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女子高生とコボルトさん  作者: ぽんこつ少尉@『転ショタ3巻/コミカライズ3巻発売中』
第三章

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27/55

第27話 迂闊だねコボルトさん

前回までのあらすじ!



ぽんこつ騎士団を魔王様が追い払ったぞ!

 首にかけた手ぬぐいで労働の尊い汗を拭いながらシャベルに足をかける。ちなみに、足をかける部分があるものをシャベル、ないものをスコップというのだそう。

 グッと力を込めて。



「よっこいしょぅ!」



 土を掘り返す。掘って、掘って、掘って、掘り返す。

 シャルマン宅の軒下から、パルフェが不思議そうな顔でこっちを見ているけれど、わたしは構わず穴を掘り続ける。


 ざくざく、ざくざく。穴を掘って、積もった土を横に避ける。それの繰り返し。



「ふぅ」



 思ったより進まないなー。

 まだ太ももくらいの深さで、幅もわたしが横になってようやく埋まるくらいの広さしかない。



 何この例え。自分の墓穴みた~い。あははは。



 ちらりとパルフェを見てみれば、いつの間にかカップを片手にコーヒーを啜りながらこっちを見ていた。しかも、木製だけどリゾートチェアみたいなのを引っ張り出してきて、仰向けにちんまりと寝そべりながらだよ。


 視線が合うと、なぜかニヒルな笑みでカップを持ち上げる。くそカワイイ。



 乾杯? 乾杯なの?

 いや、それよかお水の差し入れとかはないの?



 わたしはフンスと鼻息をついてシャベルを土に立てると、超くつろぎモードのパルフェに近づいていった。



「ねえ、パルフェも手伝ってよぉ」

「ゲハハ、おめえの食い扶持だろ? 俺が手伝っちまったら、おめえの気が済まねえだろうよ。漢ってのは、時にはそういうところにも気を遣――」

「畑じゃないよっ!?」



 どんだけ食べるの、わたし……。



「んあ?」

「……」



 クイっと首を傾げる仕草がまたカワイイ。

 頭なでなでさせてくんないかしら。



「……墓穴か?」

「それもうさっき自問自答したよ! ただの落とし穴だよぅ!」

「おぉん?」



 首の角度がさらに増して、もう直角を超えそうになってる。

 折れちゃわない? 可動域すごくない?



「ほら、だってもうすぐジャンティーユ王国からガトーさんと騎士団が魔王退治にやってくるでしょう?」

「まあ、いずれは来るだろうよ。そう遠くねえ未来にな」



 すっごい大きなあくび。

 犬歯は鋭いし、虫歯もない。とっても若々しい。



「だから、落とし穴に落としちゃってお引き取り願おうよ。お願い帰って……ってさ」

「……ガキの悪戯かよ。おめえ、何千人分掘るつもりだ?」

「あー……先頭の人だけでもー……。一番偉い人かもしんないし」



 パルフェが半眼になってカップを傾けた。



「落としただけで帰っちゃくんねえぞ。底にナイフでも逆さに立てておいとくか?」

「ケガするよぉ!?」

「させるんだよ!」



 ええ……なんか気が引ける……。



 あからさまにため息をつくパルフェ。



「ま、気が向かねえなら別に無理するこたぁねえ。何なら他に方法もある」

「へぇ、どんな? あ、わかった! 底をドロドロにして気持ち悪くして帰ってもらうんだ!」

「惜しいな。発想は間違いじゃねえが、泥くれえでいちいち軍を撤退させてちゃ戦争になんざなんねえだろうよ」

「と言うと?」



 パルフェが片頬にだけ意地悪な笑みを浮かべて、口をねじ曲げた。



「糞を敷き詰めるのさ。これならさすがに騎士どももたまったもんじゃねえ。戦意を挫くにゃ効果てきめんだ。こいつは史実的にも効果的な戦法だぜ。ゲッハハハハ!」



 あからさまにドン引きの表情を浮かべてしまうわたし……。



「嫌だよ……。だって乙女だもん……」

「俺もだ……。だって犬だもん……」



 パルフェの方が死活問題だ。犬だから鼻がひん曲がっちゃうよね。


 同時に重いため息一つ。会話が途切れた。

 わたしは諦念で青空を見上げた。日本じゃ見たこともないような、原色のカラフルな鳥たちが群れを成して飛んでいく。



「ねえ、パルフェ。せっかく掘ったこの穴、どうしよう?」

「ちょうどいい時期と深さだ。種芋でも植えるか。切って乾かしといたもんがキッチンにあるだろ。取ってきてくれ」

「うんっ」



 わたしは走って取りに行く。



「持ってきたよ」



 どれもこれも芽が出ている。

 パルフェは一つつかむと、わたしが掘った穴に、断面を上にしてポイと投げ落とした。



「ええ。芽が下になっちゃうよ」

「いいんだよ。こうすりゃ強い芽だけが残んだ」



 同じようにいくつか投げ落としてから、突き刺しておいたシャベルで土を被せる。



「あとは放っときゃいい。大きくなったら間引きくれえだな。花が咲いて茎が枯れたら食べ頃だ」

「パルフェって案外詳しいよね。お料理もできちゃうし」



 田舎暮らしで祖父母の畑を手伝ってたのに、わたしは農作業のことなんて何も覚えていない。主に収穫とか箱詰めばっかり手伝ってたからかも。

 そういやシバスケは畑で穴を掘るのが好きだったなあ。もしかしたらシバスケは、わたしより詳しいかもだ。



「カラクサ村が廃れてから、自給自足での生活が長かったからな」

「へえ……」



 つぶやいたパルフェの横顔を、わたしはそっと盗み見る。


 迂闊なパルフェ。だっておかしいよね。

 カラクサ村が廃れる前から、パルフェはここにいたってことになる。このカラクサ村の惨状から、人がいなくなったのは十年二十年じゃないと思う。



「どうした?」

「ううん。なんでもないよー。楽しみだねえ、お芋さん」

「だからたぶん食えねえって……。その前にここを引き払うからな」

「えー、来ないかもしんないじゃん。騎士団も暇じゃないだろうし」

「おめえ、魔王だろ……。魔王退治以上に大事な騎士のお仕事ってなんだよ……」



 わたしは思い出していた。

 ボニータでルアナさんに見せてもらった、シャルマンの肖像画。勇者とその仲間たちの足下にいた、犬パルフェのことを。


魔王様、イモの作付け。

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