第34話 女のバトル・ラウンド2
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「クソババアアアァァ!!」
ラウンド2
「バカネコオオォォ!!」
レディー
「くたばれ極道!!」「逝ったれ外道!!」
キャットファイト!
“カーン”
またもや戦いは始まってしまった……とその前に。
キャットファイトの意味を知らないと言う方のために良君からちこっと豆知識。キャットファイトというのは文字通りネコの喧嘩なんだけど、格闘技なんかやったこと無い華奢な女の子達が、引っかきあったり、髪の毛を引っ張ったり、噛み付きあったりと、到底格闘技とは言えないレベルの低い戦いを、プロレスやその他の格闘技と一線を画すためにこう言うんだ。
ただ……彼女達の場合、逆方向に格闘技とは一線を画しているね。それはもう俺の想像とか科学の常識とか物理の法則とか色んなものを無視した戦いだ。
どういうことかというと、二人はまるでバトル漫画や格ゲーのように空中にとどまって、人間離れした速さで拳を繰り出し殴りあいを続けている。まあ、彼女達は見た目こそかわいらしい美少女でも妖怪だからこの程度の超常現象は朝飯前なんだろう。俺ももう色んなことになれてきたから今さらこの程度では驚かない。ただね、彼女達が……
A「オラオラオラオラオラ!!」「無駄無駄無駄無駄無駄!!」(奇妙な冒険?)
B「おあたたたたたたたた!!」「ふんふんふんふんふん!!」(北斗?)
C「だから貴様は阿呆なのだ!!」「師匠おおぉぉ!!」(体育会系ガンダム?)
と3組6人に見えるのはなぜ!?ていうか、お前ら初対面だよな!?何でそんなに息ぴったりのコントができんだよ!?いや、それ以前にこの現象が理解できねえ!!なんだよ、これ!?影分身!?何でこんなレベル高いんだよ!!格闘技どころかマスター級の死闘じゃねえか!!こんな時はバトルのことにめっぽう詳しいあの方に聞いて見ましょう!!
「なあ、天童。この現象は何?少なくともキャットファイトではないよね?」
「えっと……影分身?」
ダメだ!!この子にも分かってない!!ていうか聞いてきた奴に聞き返すなよ!!俺に聞くなよ!!分かんねえよ!!こんなバトルにはついていけない!!動体視力もそうだが思考と言う意味でも!!
「先輩!!玉希ちゃん!!喧嘩するんならもっと分かりやすくやって!!もう何が起こってのかさっぱりついていけないよ!!」
俺の言葉を聞き入れてか、二人はいったん動きを止めた。とたんにB、Cのペアも消えた。あれは残像だったんだ……
「ちょっと、あんた!玉希って言ったっけ?あんたがとろいせいで観客からクレームが来たじゃない。どうしてくれんの?」
え?先輩?あんた何言ってんの?全然違うよ?全く持ってとろくないよ?それと俺たち観客じゃないよ?
「心外だな。僕は君のレベルに合わせて手加減をしてやってたまでのこと。そんな事を言うなら少し本気を出そうか?」
オゥ、レアリー?玉希ちゃんアレで本気じゃなかったって言うのかい?お遊びだったてのかい?
「後悔をするなよ……」
そう言って玉希ちゃんが放った扇子は、放物線なんか一切描かず、彼女の手から離れた瞬間に、不自然極まりない速さと角度で地面に落下し、凄まじい轟音をとどろかせ直径3mほどのクレーターを作り出した。ふふ……もう、僕には突っ込めないし、説明できないし、理解も出来ない。こんなの無理。奴に任せるね?
「天童君?あの扇子はなんだろ?」
「鉄扇……?いや、鉄にしちゃ重過ぎる。あれほどのクレーターを作り出すには相当な重さがあるはずだ。それほどの密度の金属となると……おそらく、ガンダニウム合金か超合金ニューZだな」
らしいよ。ねえ、天童君?冷静に解説してくれるのはいいけど、それじゃ頭がいいのか悪いのかよく分かんないよ?ていうか、どっちの合金もまだ発見されてないと思うよ。
さすがの先輩もこれには驚きの色を隠せなかった……かというとそうではなく、まだ余裕の笑みを浮かべていた。
「面白いじゃない。だったらあたしもこいつを外させてもらうわ」
そう言って先輩は、ダウンベストを脱ぐとそれを放り投げた。そして、それは放物線こそ描いたものの、あらゆる物理法則を完全否定して、天童が花壇を作る際に余ったであろうレンガの山を木端微塵にしてしまった。……何それ?ダウンベストって確か軽くて温かいはずじゃ……
「天童君?」
「ナメック星の民族衣装だ」
うん、考えることを放棄しやがったね。この野郎は。何がナメック星の民族衣装だ。なもんあるわけねえだろ!あったとしてもそれ着てるの一人だけだよ!!全身緑色のあのおっさんだけだよ!!
