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天上のダイアグラム  作者: R section
第3章 価値の器

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第44話 果てしない守備

――2025年12月5日13:00 MoRS仮想本部 デ・サンクタム


サーバーの中にある仮想現実プラットフォーム、MoRSが誇るこの世で最も大きな仮想世界その中心にある仮想本部に一同はいた。


「雪乃、作戦概要を」

「了解。」


雪乃はMoRS構成員である笠村と在原に概要を説明する。


「今回の作戦は、本部で展開されている遅延作戦を利用し、問題の根本を絶つ作戦です。」


「やはりこちらが本命なのですね。」


笠村はある程度察しがついている様子だった。


「はい。今回我々は初めて持久戦をします。以前、時間がなく強引な手段をとらざるを得ませんでしたので新たに時間稼ぎというものをやってみようかと」


合理的だった。MoRSの作戦は後手に回りがちなため、事態の進行速度によっては強引になる。


そのため、露見のリスクも発生していたが今回はその対策をしたというわけだ。


「それはあくまでも副次的なものです。今回の主な目的は国家機関の操作です。」


「なるほど。そういう事ですか。」


「ねぇ...またこれ?笠村も雪乃さんももうちょっと詳しく説明してくださいよ」


在原はまたもや取り残されている。


「そうですね。時系列でお話しします。」


「まず、12時00分より、連動作戦である霧影作戦が開始されました。霧影作戦の主な目的は通貨の概念を守ること。と伝えていますが本当は日本の通貨である円の価格維持と人々の円に対する価値観を維持することです。」


「それがいわゆる時間稼ぎということですね。」


「その通りです。我々がこれから行うのは返影作戦です。目的は価値に対するテロが起こる前に戻すことです。」


「戻す?どういうことですか」


「日本の通貨価値は低下の一途を辿っています。我々が総力を挙げて通貨価値の維持を試みたとしても、おそらく今日中には破綻します。」


「それは理解できます。しかし、それを戻すのは不可能です」


「はい。円のままであれば」


「雪乃、すべては説明しなくていい。これからの動きを彼らに伝えるんだ」


「承知しました。では、まず在原さん。あなたにはこの少女を誘拐していただきます。」


雪乃が1枚の写真を提示した。


おそらく5歳程度の女児だ。外見的特徴はあまりないが、背景から裕福な家庭だということはわかる。


「ええ?誘拐ですか?まあ得意なんですけどね」


在原はその実、コミュニケーション能力が秀でている。それだけでなく、場の空気すら変えてしまうような支配能力を持っている。


これが今回、在原が選出された理由だった。


「次に、笠村さん。あなたには在原さんが誘拐した少女を守っていただきます。おそらく抵抗はありませんが、作戦行動中は日本語の使用を禁止します。」


「なるほど。だから俺なんですね。」


「はい。使用するのは英語でお願いします。それと、このテーマパークの地下に防衛に適した部屋と装備を置いてあるのでそれを使ってください。」


「了解しました。」


「では各自、作戦に入ってくれ。」


笠村はすぐにその場を後にし、在原は少しの間をおいて移動を開始した。


大佐がついに動き出した。


この先に待ち受けるのは崩壊か、それとも均衡か


──EIRENE:接続済み。調律継続中。




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