『島根・八岐大蛇の残響と縁結びの出雲そば』
東京の空は、雲一つない見事な冬晴れだった。世界を飲み込もうとした巨大な『忘却の渦』の事件から数週間。閑静な住宅街の片隅に佇む『喫茶まほろば』は、すっかり元の穏やかな日常を取り戻していた。
チクタクと、アンティークの振り子時計が静かに時を刻む。磨き上げられた飴色のカウンターの奥で、朝倉湊は真鍮のドリップポットを傾け、糸のように細い湯を珈琲の粉へと落としていた。プクプクと焦げ茶色のドームが膨らみ、店内にはブラジルとマンデリンをベースにした『まほろば特製ブレンド』の、深く香ばしい香りが満ちていく。
「……んん〜っ! やはり平和な朝に飲む湊の珈琲と、この極厚タマゴサンドの組み合わせは、世界を救った狐にのみ許される至高の贅沢ですね!」
カウンターの端で、白妙がセーラー服の襟元を揺らしながら、顔の半分ほどもある分厚いタマゴサンドに大きな口を開けてかじりついていた。サクッと焼かれたトーストの音と、出汁をたっぷりと含んだ分厚い卵焼きのジュワッという音が、静かな店内に小気味よく響く。
「お前は世界を救う前から毎朝それを食ってるだろうが。それに、事件が解決したからといって、日本中から『伝承の改変』が完全に無くなったわけじゃない」
湊が呆れながら淹れ立ての珈琲を差し出すと、白妙は「ふふん」と得意げに狐の耳をぴんと立てた。
「分かっていますよ。大元の『虚無』を払ったとはいえ、人間の生活スタイルが変わる以上、地方の記憶は少しずつ風化していきます。だからこそ、私たちがいち早く現地へ飛び、美味しいご当地グルメを胃袋に収めて記憶を繋ぎ止める『喫茶旅』の重要性は、むしろ増しているのです!」
「結局食いたいだけだろ」
カランコロン、と重厚なドアベルが鳴り、冬物のトレンチコートを羽織った千歳が店に入ってきた。 その手には、いつもより分厚く、そしてどこかものものしい装丁のファイルが握られている。
「おはよう、二人とも。相変わらず元気そうね」
「いらっしゃい、千歳さん。……なんだか、また厄介そうな事件の匂いがするな」
湊が新しいカップを用意しながら尋ねると、千歳はカウンターの丸椅子に腰を下ろし、ファイルをそっと開いた。
「ええ。東京での大異変を乗り越えた今だからこそ、あなたたちに頼みたい案件よ。……舞台は、神々の国、島根県・出雲地方」
「出雲……。日本神話の中心地ですね」
「その通りよ。古事記や日本書紀に記された神話や伝承は、日本の文化の根幹。けれど、神話があまりにも有名になりすぎたせいで、現代の人間たちはそれを『ただのファンタジー』や『観光資源』としてしか見なくなってしまったの」
千歳は、ファイルに挟まれた一枚の写真―濁流が渦巻く、巨大な川の写真を指差した。
「出雲を流れる、斐伊川。古事記において、須佐之男命が『八岐大蛇』を退治したとされる伝説の舞台よ。……現在、この斐伊川の流域で、雨も降っていないのに川が氾濫し、巨大な『泥の蛇』が暴れ回るという異常現象が起きているわ」
「八岐大蛇……! まさか、あの伝説の化け物が現代に蘇ったとでも言うのですか!?」
白妙がタマゴサンドを飲み込み、目を丸くした。
「古事記に記された大蛇そのものではないわ。あれは『水害』や『荒ぶる川の神』を怪物として具現化したものだという説が有力よ。けれど、古くからこの川の底には、その神話の残響から生まれた『大蛇の妖』が確かに眠っていた。……それが今、人間への怒りと悲しみを抱えて、再び悪鬼として目覚めようとしているの」
