シュークリーム、は佑樹くん?
お待たせしました。
じぃっ、と光莉はシュークリームを見つめている。
俺の食べかけたシュークリームだ。
シュー生地は破けてカスタードが露わになっていて、そこからはこのカフェ特有の湯気が少し出ている。
「ねぇ、佑樹くん」
じぃっ、とシュークリームを見たまま俺に話しかけてきた。
「これはさっきまで佑樹くんが食べていたものだよね」
「うん、そうだけど」
「つまり、半分くらいは佑樹くんのお腹の中、
栄養になって佑樹くんの血肉になっているんだよね。」
「う、うん」
「このシュークリーム一つが一つの存在だとしたらさ」
光莉の眼の色が変わった。
「うん」
「つまりこれは佑樹くんだ。」
「ん?」
確かにそういう捉え方も出来る…か?
「これの半分は佑樹くんの血と肉になる、
これはいわば佑樹くんの一部」
「わたし今から佑樹くんを喰べるんだ…」
ここで光莉の「食べる」が「喰べる」に変わった。
光莉は少し息を荒くした。
対象が「シュークリーム」だが、
無理やりそう考えればできなくもないなくもない考え方によって、
俺を喰べるという行動に対してかなり興奮を覚えているようだった。
「いただきます!」
そう言うと何かが弾けたように勢いよくシュークリームにかぶりついた。
はぐ、はぐはぐ、はぐはむ、はむ、はむ、はむはむはむもぐもぐ、
もぐもぐ、もぐ、ごっくん。
光莉は半分はあったシュークリームをあっという間に、大切に咀嚼して、食べた。
「佑樹くん、おいしい。」
光莉は右手で右頬をおさえて、
本当に幸せそうに言った。
「それならよかっ
「だけど、やっぱりこれは佑樹くんだけど、
佑樹くんじゃないんだよ…」
光莉は俺の言葉を遮って言った。
そして幸せそうな顔から物足りなそう顔に変わった。
「……」
沈黙。
シュークリームを俺だと思って食べたはいいが。
俺を喰べてみたくなったのか。
そう考えていると、
光莉の両手が動いた。
ものすごい速さで。
そのまま光莉の両手は俺の右手を捕まえると。
両手で俺の右手を光莉の口へと持っていった。
俺の右手は光莉の口の目の前までくると、
光莉は口を開け、
喰べた。
ぱく、と
その瞬間、俺の右中指と薬指から激痛が走る。
「い"っ"!」
俺はおもわずうめく。
光莉は本当に俺を喰べるつもりなのか、
歯を立てて、指を噛んできた。
俺の指から血が出る。
だが、光莉は相当強い力で噛んでいるのか、
傷口が圧迫され血が流れない。
光莉は先の物足りなそうな顔から、満足している顔に変わった
やっと欲しかったおもちゃが手に入った、
という子供の様な幼ささえ思える。
かなり本気で噛んできているので、
かなり痛い、
が…これは愛だ。
俺はそう、認識できた。
だから、この痛みも俺は幸せにとらえられた。
俺はMではない。
これは光莉の一つの愛である。
だからこそ、それがどんな形であっても
俺は受け止めることができる。
俺はそう思った。
光の口の中はトロトロで熱く
俺の指に反応して大量に唾液が出ている。
その本能的反応も俺を求めている、
そう実感できた。
俺と光莉は今、幸せだ。
「ちょっと!二人とも!、何してるの!」
だが、幸せとは儚いものなのだ。
やっとできた。
お待たせしました。
自己満足で書き直す、
と言ったはいいけど思いつくアイデアはノクターン行きのものばかり…
かなり遅くなってしまいました。
…これ、大丈夫だよね?




