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 会議室では今回の作戦内容が告げられた。

 内容は「不老山に向かい、未知の生物を殲滅。可能であればそのサンプルを採取。」というものだった。

 「未知の生物?サンプルの採取?」

 作戦内容について疑問しかなかったが、

 「詳細はおって伝える。既に屋上のヘリポートに一個小隊及び『SUZAKU』を待機させてある。直ちに出動せよ!」

 との、司令官からの指示に従い、海斗はすぐさま会議室を退出し、屋上に向かった。


 屋上に向かうエレベーターの前にはエンジニアと科学者らしき者が待ち構えていた。

 海斗と同時にエレベーターに乗り込み、タブレットを使用し、事態の概要を説明した。

 ·不老山の閉鎖中の研究所で未知の生物が出没したこと

 ·未知の生物の大半は警備員によって駆除されたが、大型の物が一体生息していること

 ·これらの未知の生物は高い再生能力を持っており、通常の攻撃は有効でないこと

 ·警備員の戦闘映像からこれらの未知の生物には電撃が有効なこと

 エレベーター内で以上の説明を受け、ヘリポートに到着すると、既に大型戦闘ジェットヘリ『SUZAKU』が待機しており、その前には50名の精鋭が整列していた。

 50名の精鋭達は海斗を見ると一斉に敬礼した。それは海斗にとって日常的かつ当たり前の光景だったため、立ち止まり軽く敬礼を返すとヘリに向かって、歩き出した。

 すると、列の先頭にいた副官らしき兵士が海斗に並んで歩き出し、タブレットの画面を提示しつつ、作戦概要を話し出した。

 その後ろには大型のダッフルバッグを2つ抱えた兵士が1名付いてきている。ダッフルバッグの中には武器お呼び軍服といった海斗の装備が入っている。

 作戦の概要等はこうだった。

 ·ヘリは目的地点に30分ほどで到着

 ·『SUZAKU』の両翼には暴徒鎮圧用大型テイザーガン『雷電』を装備

 ·『雷電』により大型の生物を駆除

 ·その後、研究所の屋上に設置してあるヘリポートに着陸

 ·上空及び地上から研究所周囲を偵察し、未知の生物を殲滅、サンプル入手

 副官が持っていたタブレットには、現在地から不老山までの航路、CGで描かれた『SUZAKU』の装備図、未知の生物と警備員らしき者の戦闘映像がランダムに映し出されていた。

 ヘリ後部の搭乗口に到着すると同時に以上の説明は完了した。

 海斗がヘリに搭乗するやいなや、ダッフルバッグを抱えた別の兵士が海斗自身の装備の受け渡し及び説明を始めた。

 兵士はダッフルバッグを座席用ベンチに置き、一つ一つ海斗に手渡しながら、説明を始めた。

 本来、装備の受け取りの際は兵士の説明に対し、名称や数量を大声で復唱しなければならないが、いつもの装備だったことと海斗が上官であるため、復唱はせずに黙々と装備を装着していった。が、一点だけ海斗が手に取り凝視した装備があった。

 皇グループの警備員の標準装備である特殊警棒である。本来の用途である打撃だけでなく、レーザーカッター機能及びスタンガンの機能を備えある。先ほどの映像では警備員がこれを使用し、未知の生物を駆除していた。

