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「コーンクリーム頼むぅ!」
なにやら背後から聞き慣れた声がする……。
振り返るとそこには魔王様が一人。カフェテラスで朝の一杯をやろうとしてる最中だった。
「ま、魔王様?!」
思わず駆け寄り声を荒げてしまった。
勇者は……? あれ……?
「あー! ルー君! 今日はなんだって言うんだ! とっくに目覚ましの時間は過ぎてるぞ! 魔王であるこのわたしを起こしに来ないとは! このサボりん坊め!」
いい。この際、好きに言わせておきましょう。
それよりも今は聞かなければいけないことがある……!
「……あの、それで……勇者は?」
「ベー君と畑に行ったぞ!」
「なんですと?!」
あいつ!
なんと空気の読めない男!
でも魔王様のこの様子。
まだ朝の早い時間だと言うのに、普段よりも冴えておられる。いやはやこれは、やったのですね! 魔王様!!
「それで、勇者との夜はどうでしたか?」
とはいえ、聞かずにはいられない。
「気付いたら寝てて朝になってた! ぐっすり眠れて元気全開なのだ!」
おかしい。
それではまるでなにもなかったみたいではないか……?
そんなばかなこと?
「魔王様。腕枕はいかように?」
「あーそれな! 不思議なことにな朝起きたらそっぽ向いて寝てた! わたしって意外と寝相悪いのかな? ……なんだか恥ずかしくなってきたかも!」
待て。待つんだ。
そんなはずはない。年頃の男女だぞ……?
「コウノトリは来そうですか?」
「トリ? そうだな。ベル君に頼んで今晩も鳥の唐揚げにしてもらうか!」
全く話が噛み合わない。
嫌な予感がしてきた。
「単刀直入におうかがいします。子作りはしましたか? しましたよね? ええわかっておりますとも!!」
「ななななな! なにを言ってるのだねルー君!! 朝っぱらから!! そ、そんなハレンチなこと!!」
「まさか、していないとでも? ちちくり合ったのでしょう?」
「ちちちちち! ちちくりあうだと? なにを言ってるのだねルー君! 見損なったぞ! このハレンチ悪魔め!」
あぁ。これではまるで、自分たちはハレンチではないと言っているようなもの。
いや、現実を受け止めるだけの材料は出きっているではないか。
魔王様……。あんた、まさかここまで恋に臆病とは……。
もはやかける言葉も思い浮かばない。
「申し訳……ございません。ハレンチなことを聞いてしまい」
「どうしたのさ。今日はツッコミが冴えないじゃないか。それに顔色も悪いぞ?」
「ええ。魔界の今後を考えたら、……」
「だ、大丈夫!! 今日こそ、ほ、ほ、ほ……ほっぺにちゅうしてくるから! がんばるから!」
……でしょうね。なんとなく察してましたよ。
一晩を共にして頬にキスすらできないとは……。いやはや、もとより魔王様には無理な話だったということか。
これはもう、どんな手を使っても無理だ。無理無理──。
「終わった。もう、魔界は滅びる」
「なんだと? 人間たちの総攻撃でも感知したのか? どこだ! どこからだ! わたしのレーダー的なあれにはそんな影どこにもないぞ?」
「プランBの失敗と作戦そのものの破綻を確認したのですよ」
「ああ、そういうことね。なんだ焦って損した。まったくルー君は大袈裟なんだから!」
万事休す──。




