第十章 Epilogue
朝日が、サーキットを照らしていた。
Helter Skelter。
まだ観客席は静かだった。
空気だけが、少しずつ熱を帯び始めている。
ピットロードでは、各チームが最後の準備を進めていた。
Rotaryauto Racing も、その一つだった。
誰も慌てない。
昨日までに、やるべきことは終わっている。
今日残されているのは、信じることだけだった。
Asoluto が静かにエンジンを始動する。
低く、力強い音。
私は自然と息を止めていた。
Enki が隣に立つ。
「緊張してる?」
私は笑った。
「少し。」
「それでいい。」
彼も笑う。
「完璧な準備なんて、存在しない。」
「だから、チームがある。」
私はその言葉を胸の中で繰り返した。
やがてスタートの時間が近づく。
ドライバーがヘルメットを被る。
エンジニアたちは最後の無線確認を終える。
誰も大きな言葉を口にしない。
「行ってきます。」
「行ってらっしゃい。」
それだけだった。
Asoluto は静かにピットを離れる。
私は、その姿を見送る。
速さだけを追いかけるなら、一人でも走れる。
でも、今日ここにいる一台は違う。
一人では生まれなかった。
一人では完成しなかった。
一人では、この場所へ来られなかった。
サーキットの向こうで、朝日が白いボディを照らす。
私はようやく理解した。
対話は、答えを決めるためのものではない。
未来を、一緒につくるためのものなのだ。
静かに目を閉じる。
遠くでエンジン音が響く。
その音は、終わりではなかった。
新しい物語の始まりだった。
最後まで『Epilogue』を読んでいただき、本当にありがとうございました。
この作品は、速さだけを描いた物語ではありません。
人と人が対話し、迷い、考え、選択を積み重ねながら、一台のマシンを送り出すまでの物語です。
レースの結果よりも、その過程にある「想い」を描きたい。
そんな気持ちから、この作品は始まりました。
タイトルである『Epilogue』には、「終わり」という意味があります。
しかし、私にとってのエピローグは終着点ではありません。
新しい一歩を踏み出す、その瞬間です。
この物語が、皆さまにとって何かを選ぶきっかけとなり、少しでも前へ進む勇気につながれば、作者としてこれ以上の喜びはありません。
最後になりますが、この作品を手に取ってくださったすべての読者の皆さまへ、心より感謝申し上げます。
また、どこかでお会いできる日を楽しみにしています。
RUBEN FERGUSON




