僕は宇宙を語るエルフと赤い瞳の少女に拾われた・観測外異世界物語



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