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GW2日目 8

お待たせいたしました。

楽しんでいってください。

唐突なアナウンスで興が削がれたのだろう。

先ほどまでのヒリヒリするような威圧感が霧散していく。

構えも解き、周囲を見渡していく。


「はぁ、面白くなってきたってのによぉ」


「何が条件だったのやら。で、どうすんだ?」


「辞めだ、辞め!シラけちまった。パーティー組もうぜ」


そう言ってパーティー申請を送ってくる。

こっちとしては願ってもない申し出だ。

これまでグラヴァトと戦うことはあっても、一緒にレイドしたことはなかったから。

とはいえ——


「いいのかよ。正直あんた以外戦力としては心もとないぜ。俺はボロボロ、1人は始めたばかりのルーキー、もう1人は守る気のないタンクだぜ」


「あー、ワンダーの嬢ちゃんか」


苦笑しているところを見ると、ワンダーのプレイスタイルを知っているのかもしれない。

割と有名ではあるし、一度は組んだことがあったのかもしれないな。


「まぁ、構わねぇな。ナザリアの嬢ちゃんもいるしな。」


「それもそうか」


「もしかしたらさらに増えるかもなぁ」


「あ?」


「八咫」


「先輩」


「ん?ああ、見てたのか」


グラヴァトに聞き返す前にシズとワンダーがこちらに来る。

シズの後ろからついて来ているのが噂のデュラハンだろう。

その隣が……もしかしてあのスライムか?

ナザリアも一緒だ。


「お疲れ様です」


「まったくだ、暫くやりたくねぇ」


「で、もう時間がないですけど、どうするんです」


「聞くまでもねぇだろ。さっさとパーティー組もうぜ。ほらよ、回復しとけ」


「っと、サンキュー」


話してる途中でグラヴァトが近づきながら、こちらにポーションを投げ渡してくる。

ボロボロではあったので正直助かる。

一応回復用のアイテムは常備してはいるが、何が起こるかわからないレイド戦である以上、戦闘前にアイテムを消費するのは避けたかった。


「おう、あんたが噂のルーキーか。さっきは悪かったな。お、デュラハンは聞いてたが、そっちは精霊か?ま、なんにせよよろしく頼むわ」


「シズです、よろしく」


「おう、俺はグラヴァトだ。よろしくな。レイド戦は初めてか?」


「はい」


「それじゃぁよ、色々試して思う存分楽しむといいぜ。こんだけ強え連中が揃ってんだ。何があってもフォロー出来るだろ」


「ありがとうございます」


「いやはや、共闘ですカ。久しぶりデス」


「はっはぁ、ワンダーの嬢ちゃんと組むのも久しぶりだなぁ」


「お手並み拝見ですね」


「おぅ!任せとけや、ナザリアの嬢ちゃん。シズをしっかり守ってやってくれよ」


レイド戦が得意なグラヴァトが今回リーダーになることは自然の流れなんだが、グラヴァトは余裕がある。

これが多分、ギルドマスターとしての格の違いなんだろう。


「ってかよ、レイドボス変わってたな」


「報復のドライアードでしたネ」


「報復のシダーウットの時は基本飛んでくる木の実やら根っこやらに気を付けてれば何とかなってたからな」


「ドライアードなら別にボス以外でも出てくるだろ。あの体に樹木が巻き付いているやつ。蔓やら根っこを使っての攻撃と葉っぱを飛ばしてデバフ仕掛けてくる。攻撃パターンに大きな違いはねえと思うぜ。まぁ、状態異常に気を付けてれば大丈夫だろ」


敵の特徴についての考察と対策を立てていく。

敵の中には不意を突いてくる者もいるから、予め不意打ちのリスクを減らしている。


「タンクはナザリアの嬢ちゃんに任せるわ。シズはナザリアの嬢ちゃんの後ろで待機だ。守ってもらっておけ。バフデバフのスキルが使えるんならサポート頼むわ。そいつらも戦えるんなら加勢してくれると助かるな。俺と八咫とワンダーの嬢ちゃんでダメージ稼ぐか。言うまでもねぇが今回ヒーラーがいねぇからな、ライフ管理には気をつけとけよ。状態異常に対しては状況に合わせて各自対処してくれ。まぁ、基本俺がヘイト稼ぐから、フォローしてくれや。後は相手の動きに合わせて臨機応変に頼むわ」


素早くそれぞれの役割と行動方針を展開していく。

流石にレイド戦を専門としているだけある。



残りカウントが5秒を切った。

いよいよ始まる。


「それじゃあ始めるか。さて、何が出るやら」


***


カウントが0になる。

周囲を警戒していても何も起きない。


「おい、あれは」


振り返って八咫が指差した先を見ると、大きな大木がいつのまにかそこにあった。

他の木と比べても大きさと太さが違う。


「報復のシダーウットじゃねえか」


「そうですネ、唐突に現れるのもこんな感じでしたネ」


「…っ、ナザリア!」


「守護の心得!」


焦ったようにナザリアさんに呼びかけ後ろに下がるグラヴァト。

ナザリアさんは盾を構え、


「カウンタースタンス!」


連続してスキルを発動していく。

杖を持つ手に力が入る。

グラヴァトが後ろに下がり、ナザリアがスキルを使用した。

何のスキルかは分からないが、恐らく防御用のスキル。

とくれば——


「来るぞっ」


「っ」


グラヴァトが叫ぶ瞬間、一瞬森が揺れた様に感じた。

それが合図だった。

大木から勢いよく黒い影が出て来る。


「ぐっ、このっ」


鈍い音が響き渡る。

ナザリアの盾が防ぎ、そのまま弾き返した。

飛び出た何かが巨大な木の根であることに気づく。


『Laaaaaaaaaaaaaaaaaaa』


綺麗な音色だった。

森に響き渡る、美しくも悲しい、怒りの叫び。

大木の中心が渦を巻き、中から鹿の頭蓋骨と人間の上半身が現れる。

樹木に包まれた緑色の女性、頭に鹿の頭蓋骨を被り、手には樹木の杖を持っている。


「八咫!ワンダー!」


「分かってる!」


「いっきますヨー!」 


ナザリアさんが根を盾で弾いた隙に、八咫とワンダーが左右から飛び出し、グラヴァトが根の上に飛び乗りドライアードに目掛けて突っ込んでいく。


(さて、どうするかね)


