榊詞
榊:サカキ(Cleyera japonica)
神が宿る木。
私は今日も眩しく降り立つ神様をお迎えする。
そして人々は神様を求めている。
店の繁盛を願う者。
作物が育つことを願う者。
健やかに子供が育つことを願う者。
日々の平和を望む者。
私は思う。
「この世の願い事すべてを神様が叶えるなんて、
あるのだろうか。いや、ないだろう。」
数えきれない願いを聞いているからこそ、そう思ってしまう。
神が宿る木としてあるまじき思いを抱いたその時、降り立った神様はこうおっしゃったのだ。
「彼等の願いが叶うかどうかは、保証できない。
願いが叶うかどうかは、
本人の行いによってのみ決まるからだ。
ただ、他人に願うまでの強い気持ちを
後押しすることぐらいはできるだろう。」
ああ、そうか。
人々は、神様が願いを叶えてくれると思い、信じ、願う。
ただそれは、本人の強い願いであると同時に、強い意志なのだ。
私は今日も緑の葉をつける。
神様が見間違うことがないほどに。
幾多の強い願いを背負い、
今日も常緑の葉をつけるのだ。
本題のモチーフとなった「榊」は、社寺に植樹されることが多い常緑樹です。
榊の由来はいくつかあり、「境木(神域との境)」「栄木(常緑で栄える木)」「賢木(神聖な木)」などの説があります。
特に、一年中緑の葉が茂る「常緑樹」は特別でした。
神様の尽きることのない思慮の証とされ、神様に滞在していただくといった意味がありました。
また、神道において、葉先の尖った植物には神様が宿るとされており、艶やかで、先の尖る葉先を持つ「榊」は、神が宿る木として代表的な樹種とされました。
タイトルの「榊詞」は、神への祈りや神聖な気持ちをあらわす言葉です。
神職が神様へ捧げるお祈りや雅な言葉を意味します。
このように、神様との関係が密である「榊」は、きっと様々な人々からの「榊詞(願い)」を聞いていたことでしょう。
そこで、榊が抱いたであろう疑問点を、神様からの「詞」によって気付かされる様子を描いてみました。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!




