第40話 女子高生は挟みたい(第四章 完)
前回までのあらすじ!
猫も好きです!
暖炉の中で薪が小さく爆ぜた。
その前では橙色の光に照らされて、ミレイが丸くなって眠っている。さっきから一定のリズムで寝息が聞こえているから、寝入っているのだろう。
ルアナさんはベッドかソファじゃないと眠れないらしいから、一人で寝室にこもった。ドアを開けて空間を繋げているから、居間の暖気は寝室まで暖めているはずだ。
「……」
わたしはミレイの側で毛布を身体に巻き付けたまま、壁を背に座っている。その横には旅のためのナップザックと、パルフェから預かったシャルマンの剣がある。
カラクサ村からジャンティーユ王国までは、もうそれほど距離はない。山を越えればおよそ半日で到着する。
カラクサ村にパルフェがいなかったということは、十中八九、彼は王国に潜入しているだろう。勇者と魔王の悲劇を繰り返して引き起こす、大賢者エトワールに会うために。彼女が計画した、作り上げた勇者ででっち上げた魔王を殺すという、長く長く続けられてきた王国の悪習を断ち切るために。
だって、かつて、パルフェはわたしに言ったもの。
当代魔王……の役を与えられたわたしを勇者や王国の手から守ることは、先代魔王ヴァニールに対する償いだって。償う機会を与えてくれて、感謝するって。
パルフェは、シャルマンからヴァニールを守れなかったから?
でもパルフェはシャルマンの飼い犬だった可能性が高い。どちらかと言えば、騙されていたとはいえヴァニールを狩る側の立場だったはずだ。
犬からコボルトに進化させてくれた魔王ヴァニールに、借りを感じていた?
「ちがう……ちがうな~……」
犬は自らを愛してくれる飼い主を、決して裏切らない生き物だ。そこには同義や道徳さえ入り込む隙がない。たとえパルフェをコボルトに進化させたのがヴァニールだったとしても、飼い主であるシャルマンの意に反する理由にはならない。
主人に忠実な柴犬ならばなおさらのこと。
じゃあ、たまたま同じ柴という犬種だっただけで、そもそもシャルマンの飼い犬だった犬パルフェと、わたしの知るコボルトパルフェは別人だった?
「う~ん……」
だったらどうして、あんなにもヴァニールとシャルマンのことについて詳しいの? シャルマンの仲間で親友だったシュヴァルツの孫であるルアナさんよりも、彼らのことについて詳しいというのは変だよ。
頭を振る。解いた髪が肩で揺れた。
「どれもしっくりこないや……」
仮説に仮説を重ねたって、どうせ何もわからない。本人か、もしくは大賢者エトワールに直接尋ねてみるしかない。とはいえ、大賢者エトワールは当代勇者ガトーさんを使って、わたしを殺そうとするんだろうけれど。
わたしは頭をかきむしった。
「う~! もー考えたって全然わっかんないっ!」
むにゃむにゃ口が動いて、ミレイが目を閉じたままつぶやく。
「……う、う、うるしゃい……」
「あ、ごめん」
目は開いていない。どうやらただの寝言だったみたい。
ま、どーせ考えたってわかんないし、会って本人たちに聞けばいいや。命を狙われていても、今回はミレイやルアナさんも一緒なんだから、きっとなんとかなる。
寝室から居間へと運んできた一人用のソファに移動して、毛布をかぶる。このソファはわたしがこのシャルマンの家にきて以来、パルフェがずっとベッド代わりの寝床にしていたものだ……から、何だか少し懐かしい薫りがした。
「へへ」
わたしはミレイのように丸くなり、折りたたんで丸めた毛布を太ももあたりに挟んで抱え込む。これまでならそれでよかったのに、なんかだめだ、しっくりこない。
むー、早くパルフェを挟んで眠りたい!
挟まず寝ろ。
※次回から最終章です。
久しぶりにハードボイルドなコボルトさん登場!