千歳は眼鏡の奥の瞳を鋭く光らせた。
「神話の時代から続く、神と人との『縁』が切れかかっているわ。朝倉さん、彼らの記憶を繋ぎ直してちょうだい。喫茶まほろばのマスターとして」
「……了解した。出雲だな。行こう、白妙」
湊がエプロンを外すと、白妙は残りのタマゴサンドを一瞬で胃袋に収め、力強く頷いた。
「はい! 出雲と言えば出雲そば! そしてぜんざい発祥の地! 神在月の神々にも負けない食欲で、伝説の化け物を鎮めてみせます!」
飛行機で出雲縁結び空港へ降り立った二人は、レンタカーを借りて冬の冷たい風が吹き抜ける斐伊川の流域へと向かった。 どこまでも続く広い空の下、なだらかな中国山地を背景に、斐伊川は穏やかに、しかしどこか不気味なほどの静けさで流れていた。
「……湊。川から、とてつもない重圧を感じます。沖縄の海坊主や山形の川蛟とも違う……何千年もの間、土の底で澱み続けたような、古く、巨大な妖気です」
白妙がコートの襟を合わせながら、普段の食欲を忘れたように険しい顔で川面を睨みつけた。
「ああ。これが神話の残響……『八岐大蛇』の気配か。だが、まずは腹ごしらえと情報収集だ。近くに美味そうな蕎麦屋がある」
二人が訪れたのは、斐伊川の近くにある古民家を改装した老舗の蕎麦屋『八雲庵』だった。 店内には、蕎麦の香ばしい匂いと、カツオと昆布の出汁の甘辛い香りが漂っている。
「いらっしゃいませ。ようこそ出雲へ」
割烹着姿の女将が、温かいそば茶を出してくれた。
「名物の『割子そば』をお願いします」
「はい。何段にしましょうか?」
「とりあえず、私は十段でお願いします!」
白妙が元気よく注文すると、女将は目を丸くしながらも「はい、喜んで」と奥へ下がった。
出雲そばは、蕎麦の実を皮ごと挽き込む「挽きぐるみ」という製法で作られるため、色が黒く、蕎麦本来の野性味あふれる強い香りが特徴だ。 運ばれてきたのは、朱塗りの丸い漆器(割子)が三段(白妙の前にはタワーのように十段)重なった見事な蕎麦だった。薬味には、刻み海苔、ネギ、もみじおろし、そして鰹節が添えられている。
「出雲の割子そばは、ツユを直接器にかけて食べるんだったな」
湊が一段目の蕎麦に薬味を乗せ、徳利から少し甘めのツユを回しかける。
「いただきます!」
白妙がズズッと豪快に蕎麦をすすり上げた。
「んんんーっ! 蕎麦の香りが物凄く強いです! 噛みしめるたびに、大地の力強い風味が鼻へ抜けていきます! そしてこの甘辛いツユに、もみじおろしのピリッとした辛味が絶妙なアクセントになって……一段、二段と、無限にお腹に吸い込まれていきますよ!」
白妙は言葉通り、わんこそばのような勢いで割子を空にしていく。 湊も蕎麦をすする。野趣あふれる蕎麦の香りと、ツユの旨味。神話の時代からこの土地の人々が命を繋いできた、大地の力強さを感じる味だった。
「美味いな……。女将さん、実は少し聞きたいことがあるんです」
湊は、空になった割子を重ねながら、カウンターの奥の女将に声をかけた。
「最近、この近くの川で、泥の化け物が出るとか、奇妙な水害が起きているという噂を聞いたんですが」
女将の手がピタリと止まり、彼女は周囲を気にしながら小声で話し始めた。
「……お兄さんたちも、その噂を聞いてきたのかい。ここ最近、斐伊川の様子が確かにおかしいんだ。昔からこの川は『暴れ川』と呼ばれて、何度も大洪水を起こしてきた。それが『八岐大蛇』の伝説の元になったとも言われているんだけどね」
