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復興の若桜 今仰ぎ見る

 十年ぶりに僕は震災のあったあの街を訪ねた。街の中心部は、すっかりきれいになり、当時の荒れた様子を残すものはなかった。海岸近くの住宅地だったところは、公園になり子供たちが遊んでいる。根だけ残された桜も十年も経つと若い芽が出て大きく育っている。


 ただ、あのころと違うのは、高い防波堤によってここからでは海がまったく見えないということだ。街から一歩離れると、被災当時のままに手付かずの林が広がっていた。土の斜面からいきなり杉の林に変わる。住宅地はさらに高いところにあった。


 僕の住んでいた仮設はすでに撤去されていた。当時住んでいた人はおそらく散り散りに暮らしていることだろう。朝早くからタイコをたたいていた老人はいまでも元気だろうか。裏の口うるさかった奥さんは、いまも近所と一戦交えているのだろうか。


 そんあことを考えながらいつもの山寺に足を運んだ。住職は僕が新しい仕事に就くに当たって、

「ここまでくるのは何かと大変でしょう。それに、作法は宗派によっても異なるのでわしだけでは限界がある。これを近くの寺で見せなさい。」

 といって、一通の手紙を僕に渡した。


 内容は達筆すぎて読めない。が、どの寺でも快く協力してくれた。お陰で十年、なんとかやってこれた。後で知ったが、住職はかつて奈良で修行した有名な高僧だったが、病で体を壊し、余生を田舎の山寺の住職して送っていた。


 それから程なく、命日は過ぎてしまったが、僕は彼女と幼い息子をつれて彼女のおじいさんの眠るお墓を初めてお参りした。

「なんて報告したの?」

 墓の前でしきりにつぶやいていた内容が気になった。

「おじいさんとの約束果たせましたって。」

「どんな約束。」

「ウミの結婚相手を一目みるまでは死ねないって。」


 おじいさん、安心して。生前に二回会ってるから。

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