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未来が見えるのに大金持ちにならない話〜1日3回だけ未来がみえるメガネを貰いし男〜  作者: 南月 阿鬼羅


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9/10

何かに気づいた彼女はある意味肉食系

全面的に自己責任でお願いします。

ある日。


 美咲と焼肉を食べていた。


「最近なんや、また景気ええな」


「そうか?」


「前より肉のランク上がっとる気がする」


「気のせいや」


「気のせいちゃうわw店が変わっとるがな。」


 笑いながら肉を焼く。


 別に高級店ではない。


 少し良い焼肉屋。


 以前なら月に一回。


 今は週に一回。


 その程度の違いだ。


肉を食いすぎな気がしなくもないが、これで二人とも調子がいい。


食べ放題をガッツリではなく、程々にいい肉を少しづつがいいのかもしれない。


「旅行でも行くか?」


「ええな。やっぱり、有馬か草津かな〜」


「温泉?」


「うん。部屋にあるとことかもありやね。焼肉も食べたいけど、地元の美味しいもん食べたいわ。」


「お前は、結局飯か」


「当然、飯は大事やで!」


 美咲は本気で言っている。


 優馬は笑った。


 こういう時間が好きだった。


 だから生活を変える気がない。


 未来視を使えばもっと稼げるかもしれない。


 もっと贅沢に。


 もっと美味いものを食って。


 もっと良い暮らしもできるだろう。


 だが、その先に何があるのか分からない。


 いや。


 爺さんに言われんでも分かる。


 欲や。


 人間の欲は底がない。


 俺かてええ年や。


 それぐらいの分別はある。


 恐ろしいもんや。


 祖父はノートの中で何度も書いていた。


『目立つな』


『欲張るな』


『人生を壊すな』


 おそらく経験談なのだろう。


 優馬も理解している。


 例えば毎月何百万円も稼ぐ。


 会社にバレる。


 税金が増える。


マルサが動き出したらどうすんのや。


脱税で追加徴収コワ。


 周囲に不審がられる。


 説明を求められる。


 面倒だ。


 とにかく面倒だ。


 そもそも。


 今でも十分暮らせている。


 未来視で月に数十万円増える。


 それだけで生活はかなり快適になる。


 何故それ以上を求める必要があるのか。


 正直よく分からなかった。


 いや、分かろうと思えば分かるのだろう。


 だが、分かりたくない。


 自分が欲に溺れる姿なんて、誰が想像したいものか。


 ある休日。


 パチンコ店の駐車場で煙草を吸いながら考える。


 未来視。


 一時間後を見られる能力。


 世の中には喉から手が出るほど欲しい人間もいるだろう。


 株で億を稼ぐ。


 会社を起こす。


 ギャンブルで無双する。


 そういうことも出来るのかもしれない。


 でも。


「面倒くさいんよな」


 自然と口から出た。


 勉強も嫌い。


 調べ物も嫌い。


 手続きも嫌い。


 難しい話も嫌い。


 楽できるなら楽したい。


 それが優馬という人間だった。


 未来視を手に入れたからといって、性格まで変わるわけではない。


 結局。


 やることは同じだ。


 少し勝つ。


 少し遊ぶ。


 少し良い飯を食う。


 少し自分に金を使う。


 歯医者へ行く。


 散髪へ行く。


 服を買う。


 ジムへ行く。


 酒を飲む。


 彼女と出掛ける。


 それで十分。


 未来視は人生を変える道具ではない。


 人生を少し楽にする道具だ。


 優馬はそう結論付けていた。


「別に今でも困ってないしな。その気持ちが、うまいこと自分を抑えてくれてる気がするしな」


 煙を吐きながら呟く。


 その言葉が全てだった。


 大金持ちになる気はない。


 有名人になる気もない。


 世界を変える気もない。


 ただ。


 少し楽をして。


 少し余裕を持って。


 少し楽しく生きたい。


 未来視はそのために使う。


 それで十分だった。



未来視の眼鏡を手に入れてから二年が過ぎた。


 結局。


 俺の生活はほとんど変わらなかった。


 朝起きて会社へ行く。


 営業先を回る。


 上司に怒られたり褒められたりする。


 帰宅して酒を飲む。


 休日はパチンコへ行く。


 競馬や競艇の大きなレースを買う。


 美咲と飯を食う。


 旅行へ行く。


 漫画を読む。


 ゲームをする。


 普通の生活だった。


 ただ一つ違うのは。


 財布の中身に余裕があることだ。


 生活費を気にし過ぎなくなった。


 急な出費にも慌てなくなった。


 少し良い飯を食えるようになった。


 少し良いホテルに泊まれるようになった。


 歯医者にも通った。


 ジムにも入った。


 服も以前より少しだけ良い物を買うようになった。


 全部少しだけだ。


 だが、その少しが意外と大きい。


 祖父が言っていた意味が今なら分かる。


 人生は劇的には変わらない。


 けれど確実に楽になる。


 未来視の眼鏡は今でも使っている。


 休日の朝。


 出掛ける前に眼鏡をかける。


 未来を確認する。


 それだけだ。


 もう驚きもない。


 歯磨きや財布の確認と同じ。


 完全に日常の一部になっていた。

読み終わってのクレームは、お止めください。

自己責任です。

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