第2話 新たな薪
雪乃が大佐に外務省の文書流出から始まる件を報告する少し前
大手SNS上では投資に関する話題がトレンドに上っていた。
発端は大物投資家の破産であり、返信欄の殆どがその投資家を誹謗中傷するものである。
その中のある投稿
「投資家の破産は財務省が巻き上げたからで、破産した投資家は被害者である。」
陰謀論としか取れない内容だが、投稿の多くが破産した投資家を非難するものであり、擁護しているともとれる投稿だったため、投資家の多くが反応する。
人は自らが危険にさらされるほど、大きく早く動く。
この投稿をきっかけに財務省もトレンドに上り、関連する投稿が増加した。
「他のトレーダーも注意して」
「円取引をしている人はすぐに外貨に切り替えて」
「国内株はダメだ!」
様々な意見が飛び交い、その様子は混沌そのものであった。
暫くして株価の平均価格が降下の兆候を見せ、被害を抑えるべく、財務省が会見を開くと発表する。
確かに、以前から税が高くなり、生活困窮者が増えていた。
そしてその多くが、持たざる者よりも持つものから多く奪うべきだと述べる。
会見の日時だけが告知され、世の中は期待と不安で騒然としていた。
告知を受けて、多くの大手SNSアカウントが財務省が投資家から資金を搾取しているという旨の投稿をはじめ、ネット上はすでにパニック状態だった。
しかし多くのベテラン投資家は大きな動きを見せない。
豊富な経験と情報の真偽が明らかでないことから彼らは、今回の平均価格の降下は一時的なものであると考えていた。
ほどなくして、すぐに株価がもとに戻る。
すると今度は振り回されたネットユーザーの多くが陰謀論的な意見で世間を騒がせたと、例の投稿を行ったアカウントに攻撃を行った。
それに対して、投稿者は財務省の機密文書と思われる数枚の画像を投稿した。
その中に、《経済悪化におけるシミュレーション》というタイトルの資料があり大きな騒ぎとなった。
そのころ、MoRSは一連の流れを観測していた。
MoRSとは
―――Multiple operation for Retuning System
それは様々な状況における再調律機構の略であり
”組織名”
雪乃が大佐に報告した前日
雪乃は構成員からの観測情報を受けて、演算を行っていた。
「このままでは、いずれ財務省と破産した投資家が虚偽の情報で関連付けられてしまいますね。」
演算を続ける中で、一つの可能性が導かれた。
ほどなくして分析を行っている構成員から、報告が入る。
「雪乃さん。先ほどから一つの投稿が話題になっています。」
「どういう事でしょうか」
「財務省が行ったシミュレーションの結果、物価上昇が起こる可能性が高く、その対策の為に、過剰に利益を得ている投資家から資金を調達したという内容の投稿が多くの人に影響しています。」
「やはり...」
「しかし、これが事実なら我々の管轄ではありません。」
事実、国家の不祥事で国の経済が悪化するという事象事態はMoRSの行動指針に反する。
少しの沈黙の後、雪乃は答える。
「はい。しかし、日本という国が亡びるほどの大事になるのであれば、それは我々の領域です。」
少し正しい行動模範とはそれているが、事実国が亡ぶのなら一考しなければならない。
MoRSは人々の取り返しのつかない間違った選択を防ぐための組織であり
日本という国を守るための上位組織ではない。
正しい選択だけを選ばせてしまえば、進歩の可能性を奪うことになる。
奇しくも人は、失敗から学ぶからだ。
だが、意図せず生じた事故であっても、意図的に仕組まれた爆弾だったとしても
それが、再起不能を巻き起こすのであれば、できる限りのことはする。
雪乃はしかるべき者にそのことを報告する。
”大佐”と呼ばれるものへ。
MoRSとはどのような存在なのか
雪乃とは何者なのか
そして、大佐とは何なのか、その答えはだれも知らない
2026/03/30
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