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女子高生とコボルトさん  作者: ぽんこつ少尉@『転ショタ3巻/コミカライズ3巻発売中』
最終章

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46/55

第46話 大変なことになりそうだよコボルトさん

前回までのあらすじ!



白柴の雌vsJK 種族をかけたヒロイン対決

 立ち去る騎士を見送ってから、シロは二人の女性が消えた路地裏へと急いだ。



「……!」



 角を曲がった瞬間、口吻をつかまれて崩れかけた建物内へと引きずり込まれる。体毛がざわりと逆立った。

 口吻をつかまれては、犬は何もできない。猫のように鋭い爪のような武器があるわけでもなく、さりとて力は人間以下なのだから。

 けれど。



「しーっ、落ち着いて。わたし、わたしだよ」



 口吻が手放される。

 さっきの少女だ。たしかカリンといったか。その背後には、ルアナという大女の姿もあった。



「ごめんね。驚いたり怒って吠えられたりすると、さっきの騎士たちが戻ってきちゃうかもしんないから」

「……吠えないわよ」

「柴犬なのにっ!? 人見知りしないの!?」



 何言ってんの、この子……。



 ンフーと鼻息を荒げて、カリンがなぜか両手で顔を挟み、ワシャワシャと撫でてきた。



「賢ぉ~い! 柴犬ってね、無駄に気性が激しいんだよ。女の子は特にね。それプラス人見知りだから、知らない人に噛みついたりすることが多くて――」

「いや、わたしもうコボルトだから……分別くらいはつくわよ……。あんまりワシャワシャしないで……」



 まあ、女の気性が荒いあたりまでは合っている。コボルトでも知らない人に噛みつくかもしれないのは、子犬の時分だけだ。

 家で待ってる六匹のうち、下三匹。それくらい。

 何せ、騎士に追われていたパルフェに噛みついたくらいだ。

 だからその詫びに仕方なく、あやしげなコボルトを家に連れ帰って治療し、匿うことになってしまったのだ。



「ねえ、あなたさっき――」

「シロ」



 カリンが口元でパンと手を叩いて、にんまりと口角を上げた。



「やぁん、見た目通りカワイイ名前! シロさんは美人だねえ!」

「……よく言われる。人間からは」



 ルアナの方は、呆れたような表情でカリンを見下ろしている。



「おい、カリン。また危機感が息してないぞ。時間がないんだ。パルフェのことを尋ねるんだろ」

「あ! そうだった。ねえ、シロさん。あなたさっきパルフェのことを知ってるって言ったよね?」

「ええ。正確には知ってた、よ。いまはどこにいるのかは知らない」



 パルフェの人となりを判断するため、一度彼の後をつけたことがある。

 彼はわざわざ王都外に出て、王都に流れ込む川辺で立ち止まり、周囲を警戒しながら中に飛び込んでいた。当然、流れの先は王都内に逆戻りだ。



 何のため? まあ、ろくでもない理由であることには違いないだろう。



「ところで、カリン、ルアナ。お二人は誰なのかしら?」

「わたしはパルフェの恋人だよ! ルアナさんは友人!」



 何言い出した……。どんだけマニアックなのか……。



 後者は理解できるが、前者はまるでわからない。通常であればだ。しかしパルフェはたしかに混ざっているニオイがした。あれは純粋なコボルトではない。肉体は完全なコボルトでも、中身はまるで別物だ。それが何なのかはわからなかったけれど、カリンと同じく人間だと言われれば、納得できる部分がある。



「そういうシロさんこそ、パルフェの何なのさ! さっき騎士たちに尋ねられたとき、パルフェのことを庇ったよね!?」



 カリンの頬がぷぅっと膨らんだ。



「へ?」

「おい、カリン。また危機感が瀕死になってるぞ。面倒な修羅場なら後にしろ。それなら私も交ざってやる」

「う……。と、とにかく、パルフェのことを知ってるだけ教えて!」



 どうやら、パルフェに害を及ぼすような存在ではないことだけはたしかだ。彼女たちはパルフェのことを心から心配しているように見える。

 だから、シロは自身の知っていることを話した。

 パルフェが王都外の川に潜っていることをだ。



 カリンは首を傾げるばかりだったが、ルアナの方は心当たりがあったらしく、少しうつむいて眉根を寄せていた。



「水路だ。そこから王城に侵入したのだろう。大賢者エトワールを暗殺するつもりか」



 王城に侵入!? 大賢者を暗殺!?


 どのような理由があるにせよ、ちょっと考えられない言葉が次々飛び出してくる。これはまたとんでもない男を助けてしまったようだ。確実に自分の手には余る。ましてや、六匹の子犬を抱えて生きているのだから。


 シロがため息交じりにつぶやいた。



「戻ってこなくなって、三日が経過したわ。その日までは、一日の終わりには確実に戻ってきていたんだけど」



 ルアナが大きな胸の前で腕組みをして、舌打ちをした



「捕まったな、あいつめ。ドジ踏みやがって」

「えええええっ!? ど、どうしよう、ルアナさん……。パルフェが処刑されちゃう……。そうだ! いまから王城に向かおうよ! 門番さんに頼んで、色々取り次いでもらって、どうにかパルフェを帰してもらおう!」

「おまえバカか。正面からいって帰してくれる相手なら、パルフェだって水路から潜り込んだりしない」



 いや、ほんとに危機感死んでそうだわ、この子。

 見たところ人間の幼体のようだけれど、うちの子犬より脳天気なんじゃないかしら。



「わたしはごめんだけれど、王城横の側溝からなら侵入できるんじゃないかしら。といっても格子はあるでしょうし、そんなところの格子を破壊なんてしたら、巡回騎士にすぐに発見されるでしょうけど」

「あたしも同じことを考えていた。パルフェはおそらく逃走経路まで考えた上で、王都外の川から上水路に入り込み、城に忍び込んでいたのだろう。だが、ドジを踏んだ。おそらくパルフェが使用したルートは、もう巡回騎士によって塞がれているだろうし、警戒もされたはずだ。ならばやはり深夜に側溝から入り込むしかない。ただしその場合は、深夜に侵入し、脱出できるチャンスは明朝までだ。……リスクが高すぎる」



 ルアナの方は、頭の回る女性だ。カリンの方は結構アレっぽいけど。

 ちらりと横目で彼女を見ると、カリンは両手を拳にして前のめりになり、気合いの入った表情で力強く口を開いた。



「あ、いいこと思いついた! じゃあ、ルアナさんは格子を破壊してくれるだけでいいよ! わたしがささっと侵入して、シュババっとパルフェを連れて戻ってくるから! そしたらみんなして王都から逃げよう!」


だからぁぁ~……もおおおぉぉぉ~……

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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新お疲れ様です(^_^ゞ シロさん、コボルトさん争奪戦から離脱! ルアナさんは兎も角、カリンさんには勝機が無かったので救われましたね‼ ……しかしカリンさんの突然のカミングアウトで、漸く…
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