橅輝
橅:ブナ(Fagus crenata)
差し出した身体は、喜ばれずに捨てられる。
乾いたはずの身体は、思わぬ曲がりを見せている。
「ああ、どうしてこうも上手く役に立たないのだろうか。」
他のみんなは真っ直ぐな身体で役に立てているのに、自分は自分の身体を上手に扱えない。
役に立ちたいと思うほどに、身体はひん曲がってしまう。
自分はみんなと違うダメな木なのかもしれない。
そんな時、
「君はそのままでいい。周りに合わせる必要なんてないのだから。
ただ、そのまま突っ立っていればいい。
私たちは何年もあなたのことを待っているのだから。」
冬毛になり、少し太り気味で体つきの良いクマはそう言った。
周りを見渡すと、クマ、イノシシ、シカ、ネズミ…
彼らは私がいつ結けるか分からない木の実を長年ずっと求めていたのだった。
「そうか、私は求められているのだ。私にしか結けられない木の実を求めているのだ。」
そう、私は木だ。木である橅なのだ。
太陽の光に照らされて輝く、真っ直ぐに育つ木が、
そこにはあった。
ブナは冷温帯を中心とした場所に生育し、7〜11対の綺麗な平行葉脈を持つ広葉樹です。
樹幹には多くの種類の地衣類が張り付いており、その様子から「地衣類の楽園」とも呼ばれています。
ブナは木材中の含水率が高く、腐りやすく、乾燥する際に曲がりやすいことから、木材の建材として利用するにはあまり適さず、毛嫌いされていました。
まるで「木では無い」。
これがブナの漢字である「橅」の由来であると言われています。
その一方で、ブナの木の実はクマやシカ等の多くの森林に生息する動物たちに好まれています。
ブナの木の実は約8年に一度結実するとされ、この年は食べ物に困らないことから、クマが人里に降りないと言われ、動物の生態に変化をもたらすほどの影響力の高い樹種であることが伺えます。
今回の「橅輝」は、木材として悲しい扱いをされたブナでしたが、動物たちにはこよなく愛され、「木」であることを実感し、自信を持つ。
そんなブナの性格をとらえた作品に仕上げてみました。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!




