ラモンは回想する。
——その少し前の事。
ラモンは風呂から出た後、日記を付けていた。
その日記はラモンがルシアの従者となってから毎日付けていたもので、分厚さも古さも相当なもので紙の端は茶色く色褪せ、後ろの方のページは波打つように寄れていた。
なんとなく、ラモンはそれらのページを捲る。
日付は四年前、ラモンがルシアに仕えてから丁度一年が経った日を指していた。
——××年 ×月 ×日。今日は聖女さまが勉強をほっぽり出してまちへ遊びに出た。おれは聖女さまに遊びに行くのをやめるように伝えたけど、けっきょく、一緒にまちに行くことになってしまった。
四年前の自分の記述を見て、ラモンは失笑した。
やめるように伝えた、なんて書いているが実際は殆ど取っ組み合いで、ラモンがルシアに怪我をさせた事で、ルシアを憐れんだ彼女の教師が外出を許可したのだと記憶している。
それに、いかにも残念そうに書いてはいるが、実際のラモンはこの日、ルシアからプレゼントをもらってかなり機嫌が良かった。
その後も、今日に至るまでの日々を振り返るが、従者でなくなった今、ラモンは、ルシアが少々——いや、かなり傍若無人に振る舞っていたことに、今さらながら気づかされた。
二年程前になると大分落ち着いているが、四、五年前のルシアは特にひどく、しょっちゅう聖女の仕事を放り出していた。日記には、外出ばかりしていたことが繰り返し記されている。
その頃のラモンは、「まあ、主人とは偉い立場の人なのだし少しくらいの勝手は許されるのか。」などと思っていたが全然そんなことはなかった。
そんな自分の心境の変化を、ラモンが面白く感じていた時だった。
突然、視界が閉ざされた。