グラヴァトは俺にサポートを頼んできたが、できることは少ない。

ステータス画面を見ながら使えそうなスキルを選んでいく。

連携の邪魔になる可能性を考えると『ディープミスト』は極力使わないほうがいいだろうな。

『来るもの拒まず』は相手が切り株から生えているような状態だから効果があるのか分からないが試してみるか。

『バインド』を使っての妨害が一番効果ありそうだ。

レイドボス相手にどれだけ効果があるか分からないが。

後は『交信』を使ってバルムンクとすぃと連携していく。


「交信」


バルムンクの戦い方は把握している。

基本的にドライアードを攻撃してもらえばいいだろう。

ナザリアさんが守ってくれているんだから、守りは十分。

フォローしてもらう際は適宜指示すればいい。


『バルムンク』


『はい』


『ドライアードを攻撃してくれ。ナザリアさんが守ってくれているからこっちは安全なはずだ。何かあったら交信使うからフォロー頼むよ』


『分かりました』


問題はすぃの方で、仲間にしたばかりだからまだ戦い方を把握してはいない。

以前『吸収』『変化』『分裂』のスキルを持っていることは一応確認しているが、どうやって戦うのかは知らないからな。


『すぃ』


『んー?』


『好きに闘っていいよ』


『雑!ワタシの扱い雑よー』


『いや、ごめんよ。まだすぃの闘い方が分かっていなくてさ。教えてくれると助かる』


『まぁいいよー』


すぃが仲間になって初めての戦いだ。

しっかり戦い方を把握しないとな。


「こんのっ」


俺が指示を終えるころ、ナザリアは3度目の根の突撃を防いでいるところだった。

その隙にバルムンクが突っ込んでいく。

グラヴァト、八咫、ワンダーはドライアードに近づいて攻撃をしている。


『Luuuuuuuuuu!』


ドライアードもただ攻撃を受けているだけではない。

グラヴァトの立っている地面から鋭い根が飛び出し襲い掛かる。


「ふんっ」


斧でを斬り伏せる。

だが直ぐに上から1本、前から2本の枝が襲い掛かる。


「なんのっ」


襲い来る枝を、2本の斧を器用に振り回して対応している。

紙一重で枝を避け、弾き飛ばしている。


弾いた隙に接近しようとしているが、蔓がしなりながら邪魔をして中々近づく事が出来ていない。

ドライアードの意識は完全にグラヴァトに集中しているようだ。

だが、それは寧ろ好都合でもあった。


「お前ら、今の内だぜ!」


その間にワンダーと八咫がドライアードに攻撃を与えており、バルムンクもドライアードの背後に回り込み攻撃を始めた。


「っ」


「先輩、よそ見はダメですヨ!」


「っ、分かってる!」


グラヴァトはドライアードの攻撃に十分対処は出来る。

だったら狙いを引きつけて他のアタッカーでダメージを稼ぐ戦術が有効だ。


「バインド」


後は適度に妨害を仕掛ければいい。

試しに使ってみたが、ありがたいことにドライアードにも効果があるらしく、動きを止める事に成功する。


グラヴァトも言っていたが、色々試してみるのもいいかもしれないな。


「Luaaaaaa!」


「…もう切れたか」


残念ながら捕縛出来る時間は少ないようで、直ぐに解除されてしまう。

だがそれで問題ない。

目的は他のアタッカーが攻撃できるような隙を作り出すことだ。


「ナイスサポート!」


ドライアードがバインドを解除する間、攻撃が一瞬緩む。

その間にグラヴァト達が滑るように接近して攻撃する。


「スタンクラッシュ!」


相手の動きを止める攻撃だろうか。

グラヴァトのスキルでドライアードの攻撃の手が止まる。


「おらっ、叩き込め!」


「チャリオット!」


「ジャブ、ブレイズキック、落葉、ジャブ」


ワンダーは槍で突進し、八咫は流れるようなスキルの連発でダメージを稼いでいっている。

これまでの攻撃で削ったのは大体4分の1程度だ。

順調にドライアードのHPを削っていっている。


「Luuuuuuuuuu」


ドライアードの動きに変化が見られた。

これまで木の根や蔓で行っていた攻撃が急に止まったのだ。

手に持った杖を上空に掲げ、まるで何かを祈るように——


「お前ら!何かくるぞ!」


「シズさん、私の後ろに」


「分かりました」


グラヴァトの指示が飛び、ナザリアの後ろに隠れる。

その直後だった。


「Luiiiiiiiiiiiiiii!」


杖を掲げていたドライアードがついに動き出した。

叫びと共に杖で地面を叩き、光が周囲に広がり、木々が揺れ、周囲の草花が一気に赤く染まり、花びらが宙を舞う。


(凄い、綺麗だ)


レイド中であることを忘れてしまうほど、その光景は美しかった。

しかし、それは一瞬のことで、ゆらゆらと宙を舞っていた花びらが、一斉にピタッと止まる。

まるで時間が止まってしまったかのようだった。


そして、ゆったりとした動きでこちらを向く。


「やばっ」


周囲の赤が一斉に襲い掛かってきた。

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