ラモンは推理する。
廊下をずっと真っ直ぐ歩いていると、4日前、ルシアが寝ていた寝室に辿り着いた。目の前は玄関で、行き止まりだ。
さて、どうしようか。
また廊下を往復してもいいが、ここらが潮時かもしれない。
それに、長く捜索をサボって、それをあの勢いのルシアに見つかったら、何が起こるだろう。正直、今まであんな彼女は見たことが無かったので、立ち振る舞いを図りかねている。
キリがいいところで再開して、少しでも前向きにルシアの手伝いができた方がいい、と思い踵を返す。ここに着くまでに通り過ぎた部屋のどれかを探すつもりだった。
足音の響く廊下を歩き、寝室を通り過ぎる。
進み続けるとだんだん足音も小さくなっていく。
そういえば。
この家は妙に足音が響くよな、と気付く。
いや、今は足音がしないから家全体ではない。ラモンはどこでそう思ったのだったか。
確か、一番最初に足音に注視したのはこの家に来てすぐだ。玄関の前でやきもきしながらイルゼが扉を開けるのを待っていた。
次は寝室でルシアの看病をしていた時だ。何回も、彼女の足音を聞いていた。
思わず寝室の方を振り返る。ゆっくりと、近づいていく。そう、ちょうどここら辺だ。
部屋の扉の前に出て、軽くつま先で床を小突く。トントン、と音が廊下にこだまする。——違う。音が響いたのは廊下にではない。床の、下だ。
床下の空間が、屋敷ができた当初からあったのならこんな響き方はしない。実際ラモンのいた孤児院の床下収納は、こんな音はしなかった。
これは後付けされた空間だ。
イルゼは最初からここに一人で住んでいた訳ではない。今はいない夫と行方不明になった娘の話を彼女自身がしていた。
『イルゼさん多分、貴族の人だったんだね。だから家だってあんな大きくて……。』
ルシアが言った推理はきっと半分間違っている。
資金が多かったのはそうだろうが、それよりもまず、この屋敷は家族が使うことが想定されて作られていた。
それがいなくなって、一人になって。彼女が犯罪に手を染めた時、その証拠をどこに隠せばいいだろう。
こんな田畑の広がる辺境の家だ。突然の来客、それこそラモン達のような客が多く来る。
イルゼが証拠を隠すために家を改造することを決めた時、それに反対する人間は、誰もいなかったのではないだろうか。




