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1. 出会いは突然に、いや毎週会ってたんだけど

 いつものようにホームに降りて改札を抜けると彼女が待っていた。半袖のポロシャツにチェックのスカートがよく似合っている。彼女の名前は逢坂かなた。僕のガールフレンドだ。付き合い始めて、また2ヶ月ほどだけど、実は彼女とは長い付き合いだ。

「おはよう」

「おはよえシグマ。今日もかわいいぞ」

そう言って僕の頭を撫でる手が心地いい。僕は彼女のことはかなたくんと呼んでいる。だってしょうがないじゃないか。このまほろば中学にはいるまで、一番近くで共に戦った戦友だもの。その間ずっと僕はかなたくん、と呼び、かなたくんは僕のことをシグマと呼んでいた。


 僕が中学受験をすることになったのは、お父さんに勧められてのことだ。塾で聞いた内容はてんで分からなかったけど、お父さんがあきれながら解説してくれた。でも、算数を解くのが楽しかった。

 難しい問題をみると、ワクワクする。正解に辿り着くと心が弾む。相変わらず授業で何を言ってるのかわかんなかったけど、お父さんが教えてくれるから大丈夫。

 また、塾にはもう一つ楽しみがあったんだ。同じ教室に時々いる、ショートカットのかわいい女の子。彼女の顔を見るとそれだけで幸せになる。他にはいなかったのかって?なんか他にも人はな気はする。

 なんとか話しかけようと近づくんだけど、彼女は訝しげにこちらを見てきて、怖くなってしまう。彼女は六年生の最後まで同じ教室で時々見たんだけど、最後まで話せなかった、と思っていた。

 勘のいい人はわかるだろうけど、この美少女がかなたくん。かなたくんの方は、かわいい男の子がチョロチョロしてるから仲良くなりたかったけど、話しかけようとしたら逃げられた、と言っていた。

 こうして僕とかなたくんはお互いのことを認識しないまま、半年以上が経過してたんだ。そして、あの日がやってきた。


 お父さんに言われて大きな街にある教室に連れてこられたんだ。わけも分からず決められた席に座った。

授業が始まり、プリントが配られた。配られた算数のプリントは難しかった。最後の問題だけ解けそうだったから、それだけやった。しばらくたってから、机の天板から大きな音がした。横を見ると、隣の席の男の子がこっちを睨んだ。

「答え合わせしろって言われただろ」

そうなんだ、気が付かなかった。彼は僕の答案をひったくると、自分の答案をバン、と大きな音を立てて僕の前においた。

答案を覗き込む。ちゃんと考え方が書いてあってものすごく分かりやすい。なるほど、こうやるんだ。解答と照らし合わせる。全10問中9問正解。最後の問題だけ、何をしたかったのか正直分かんなかったけど、すごいすごい!答案の名前を見ると「逢坂かなた」って書いてあった。授業が終わったあと、また会いたいと思った。


 そしたらどうだろうか。いつもの教室に行くとかなたくんが座っていた。半袖のパーカーにハーフパンツ姿の彼女のことを、僕は憧れの君とはは別人の男の子だと思った。僕は近寄って隣に座った。

「かなたくん」

かなたくんは僕の方を見て目を見開いた。僕はかなたくんも同じ教室にいたことに驚いたのだと思ったけど、実際は違う。女の子の服の時のは逃げていき、男の子の服の時のは自分のことを空気のように扱ってた僕が突然話しかけた方から驚いたのだ、とあとで聞いた。

「座っていい?」

「当然だろ」

こうして僕とかなたくんは、戦友になった。 

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