一番きらめいていた時期との出会い
大事な人はすぐそばに。
暫くは平和な毎日が続いていた。
しかしそれも麻美のスマホの画面をたまたま見てしまった時にそれは崩れていった。
そこに写っていたのは男の名前と沢山のメッセージ履歴。
慌てて目を逸らした。
「どうしたの?」
麻美がこっちを見て聞いてくる。
「なんでもないよ」
麻美の問いかけに返事するのが精一杯だった。
麻美の交友関係が広いのは知ってる。
誰とも一緒にいないのに色んな人に話しかけられてるのを見る。
「何か隠してるでしょ?」
麻美の視線が俺を捕らえて逃がさない。
しかしどうにか視線を外す。
「そういう態度ばっかりだと怒るよ?」
麻美は楽しそうにしつつも少しだけイライラし始めているように見えた。
「今、スマホの画面たまたま見えたんだけどそこに男と会話してるのがあったから少し嫉妬してた」
結局、白状してしまった。
「瑠依はそういうところあるよね」
クスクスと笑いつつ彼女はスマホの画面を見せてきた。
そこに映っていたのは守とのトーク画面だった。
「瀬奈と仲良くなってから出かけることが増えたりプレゼントを送ることが出てきたんだけど思いつかないから連絡してきたって訳、安心した?」
画面を見てホッとした。
その気持ちが表情に出ていたらしく、また麻美に笑われる。
「瑠依は顔に出過ぎだよ、大丈夫?」
「今後は気をつける…」
会話が切れたタイミングで暑さを感じ、外を見ると日が出てきてセミの合唱が始まっている。
「そうか、もう夏か」
思わずでた一言。
「そうだね、2年目の夏が始まるね」
麻美はその独り言に反応してくれた。
それから僕たちの間に会話がなくなり、暫く外を眺める。
グラウンドでは運動部が精一杯、汗を流し部活に励んでいる。
今日は夏休み前最後の登校日で、外が暑く帰る気にならないためダラダラと教室で時間を潰す。
「そろそろ帰らないといけないね」
「でも帰るには暑すぎるよ」
既に教室には僕たち以外いない。
瀬奈と守も今日は用事があるとの事で、完全に二人きり。
世界に僕たちしかいない錯覚をするくらいには穏やかだった。
「帰ろうか」
暫くしていると麻美がぽつりと呟いた。
「そうだね」
そう言って僕も立ち上がる。
「夏休みになったら何して遊ぼうか」
「海や山に行ったり、バーベキューしたり定番な感じかな」
「どれも楽しそうではあるけど…」
麻美はそう言うと僕の横にいたのに、正面に立ち呟いた。
「お家デートも忘れちゃダメだよ?」
明らかにからかうような口調。
いつもならいいようにされていたけど少しだけ反撃したくなった。
正面にいる麻美を強く抱きしめる。
「瑠依…!?どうしたの…?」
少しびっくりしたのかいつもの余裕な顔をした麻美はおらず顔を真っ赤にした可愛い女の子がそこにいるだけだった。
「勿論、デートも忘れてないよ」
一言だけ呟き、抱きしめるのはやめない。
麻美も最初は焦っていたが途中で落ち着いてきたのか抱き締め返してくれた。
「今日はやたら甘えてくるね、何かあった?」
「ふとした時に麻美がいないと不安になる…」
「ふーん、瑠依は私がいなくなっちゃうと思ってるんだ」
少し冷めた目線で見つめてくる。
「そういう事じゃなくて…俺が勝手に思ってるだけなんだけどそういう気分になることがあるって事で…」
完全に言い切ることが出来ず語尾の部分の声が小さくなる。
「瑠依は心配性だなぁ…」
その言葉の後にさっきよりも強めに抱きしめられる。
「私はどこにもいかないよ、瑠依とずっと一緒にいるから…心配なら毎日でも抱きしめてキスしてあげるよ」
安心させるようにそのまま暫く抱きしめられる。
「麻美を信用してないみたいな言い方してごめん」
暫く抱きしめられて少し気分が落ち着いてきたので謝罪をする。
「瑠依は前からふとした時に心配になるよね」
「何でもっと人を信じることが出来ないんだろう」
麻美は微笑んで、頭を撫でてくれる
「瑠依は優しいからね、それも仕方ないよ、でも私だけは君を裏切らないから」
そういって頬に優しくキスをしてくれた。
「これからもっと思い出を作っていこうよ」
「そうだね、ありがとう」
そして夏休み前最後の登校日が終了した。
明日から2年生の夏休みが始まる。
俺たちの人生の中で一番輝いていた時期が幕を開けた。
読んでいただきありがとうございました。
少しずつ投稿頻度を上げていけたらと思います。