従者は家を出された。
ラモンは孤児院の出だった。ある日、まだ1歳のラモンが孤児院の玄関に捨てられていたそうだ。
孤児院での生活は楽ではなかったが苦でもなかった。
ラモンがいた孤児院は比較的田舎の方にあって、毎年他の子ども達と、春には花冠を編み、夏には川で遊び、秋には果物を採り、冬には雪遊びをした。
たくさんの”家族”と自然豊かな”家”。死ぬまでとはいかずとも、職に就くまではここで過ごすのだろうと思っていた。
それが、10歳の時、終わった。
その日、ラモンはいつも通り洗濯を終え、廊下を歩いていた。
ふと応接室を見ると人の話し声がするのに気がついた。その中に自分の名前が出てきているのに驚き、ドアの前から耳をそばだてる。
話しているのは院長と、それよりも大分格上の男のようだった。
その話の中から、「くじ引き」だとか「聖女」だとか「従者」だとかと聞こえた。
そこでラモンはその年見つかった『聖女』の従者にされるのだと理解した。
ラモンは神を信じていなかった。
孤児院での生活は楽しかったが、幼いラモンを捨てた、母だか、父だかに嫌忌が無いかと問われればそんな事はなかった。街に出て、親子連れを見るたびに自分は逸脱しているのだと感じた。
それが、次は聖女の慈善事業の商材にされるらしい。ラモンは思わず苦笑した。