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3. 気持ちを知られてるのは分かってるけど、形って大事だよね

 合格発表の日が来た。僕とかなたくんは、また手をつないで坂を登った。僕は春が来たら毎日この坂を二人で登るのだと信じてた。成績開示の紙を受け取るとお互いに見せ合った。かなたくんのほうが、5点だけ上だった。

「最後は僕の勝ちだね」

かなたくんは言った。

「やっぱりかなたくんが一番だよ」

僕がそういうとかなたくんは不意に立ち上がった。

「シグマごめん」

かなたくんは僕の方を見なかった。もしかしたら、泣いていたのかも。

「僕は絶壁には行かないんだ」

僕はあっけに取られてそこから動けなかった。


 塾では最後の締めくくりに絶壁特訓のみんなで祝勝会を行う。合格発表の日からその日まで、かなたくんとは会ってなかった。

 会場に着いたもののかなたくんの姿はなかった。突然照明が落とされスポットライトがあたり、カラオケが鳴り始めた。その先には青い衣装と赤い衣装を着ている女の子がいた。一人山之内さんで、もう一人はいつも教室で見てた、あの娘だ。彼女たちは踊りながら教室中を回った。そして、赤い服の子が、僕の前に来た。恥ずかしくなってその場を立ち去ろうとすると、

「待てコラ」

と、外見に似つかわしくない台詞と共に僕の手首が摑まれた。

「僕のこと、まだわかんないかなあ」

そう言って彼女は小さい額縁を出してきた。合格発表の日かなたくんと一緒にとった時の写真と、かなたくんの成績表が入っていた。写真と目の前の女の子を見比べてみる。

「かなたくん?」

「おうよ、戦友。やっとわかったか」

かなたくんはいつもの笑顔で、僕を見た。あの娘はかなたくんだったんだ。だかあの娘がいるとき、かなたくんはいなかったんだ。

そして僕は気づいてしまった。ずっと本人に、好きだ、受験が終わったら告白する、と力説してたということに。そして彼女が彼だと分かったいま、その気持ちがもっと強くなった、ということも。

 かなたくんも僕もスマホを買ってもらっていて、連絡先は交換した。かなたくんからは何度も連絡が来たけど、僕は返事をしなかった。ちゃんと会って言葉で伝えるまでは、メッセーだと何かが壊れてしまうと思ったから。


 入学式の日が来た。僕はまほろば中学校のブレザーとズボンに身をつつみ、始発電車に乗って入学式に向かった。かなたくんに、僕の想いを伝えるため。

「かなたちゃんに告白しろ」

僕がかなたくんが進学するまほろばに進学するにあたってお父さんが出してきた条件だ。かなたくんにも、受験が終わったら告白するって言ってたもんなあ。その時は本人に告白の宣言をしてるなんて思ってなかったけれども。

 学校に向かう並木の途中で、ずっとかなたくんが来るのを待つ。かなたくんの姿が見えた。ブレザーとチェックのスカートがよく似合っている。彼女の姿が見えた途端。僕は気に向かって背中を向けてしまった。

「何やってんだよ」

背中からかなたくんの声が聞こえた。お父さんが連れてきたみたい。

「ほら、お姫様の登場だぞ」

お父さんがぼくをけしかける。

「お父さん、ひどいよ」

「声をかける相手も、中身も違う」

そう言ってお父さんは、かなたくんの前に僕を立たせた。二月ぶりに見る彼女はちょっと髪がのびて、すっかり女の子になっていた。僕は勇気を振り絞って、彼女の手を掴んで彼女の顔を見た。

僕は、その表情から僕からある言葉をかけられる期待を感じた。

「好きです!付き合ってください」

彼女の手も震えてるのが伝わってきた。するとすぐに彼女は僕の手を離し、僕に背中を向けて、こう言った。

「考えておいてやるよ」

それから僕は彼女に手を引かれて入学式の会場に歩いて行った。


 その日から彼女とは毎日この並木を歩いていて、今日も彼女と一緒にいる。実は考えたあとの結論は、まだ聞いていない。でも、言葉なんか要らない。

今日も可愛い我が戦友は、僕の手を引いてくれる。


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