女将は悲しそうに目を伏せた。
「昔の人は、川の氾濫を恐れつつも、川が運んでくる肥沃な土や、砂鉄の恵みに感謝して生きてきた。秋には川の神様を鎮めるために、一番出来の良いお米で『お酒』を造り、川に捧げる祭りを欠かさなかったんだよ。古事記でスサノオが八岐大蛇に飲ませた『八塩折の酒』みたいにね」
「酒を、川に……」
「でもね……時代の流れで、川岸はコンクリートで固められ、ダムができ、人々は川を『ただの風景』としか見なくなった。一番古くから川に酒を捧げていた地元の造り酒屋も、後継ぎがいなくて先月ついに店を畳んでしまったんだ。……神様への感謝を忘れたから、川の主が怒って大蛇になって蘇ったんだと、年寄りは怯えているよ」
湊は静かに頷いた。 神話とは、単なる魔物退治のヒロイック・ファンタジーではない。 自然の驚威と向き合い、恐れ、敬い、共に生きていくための「記憶の装置」だったのだ。 その記憶が失われ、ただ「怪物を倒した武勇伝」だけが観光用に消費される現代。川の神である大蛇の妖が、人間への絶望から悪鬼へと堕ちていくのも無理はない。
「……女将さん。その閉まった造り酒屋に、まだ『酒粕』は残っていないでしょうか」
湊の真剣な問いに、女将はハッとして顔を上げた。
その日の深夜。 月が分厚い冬雲に隠れ、斐伊川の河川敷は底知れぬ漆黒の闇に包まれていた。 冷たい風が川面を撫で、ヒュルヒュルと泣き声を上げている。
湊と白妙は、河川敷の中央に陣取り、カセットコンロの上に大きな土鍋を乗せて火にかけていた。 鍋の中では、昼間の造り酒屋の元当主から譲り受けた、最後の「純米大吟醸の酒粕」と、大根、人参、鮭の切り身、そして出雲の清らかな湧き水を使った『特製酒粕汁』がぐつぐつと煮え立っている。 アルコール分は飛ばしてあるが、酒粕特有の芳醇で甘く、そして神聖な香りが、湯気となって冷たい夜風に溶け込んでいった。
「湊……来ます! 川の底から、とてつもない質量の『怒り』が……!」
白妙がセーラー服の袖を捲り上げ、十本の指先に青白い狐火を宿した。その九つの尾の幻影が、闇の中で大きく揺らめく。
ゴゴゴゴゴ……ッ!!
大地が鳴動し、斐伊川の水面が爆発したように隆起した。 大量の泥水と土砂を巻き上げながら、天を衝くほどの巨大な姿が現れる。 それは、八つの頭と八つの尾を持つという神話の怪物の姿そのものだった。全身はドロドロとした黒い泥で覆われ、十六の瞳は血のように赤く爛々と輝いている。
『ギョオォォォォォォォォッ!!』
八つの頭が同時に咆哮を上げると、すさまじい突風が吹き荒れ、河川敷の木々が薙ぎ倒された。
『……忘レタカ……人間ドモ……。我ヲ、我ノ恵ミヲ……!』
大蛇の一つの頭から、地鳴りのような怨念の声が響く。
『我ハ川! 我ハ大地! スサノオトノ誓イヲ忘レ、我ヲコンクリートニ閉ジ込メ、酒ヲモ捧ゲヌ忘恩ノ徒ヨ! 再ビコノ地ヲ、泥ノ底ヘト沈メテクレルワァァッ!!』
八岐大蛇の口から、猛烈な勢いで泥の濁流が放たれた。それはまるで、全てを飲み込む洪水のようだった。
「させませんっ!! 狐火・大障壁!」
白妙が前に飛び出し、全妖力を込めた青い炎のドームを展開する。
ドバアァァァッ! と泥の濁流が炎の壁に激突し、凄まじい水蒸気が立ち昇る。
「くぅぅっ……! さすがは神話クラスの妖……! 重さが、違います……!」