「この装備については注意点がございます。最大出力のスタンガン機能は未知の生物に対して有効ですが、一度しか使用出来ませんので、ご注意ください。」

 海斗は先ほどの映像でそのことについて認識はしていたが、兵士の報告について黙って頷いた。

「確か会長の御曹司が自由研究で開発したと聞いたが…」

 海斗は部下にそう問おうと思ったが、任務に特に関係ないことだったため、思い直し黙々と装備を装着した。

 海斗が装着し終わると、既に全員搭乗し、各々の座席前で直立不動で待機していた。

 海斗が座席につき、シートベルトを締めると待機していた兵士達も一斉に壁に張ってあるワイヤーに自身のハーネスと繋がっているカラビナを繋げ着席した。

 副官らしき兵士は全員の着席を確認すると、海斗に「出撃準備完了」と報告。

 海斗はインカムでパイロットに「離陸。不老山に向けて出撃」とだけ告げるとヘリは浮上し、その場で方向転換を行った。

 ジェットエンジンが起動すると瞬く間に小さくなり見えなくなった。


「大尉、目標を視認いたしました。」

 出撃してから15分足らずだろうか、パイロットの報告をインカムで受け海斗は座席に設置されたタブレットを操作し、オフラインからオンラインに切り替えた。

 オンラインは本部と会議室及び研究所と繋がっていて、ちょうど本部と研究所で通信しているところだった。

 海斗はそこに割り込む形となったが、モニターには小宮沙織の姿があった。

 あの事件依頼レースクイーンをクビになり、消息がわからなかったが、まさかこんなところで…

 海斗の胸は高鳴った。

 恨んでも恨みきれない相手ではあったが、いざ再会すると、そんな感情は消え去り愛しさがこみ上げてきた。

 もう一度この女を抱きたい…

 傍から見れば、それは単なる性欲だが、海斗にとってはそれこそが愛しさだった。


 沙織も海斗に気づき、少しだけ会話は出来たが、会長の邪魔が入ったこととヘリが目標を捉えたことで、一旦、通信は終了となった。

 

 ヘリは目標であるヘルバウンド前方上空でホバリングし、海斗の指示を待った。

 ヘルバウンドは想像以上に大きく、振動がヘリを揺らすほどの咆哮で威嚇した。

しかしながら、事前に見た映像により雷電で容易に駆除出来ると確信した。


「これより、ヘルバウンドの駆除を開始する。雷電発射準備。」

 海斗の指示のもと、コクピット両側の射手がパネルを操作した。

「照準を目標に固定。発射準備完了。」

「右翼雷電発射。」

 海斗の命令とともに無数のワイヤーが発射され、ヘルバウンドに刺さった。

「着弾確認。電撃ON。」

バリバリバリバリバリバリバリバリバリバリバリ

 ヘリのプロペラ音をかき消すかのような轟音まとともに、ワイヤーが稲光の如く発光した。

 稲光はすぐにヘルバウンドを包んだ。

 ヘルバウンドは悶え苦しみ断末魔のような咆哮をあげ、地響きとともに地面に倒れた。ヘルバウンドの表面は黒焦げ、黒煙が上がっている。

 ヘルバウンドが倒れてからも数秒間は雷電の電撃は続いたが、やがて雷電のバッテリーも切れた。電撃の間、ヘルバウンドは痙攣し続けていたが、電撃が止んだ今ピクリとも動かなかった。

「第一ミッション可能。雷電のワイヤー切り離しを行う。その後一旦研究所ヘリポートに着陸。アルファチームは雷電のサンプル採取及び地上を探索。ブラボーチームは空からの偵察後、頂上付近に降下し、地上を探索。以上。」

 海斗が、今後の作戦概要をインカムを通しスピーカーで隊にリマインドしているところ、部下達がざわめき始めた。

「ヘルバウンドは絶命しておりません。」

 副官がインカム越しに海斗に報告した。

 と、同時にヘルバウンドは立ち上がり、先ほどは比べものにならないくらい大きく咆哮した。咆哮の振動でヘルバウンドの黒焦げた皮膚はヒビ割れ地面に落ちてきている。落ちた皮膚片の跡には再生し始めている皮膚が見えた。

「クッ、もう一度雷電を!左翼雷電発射準備!」

 副官の取り乱しながらの命令に対し、

「いや、待て。アースだ。」

 海斗がつぶやいた。

「アース?」

 副官は意味が分からなかった。 

「ヘルバウンドの首にワイヤーが巻きつけられている。ワイヤーは歩道脇のポールに繋がっていて、それがアースとなり、地面に電流を逃がしている。」

 桃子が巻きつけたワイヤーだった。それがヘルバウンドの動きを止めている反面、皮肉にも雷電の電撃をほぼ無効化したのであった。

「アルファチーム!直ちに降下し、ワイヤーを切断せよ!ワイヤー切断を確認の後、左翼雷電を発射!」

 海斗の指示の元、アルファチーム内の精鋭5名が地面に降下用ワイヤーを垂らし降下の準備を始めた。

 が、その時、ヘルバウンドは咆哮とともにヘリに向かって飛びかかった。歩道に繋がれたワイヤーのおかげでヘリには届かなかったが、着地後、次のジャンプのため後方に下がったため、右翼雷電に繋がったままのワイヤーが引っ張られる形となった。その結果、ヘリがバランスを崩し、降下準備中の隊員5名がヘリから落下してしまった。

