第3話 −冒険の始まり−
続くよどこまでも
「それじゃあ、自分の名前以外は何もわからないってこと?」
「そう、ですね...」
しばらくして、怪我人の様子を見に行っていた白が帰ってきた。
「そうか...。なぁ、」
「はい。」
「その女の人のことについてはなにか思い出せることはないか?」
「んー...」
女の人のことに関して必死に思い出そうとするが、何もわからない。
「ないですね...ただ、」
「ただ?」
「その...なんとなく、その女の人の声を聞いて
"懐かしい"なって思って..」
声を聞いたとき、何故か無性に懐かしさを覚えていた。
「なるほど...つまり君と女の人は深い関わりがあったのかもしれない。」
「確かに、そうかもしれません。」
なんの関わりもなければ、急に思い出すことはないだろう。
「...。」
会話が尽き、場が静まり返る。
「あんたら、これからどうするんだ?」
静寂を破ったのは、今まで静かに話を聞いていたおじさんだった。
「俺は悪魔の目撃情報があった町に行くつもりです。」
「そうか。それで、嬢ちゃんはどうするんだ?」
「僕は...自分の記憶を取り戻したいです。」
方法はわからない。けど、もしかしたらなにかわかるかもしれない。
「それなら、俺と一緒に行かないか?」
「え?」
「俺は町や村に行って悪魔を殺す以外のことはすることあまりないからな。」
「それに、困ってる人は助けるって俺の中で決めてるんだ。」
そう言って白は優しく微笑んだ。とても眩しく、惹かれる笑顔だ。
「そうと決まれば、明日にはこの村を出発するから今日はゆっくり休めよ。」
白は僕の頭を撫でてどこかに行ってしまった。
何だかとても安心する。と同時に何故か恥ずかしさを感じた。
***
小鳥の囀りが聴こえてくる。今日はとてもいい天気だ。
「準備できたか?」
白はもうすでに準備ができていたらしい。
「うん。大丈夫。」
問いかけに答える。
「じゃあ、行くぞ。」
出発しようとしたその時
「ちょっとまってくれ。」
「ん?あ、おじさん」
おじさんが声をかけてきた。
「どうしたの?」
「嬢ちゃん、コレ持っていきな。」
おじさんはそう言うと、ナイフを渡してきた。
「護身用に持っていけ。」
「いいんですか?」
「あぁ。俺からのプレゼントだ。」
「ありがとうございます。」
おじさんにお礼を言い、その場をあとにした。
「嬢ちゃん...死ぬなよ。」
始まったー