白妙の足が、ズズッと後方に数センチ押し込まれる。
「白妙、持ち堪えろ! もうすぐだ!」
湊は、横殴りの風に煽られながらも、土鍋の中の酒粕汁をゆっくりと木の椀によそった。 芳醇な酒の香りが、さらに強く夜空に立ち昇る。
『……ッ!? コノ……匂イハ……!』
八岐大蛇の八つの頭が、ピタリと動きを止めた。 血走った赤い瞳が、湊の手の中の椀を凝視している。
「あんたが欲しかったのは、これだろ!」
湊は、吹き荒れる風の中を一歩前へ踏み出し、椀を高く掲げた。
「神話の時代から、人間はあんたをただ恐れていたわけじゃない! 川がもたらす恵みに感謝し、共に生きるために、一番美味い米で酒を造って捧げていた! これが、その『誓いの味』だ!」
湊は、自ら椀に口をつけ、熱い酒粕汁をゴクリと飲み込んだ。 鮭の旨味と根菜の甘み、そして酒粕の深い香りが、冷え切った内臓を芯から温めていく。
『記憶の味』。
湊の意識を媒介として、出雲の土地に刻まれた何千年もの『共生の記憶』が、八岐大蛇の精神へと怒涛のように流れ込んでいく。
視界に広がるのは、神代の昔。古事記の世界。 猛り狂う斐伊川の濁流を前に、人々はひれ伏し、祈りを捧げている。 そこに現れたのは、一人の屈強な男――須佐之男命。
彼は剣を抜き、ただ怪物を切り刻もうとしたのではない。 人々に命じて、垣根を作り、八つの樽に極上の『八塩折の酒』を満たさせた。 芳醇な酒の香りに誘われ、川の化身である大蛇が頭を突っ込み、その美酒を飲み干す。
酒を飲んで酔い潰れた大蛇を、スサノオが討ち取る。 ―それは『退治』という名の、『治水』の儀式だった。 暴れる川のエネルギーを、酒という人間の文化と技術で鎮め、大蛇の尾から見つかった『草薙剣』は、川が運んでくる砂鉄から生まれる『製鉄』の恵みの象徴だった。
『見事な酒だ、人間よ……』
記憶の中で、酔い潰れた大蛇の意識が、スサノオに向かって微笑むように語りかける。
『我の怒りは鎮まった。これからは、この川の水を使い、豊かな米を育てよ。そして秋にはまた、この美味い酒を飲ませてくれ』
人間と神の、美しい約束。それ以来、出雲の人々は川を敬い、秋には必ず酒を捧げてきた。恐ろしい化け物退治の物語の裏には、自然の猛威を恐れながらも、その恵みに感謝し、寄り添って生きようとした、人間の切なる『祈り』が隠されていたのだ。
ビジョンが、熱と共に弾ける。
『……アァ……』
現実の斐伊川の河川敷。 八岐大蛇の全身を覆っていたドロドロの黒い泥が、雨に打たれたようにサラサラと崩れ落ちていく。その下から現れたのは、月明かりを反射して銀色に輝く、美しい水竜のような本来の鱗だった。 血のように赤かった瞳は、静かで澄み切った翡翠色へと変わっている。
「思い出したか。あんたは、人間に退治された怨霊なんかじゃない。この土地に恵みをもたらし、人間と一緒に酒を酌み交わす『豊穣の神』だ」
湊は、空になった椀を下ろし、静かに語りかけた。
「造り酒屋は閉まっちまったかもしれない。でも、この土地の人間が酒粕を食べて温まり、川の恵みに感謝する心は、まだ完全に消えちゃいない。……俺が、その記憶を繋ぐからさ」
『……人間ノ子ヨ……』
八岐大蛇の八つの頭が、ゆっくりと湊の前に首を垂れた。その声には、先ほどまでの激しい怒りは微塵もなく、どこまでも深く、穏やかな川のせせらぎのような響きがあった。
