35、水の国-4
アルフォンスに宝石みたいな瓶詰めの飴を買ってもらい、1個口に入れて転がしながら、次に向かうのは大きな水竜の所だ。
「水竜はね、前に見た飛竜の仲間なんだよ」
『おなかま?』
「そうそう。飛竜、地竜、水竜がね」
「アイス竜皇国の竜族や竜人族からすると、家畜のような扱いであるらしいですね。動物と獣人族が全くの別物であるように、同種扱いすると怒られてしまいますので気を付けましょうね」
イドラちゃんの解説に、ヒリンさんが詳細を付け加える。
なるほど、それも他種族との付き合いの中でのタブーというやつだ。わたしはいい子のお返事をしておいた。
『はーい』
そしてご対面した水竜は、つぶらな優しい瞳がチャームポイントの、大きな蛇のような怪物だった。
小さい水竜もあれはあれで格好良かったけれど、大きい版は迫力が段違いだ。
『おっきい……』
「エステレラも将来このくらいにはなるんじゃない?」
『ええ?こんなにおっきくなるかなあ』
「古代竜は個体差が激しいですからね。エステレラさんのようなタイプはあまり見ませんし、未知数ではあります」
どうも古代竜は見た目が全然違うようだけれど、それでもわたしみたいななりの古代竜は希少らしい。確かにわたしの見た目は、竜……?という感じなので、亜種感は大いにある。
『あんまりおおきくなりすぎなくていいや』
「そうなの?」
『はじめてあったひとにこわがられちゃいそうだもん』
「ああ、まあ確かにな」
水竜達に別れを告げて、街中をボートで散策していると、陸地に特徴的な金色の煌めきが見えた。
『あっ、えりあさんだ!』
「んっ?……あ、本当だ。よく分かったね?」
イドラちゃんの言葉に、わたしは胸を張って答えた。
『かみがきんいろできらきらしてるから!』
「ああ、古代竜は光物を好みますからね」
『そうなの!?』
ヒリンさんは確実にわたしよりもわたしの事に詳しいだろう。流石はヒリンさんだ。
「あら、じゃあエリアの髪はエラにとって光物と同じという認識なのね」
万里乃さんが可笑しそうに肩を揺らした。
言われてみれば、エリアさんの髪を見てむずむずするのは、光物が好きという本能なのだろう。エリアさんの髪は金の滝のようで、本当に綺麗だから。
『えりあさんがはいったおみせ、りくにあるね』
「この街で陸地に店を構えているという事は、余程規模が大きいか必要とされている店か、ね」
「えっとね、エリアが入って行ったのは魔導書の店みたい」
種族柄目がいいイドラちゃんが、ちらりと見ただけで分かったらしく、教えてくれた。
「そりゃ陸にあるか、魔導書は高価だもんな。ボートで売って水路に落としたりなんかしたら大変だし」
本が濡れないように陸地に店を構える。なるほど、それはそうだ。
「いいの入荷してるかな?後でエリアに買った戦利品見せてもらおーっと」
わたしの話し相手になってくれるイドラちゃんは、結構年相応なので忘れがちだけれど、イドラちゃん、神童と呼ばれてもおかしくないくらいの魔術の才能を持っている。
しかも才能に胡坐をかかないで、努力していることも知っている。知識を貪欲に求める一面もある。
伊達に炎の勇者一行のメンバーではないのだ。
『ぎゃりっくさんはどこかなあ?おさけかうっていってたよね』
「酒屋だとは思うけれど……。この国には酒屋は沢山あるから特定は難しいわね」
「ギャリックって、色んな国の酒を堪能する為に炎の勇者パーティにいるんじゃないかって時々思っちゃうもん」
イドラちゃんがちょっと笑いながらそう言った。
アルフォンスは苦笑いだ。
「正直、パーティメンバーの誰をとっても俺には勿体ないくらいだからなー。酒の為でも着いて来てくれるなら、まあ」
「アルは時々物凄く卑屈になるわよね」
「自信持ちなって、リーダー!」
わたしから見ても、アルフォンスは立派にリーダーしていると思っていたけれど、本人的にはまだ足りないのだろうか。
メンバーはあんなにアルフォンスを信頼しているようなのに?難しいなあ……。
わたしが首を捻っている内に、ボート市場は雑貨中心の品揃えになっていた。
「あ、ちょっとそこの店に寄ってくれる?」
「ええ、分かりました」
イドラちゃんが指差したのは、色とりどりのリボン屋さんだった。
『りぼんだね!いーっぱいあるよ!』
「ね、ね、エステレラ。お揃い買わない?」
『おそろい!!!』
わたしの尻尾がぴーんと立った。
お揃い。おんなじものを身に着けて、仲良しアピールをするあれだ。憧れのあれだ……!
『まりのさんは!?』
「ごめんなさいね、私は流石にリボンを身に着けるような歳ではないから遠慮しておくわ」
『そっかあ……』
残念だ。とっても残念だ……。
しかし次井の瞬間、わたしはいい考えを思いついた。
『だりあちゃん!だりあちゃんともおそろいしたい!』
「ダリアと?それもいいね!じゃあ3人でお揃いのリボン買おっか!」
『やったあ!』
アルフォンスの妹のダリアちゃん、彼女の澄まし顔が脳裏に浮かぶ。
ちょっぴりつんけんしているけれど寂しがり屋のダリアちゃんだから、きっとほっぺたを赤くして喜んでくれるだろう。
「エス坊、ありがとな。ダリアもきっと喜ぶ」
アルフォンスが、お兄ちゃんの顔で微笑んだ。
「……でも、3人でお揃いだと何色にすればいいのか分かんないね。2人なら相手の目の色とかにすればいいけど……」
太さも色も、生地もいっぱいのリボンを前に、イドラちゃんが唸る。
「白……だとエラの毛並みに映えないから、その薄桃色のリボンはどう?私は同じリボンは身に着けられないけれど、刺繍してあげるわよ。3人の目の色で」
「本当!?ありがとう万里乃!」
『わあい!わあい!』
そうして、イドラちゃんとダリアちゃん用の、髪を纏める為のやや幅広のリボンと、わたし用の、将来性を考えた一番太くて長いリボンを買った。
万里乃さんがしてくれる刺繍は、どんなのなんだろう。楽しみだ。
読んでくださりありがとうございます。
前回に続いて、微塵も話が動かない回でした。笑
次は辺境に行きますので……!