そんな俺たちの事はお構いナシに彼女達は再び超人級の凄まじい戦いを再開した。
「死ねクソ狐!!」
「消えうせろチビ猫!!」
そして次の瞬間、目の前の光景に俺は自分の目を疑った。あまりに凄まじすぎる戦いに何が起こってるのかさっぱり分からなくなった。しかし、何かが起こってるのは間違いなんだが、それが何なのかもう分からない。あまりの速さのために彼女達の姿が全く見えなくなったからだ。
ただ、とんでもなくハイレベルな戦いが繰り広げられているのは間違いない。なぜなら、姿は見えなくても、もう“ドゴーン”とか“バコーン”とかそんなかわいらしい擬音では表現できないほど凄まじい衝撃音が響き渡り、その度に凄まじい衝撃波が俺の体と心をブルブルと震わせたからだ。
「天童君?お前は妖怪警察なんだろ?バトルとか沢山経験したんだろう?このバトルの解説を頼むよ」
「いや、無理。だってこんなの妖怪同士の喧嘩じゃねえもん。モビルスーツを素手で破壊する髭のおじさんとその弟子の決闘だよ。もしくは遠い星からやってきた戦闘民族のガチンコバトルだよ。ついていけねえよ……」
天童君の言うとおりだ。ついていけない……だって、さっきから姿は見えないのに、地面はえぐれるわ、サクラの枝は折れるわ、アパートの壁は凹むわ、屋根に穴が開くわ、何なんだよこれは?凶悪なポルターガイストか?って待て!!落ち着いてる場合じゃなかった!!
「お前らいい加減にしろよ!!アパート破壊する気か!?」
そう、こいつらがどんなに殴り合おうが妖怪だからたぶんくたばることはないだろう。だがアパートを破壊されては困る!!この歳で住居を失うのは嫌過ぎる!!
「取り合えず殴りあうのはやめてもっと別な方法で決着つけろ!!」
俺の提案を聞き入れたのか二人は超高速でのどつきあいを一旦中止してその姿を現した……のだが、その姿は一体何があったの?と言いたくなるほどの変わりぶりだった。
「か、管理人さんの言う通りね……このままじゃらちがあかないわ……もっと別な方法でやりましょう……」
膝がわらってる先輩のTシャツはあちこちが千切れてもう胸の部分しか残っておらず、もはやシャツではなくスポーティーなブラにしか見えない。あのデニム生地のマイクロミニもダメージ加工が施されちらちらとその下の柔肌が見え隠れし、ただでさえ過激なファッションがより一層目のやり場に困る姿になっている。
「の、望むところだ……なら、今度は妖怪らしく妖術で対決とはいうのはどうだい……?」
鼻血を拭いた方がいいと思われる玉希ちゃんにいたってはもっとひどい。着物の袖が全部取っ払われてノースリーブになり、裾も先輩と大して変わらないほど短くなった上スリットまで入りかなりセクシーさがあがっている。
ていうか……おたくら素手で殴り合っていたんだよね?どうやったらそんな風になんのよ?
「よし!そういうことならジャッジメントはこのおいらに任せてくれ!」
何の前触れも無しにまたも物理法則を無視してクロちゃんは空中から姿を現した。今の今までどこにいたんだという疑問は、彼が頭に被っている「自分+第一」というふざけた文字が刻まれたヘルメットを見れば一目瞭然だ。この野郎……今まで安全なとこに避難してやがったな。
「それじゃお二人さん。ルールを説明するからよく聞いてくれ!
妖術とは、人間を魅了し惑わし欺く妖しげなる術だ!これから、二人には自分が最も美しいと思う妖術を使ってもらう。そして、おいらがどっちの妖術が優れているかを判断させてもらう!ただし、物をぶっ壊したり、人をぶっ殺すような危ない妖術を使った奴は即失格だ!いいな?」
おお!クロちゃん、それはなかなかナイスな提案じゃないか!これなら誰も傷つかず世界は平和でいられるよ!!二人も納得したのか満面…………というか不敵な笑みで頷いている。
「あたしはそれでもいいわよ。あんたは?」
「もちろん望むところだ。僕の方から言い出したしね」
二人の了承を得たところでクロちゃんが間に入り、今度は妖術対決をすることになった。さて、二人は一体どんな妖術を見せてくれるのか?実に楽しみだが、それは次回のお楽しみ。