『……酒粕ノ匂イ、シカト味ワッタ。スサノオノ酒ニモ劣ラヌ、温カク、優シイ味デアルナ……』
大蛇の翡翠色の瞳から、大粒の涙のような水滴がポロポロとこぼれ落ち、斐伊川の水面へと還っていく。それは、永きにわたる孤独と絶望が洗い流された、浄化の涙だった。
『……我ハモウ一度、コノ川ノ底デ眠リニ就ク。人間タチガ、マタイツカ、美味イ酒ヲ造リ出ス日ヲ夢見テ……』
八岐大蛇は天に向かって静かに嘶くと、月明かりを浴びてキラキラと輝く水飛沫を上げながら、深い川の淵へとゆっくりと沈んでいった。 荒れ狂っていた川面は、嘘のように穏やかな流れを取り戻し、冷たい冬の風だけが通り抜けていく。
「……終わりましたね、湊」
白妙が狐火をしまい、ほっと息をついた。
「ああ。神話の神様も、結局は美味い酒とメシには敵わないってことだな」
湊は土鍋の火を消し、冷たい空気を深く吸い込んだ。
「湊! 私、神話クラスの妖と対峙して、妖力とカロリーを異常に消費してしまいました! 残っている酒粕汁と……明日の朝は、出雲名物の『ぜんざい』を要求します! 紅白のお餅を三つずつ入れてください!」
「お前は本当に……。まあ、今回は大活躍だったし、酒粕汁のおかわりくらいはくれてやる」
「やったー!」
深夜の河川敷で、人間と狐の妖が、一つの鍋を囲んでいる。 川底からは、その様子を優しく見守るような、微かな水の波動が感じられた。
翌日。 縁結びの神様として名高い出雲大社の門前町。参拝を終えた湊と白妙は、老舗の甘味処で、湯気を立てる熱々の『出雲ぜんざい』を向かい合って食べていた。
「んんんーっ! 小豆の優しい甘さと、香ばしく焼かれたお餅! 出雲が『ぜんざい(神在)発祥の地』と言われるのも納得の、神々しい美味しさです!」
白妙はお餅をびよーんと伸ばしながら、至福の表情を浮かべている。
湊が呆れながらお茶を飲んでいると、スマホが鳴った。
『お疲れ様、朝倉さん、白妙ちゃん。斐伊川の妖力異常、完全に鎮静化したわ。まさか八岐大蛇の怒りを「酒粕汁」で鎮めるなんて……古事記の編纂者もびっくりね』
「千歳さん。神話ってのは、人間が自然とどう折り合いをつけてきたかっていう『記憶の味』そのものだったよ」
『ええ、そうね。……大元の虚無を払っても、日本中にはまだまだ、忘れられかけている伝承や神話の神々がたくさん眠っているわ。あなたたちの「喫茶旅」は、これからも忙しくなりそうね』
「望むところだ。次に行く場所が決まったら、また連絡してくれ」
通話を切ると、白妙がぜんざいの器を綺麗に空にして、キラキラとした瞳で湊を見つめていた。
「湊! 次はどこへ行きますか! 高千穂で天岩戸の伝説を追いながらチキン南蛮を食べますか!? それとも伊勢で天照大神の恵みを感じながら伊勢うどんですか!?」
「お前は本当に……食うことしか頭にないんだな」
湊は苦笑し、店を出て空を見上げた。 神話の時代から続く、青く澄み渡る出雲の空。 人間と妖、そして神々が、形を変えながらも同じ土地で生き、記憶を紡いできた証が、この国のあちこちに残っている。
「……まあ、どこへ行くにしても、まずは『まほろば』に帰って、美味い珈琲を淹れてからだな」
「はい! 帰りの飛行機では、カニ寿司のお弁当を買ってくださいね!」
昔話は、終わらない。
誰かが覚えているかぎり、そして美味しい料理があるかぎり、彼らの『記憶を取り戻す喫茶旅』は、今日もどこかで温かく続いていくのだった。




