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結奈の願い
「こんにちはー」
次の日の放課後。結奈が部室のドアを開けながら挨拶をすると
『こんちはーー』
中からは威勢のいい挨拶がいくつも返ってくる。
「あ、すいません。出たほうがいいですかね?」
結奈がそういったのは部員が着替え中だからだ。
「ん?お前が嫌じゃねーならいいけど?」
―ぶちょーも酷いなここ
口をへの字にして結奈はぼーっと部室を見渡した。
結奈を女としてみていないのか、はたまた「見られてもへーき」精神なのか。部員たちは結奈の前でも気にせず着替えを進める。
「結奈ちゃん。コーチたちの分のベンチを二つグラウンドに出してもらえる?」
陸翔に声をかけられて結奈は思わず肩を揺らした。
「は、はい」
―もったいない・・もっと見ていたかったのにぃ・・・
着替えの様子を凝視していたことを陸翔らにバレていないことを願いつつ結奈は部室を後にした。