 ヘルバウンドはそれを見逃さず、落下中の隊員2名を一瞬のうちに捕食、地面に叩きつけられた隊員3名についても、程なく捕食された。

 時間にして1分にも満たない出来事であり、捕食された隊員達にとっては断末魔の悲鳴を上げる時間もないほど短い時間だったことはせめてもの救いだろう。

「身体が大きくなってないか…?」

 捕食中のヘルバウンドを見ながら、隊員の1人がつぶやいた。

 確かに大きくなっていた。

 まるで食べた物の体積分だけ増えたようだった。

 ヘリはその間になんとか体勢を立て直したが、雷電のワイヤーがまだヘルバウンドと繋がったままなので、距離を取ることが出来なかった。

「まず、雷電のワイヤーを最優先で解除!」

 海斗が命令すると同時に連続した銃声が聞こえ始めた。

 怒りに駆られた隊員がヘリ内部に搭載された機銃をヘルバウンドに向けて乱射し始めたのだ。

「馬鹿!やめろ!」

 海斗の命令を無視し乱射は続いている。

 機銃の反動が激しいこととヘリの揺れで狙いが定まらず、ヘルバウンドだけでなく周囲の地面も被弾した。地面からは弾丸でアスファルト片が砂埃のように舞い上がっている。ヘルバウンドには多少ダメージがあるものの再生の速度の方が速かった。

 むしろ余計にヘルバウンドの怒りを買った言えよう。

 雷電のワイヤーとヘルバウンドはまだ繋がったままになっていたためヘリとヘルバウンドの綱引き状態となり、操縦士はヘリのバランスを取るのに必死だった。

「ワイヤーの解除はまだか?!」

 海斗の叫びの最中にも乱射は続いていた。乱射しているのはアルファチームの紅一点、澤村和葉。普段は冷静沈着であるが、仲間に危害が及ぶと冷静さを欠く欠点がある。銃器全般の扱いに精通しており、ガンスミスのスキルも持つ。

「あの馬鹿を止めろ!」

 副官が近くにいたブラボーチームに命じた。

 ブラボーチームの1人が和葉に組みかかり押し倒した。和葉は機銃から離され乱射は止んだか、アルファチームの1人が和葉に馬乗りになっているブラボーチームに後ろから顔面を蹴撃。それを皮切りにアルファチームとブラボーチームの

乱闘が始まった。

「何やってんだ!」

 副官が制止に入ったが乱闘は止まず、見かねた海斗自らワイヤーの解除に走った。

 ようやくワイヤーは解除されたが、ヘリは慣性の法則でバランスを崩し、ヘルバウンドから大きく離れた。離れる際、ヘリが大きく揺れたため隊員のほとんどが転倒したり、壁面に打ち付けられた。

 ヘルバウンドはその隙に再びヘリに向けて飛びかかった。当然歩道のポールにワイヤーが繋がれているためヘリに届くはずがない。しかし、先ほど違う点が2点あった。

 1点目はヘルバウンドが隊員達を食したことで、体格やパワーが増していること。

 2点目は先ほどの乱射で、ワイヤーが繋がっているポールの地面が脆くなっていることだった。

 結果、ヘルバウンドのジャンプによりポールは土台のコンクリート塊ごと引き抜かれ、モーニングスターの鉄球の如く、ヘリの右翼を破壊した。

 体勢を整えるため、パイロットは左翼のジェット噴射を行い一旦は浮上したが、高速スピンを繰り返し、やがて制御不能となった。

 この際、何人かはヘリから投げ出され、ヘルバウンドの餌となった。

 ヘリは研究所のヘリポート上にある通信用パラボラアンテナに激突、破壊し、そのまま森の中に墜落した。

 ヘルバウンドもポールのコンクリート塊を引きずりながら、まるで愛犬が飼い主から投げられたボールを拾いに行くように、ヘリに向かって駆けて行った。

 



 






 


 



 

 

 

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