第7話 間違いなんておきるはずもない
誤字報告ありがとうございました。
ディスプレイが大型化した恩恵で、少しは減ってるはずなんですが、しつこい汚れのように残ってますね。「誤字排他EXパワー」みたいなの欲しい(笑)
アイリスたちと合流して家へ連れてきてもらうと、三人の女の子たちは粘液を洗い流してベッドへ寝かされていた。カクタス君の腕は添え木と包帯でしっかり固定された状態だったので、応急処置としては十分だろう。
「仕事を増やしてごめんね、イチカ」
「あの状態の少女たちを人目に晒すのは、絶対に避けねばなりません。お嬢様の判断は的確ですので、お気になさらないで下さい」
「彼女たちは有名なアイドルだから、スキャンダルにならないよう配慮してくれたんだと思う」
「衣類に関しては挑戦しがいのある汚れですから、私にお任せください。臭いも完璧に落として後日お届けすると、関係者のかたにお伝えいただけますでしょうか」
「うん、わかったよ」
なんかいつになくイチカが燃えている。困難な目標をクリアすると大きな達成感を得られるけど、今の彼女はチャレンジャー的な心境なのかな。
「ニナも応急手当ありがとう」
「……あの腕、私や精霊じゃどうしようもない。固定して動かないようにするのが精一杯だった」
「シアが言ってたけど、医療施設でもあれ以上のことは出来ないみたい」
「……まだ若いエルフなのに、可哀想」
「治す方法がないか、エトワールさんに聞いてみようと思ってるんだ。だから希望は捨てないでね」
「……うん」
頭を撫でてあげたいけど、僕はまだ汚れを簡単にしか落としてない。ちゃんとお風呂で洗い流してからにしよう。
「ダイチー、お風呂が空いたから入ってきなよ」
「わかったよ、ミツバ」
「廊下とか浴槽は、いくら汚しても平気だからね。気にせずにそのまま歩いてって」
「ありがとう。このお礼はまた今度するよ」
「いいって、いいって。あとが支えてるんだから、行った行った」
こんなふうに軽く言ってくれるなんて、本当にミツバっていい子だな。三者三様だけど、みんなアイリスの優しい部分を受け継いでる。
「主様、私もお湯浴びしておく」
「汚れた手で触ってるし、そうしようか」
僕の横に人化状態のアスフィーが顕現してきたので、一緒にお風呂場へ向かうことにした。なにげにアスフィーと一緒に入るのは初めてかも。スズランは人魚族の子と先に入ったし、僕が洗ってあげるしか無いかな。
いくら人と同じ姿をしてても、この子は刀だからね。一緒に入ったって、何も問題はないはず。それに見た目が小学生になりたてくらいだし、間違いなんておきるはずもない。えぇ、ありませんとも。
◇◆◇
全員が大急ぎで身支度を整え、まずは僕たちだけで迷宮の外へ向かう。学園関係者で責任ある立場の人に事情を話し、人払いをした上で生徒たちを引き渡す予定だ。アイリスの力を知られてしまうけど、話のわかる人なら口止めを、ダメそうなら暗示で忘れてもらうしかない。
この世界だとどうかわからないけど、教育機関というのはスキャンダルを嫌うものだ。特にイメージが重要なアイドルが含まれてる以上、できるだけ内密に事を進めたほうが良いはず。
どう説明しようか考えながら歩いていると、探索者ギルドの玄関から身なりの整った集団が出てきた。出発する前に建物内で見た人がいるから、おそらく学園の関係者だろう。
「すいません、マーレ学園のかたでしょうか?」
「そうですが、君は?」
「僕は中級探索者の大地と申します。学園の生徒が五名、コースを外れて迷子になっていまして。その件でお伝えしたいことがあるのですが」
「生徒たちは無事なんですか!?」
「はい、今は安全な場所で保護しています。あまり大事にしたくないので、できれば代表者のかたとお話できないでしょうか」
「それなら私が話を聞くのじゃ」
後ろの方から出てきたのは、淡い水色の髪をした人魚族の少女だった。いや、着ている服がスーツっぽいし、小柄な女性って呼んだほうがいいのかな。身長はアイリスよりかなり低いから、おそらく百三十センチ台ってとこだろう。
「がっ、学園長。探索者の話など真に受けていいのですか? なにか企んでいるかもしれませんよ」
「生徒が無事戻ってくるなら、多少の要求は受け入れてやるのじゃ。それに見たことろ、ただのハーレムパーティーではないようじゃしな」
この人、学園長だったのか!
見た目は小さな女の子だけど、かなり高齢だったりして?
ということは目の前にいるこの女性って、いわゆる〝のじゃロリ〟だよ。さすが異世界、ファンタジーな存在が目白押しだ。
でもそんな人がトップに立つ学園って、いったいどんな校風なんだろう……
すごく興味があるけど、今は報告を優先しなければ。
「どこか落ちついて話ができる場所を、ご存知ありませんか?」
「それならギルドの個室を、使わせてもらうのじゃ。一人だけ同席させたいのじゃが、構わんか?」
学園長と教務主任の女性が話し合いに参加し、他の先生方は各所への連絡や、生徒たちの引率を担当してもらうこととなった。
「当学園の教員が失礼なことを言って、申し訳なかったのじゃ」
「いえ、突然声をかけて生徒を預かってるなんて言われたら、警戒するのは当然ですから」
案内された部屋は中央に長机があって、両サイドに椅子を置いた会議室のような部屋だ。ドアや壁も分厚かったので、声が外に漏れる心配もないだろう。こちらの意図をしっかり読んでくれた辺り、さすが学園のトップといったところかな。
「中級探索者には粗暴な者も多いが、お主は違うようじゃな」
「探索者になってまだ半年くらいですし、目上のかたには敬意を持って接したいので」
「半年程度で中級に昇格することといい、なかなか見どころのある少年なのじゃ」
地球に住んでたらもう二十一歳になってるはずだから、少年ってわけでもないんだけどね。カメリアみたいに、一晩で年相応の姿に変身したいよ。
「それで、生徒たちなのですが……」
「そちらにおる吸血族の女性が、影の中に匿っている。その理解で構わんか?」
「あら、私の素性を見抜いたうえにスキルまで知ってるなんて、なかなか博識ね」
「これでも長年、学園の長を務めておるからの。他種族に関することは、それなりに学んどるつもりじゃ。それに私は……いや、今は置いておこう」
なにか言いかけてたけど、どうしたんだろう?
この場に関係ないことだから、話が脱線するのを避けたのかな。
「そのご様子だと、過去に起きた歴史のこともご存知だと思いますので、内密にしていただけるとありがたいです」
「ここに連れてきとるのは私の腹心じゃから、この場で見聞きしたことを外部に漏らす心配は無用じゃ。そもそも人魚族は武力を持たぬ種族でな。代わりに情報を武器として、外交をやっておるのじゃ」
諜報員というわけじゃないけど、酒場で歌ってる弾き語りやお店の店員なんかが、治世者の動向や住民たちの噂話といった情報を集めているらしい。そのため機密の取り扱いに関しては、世界で一番厳格とのこと。
これなら僕たちの力を、ある程度知られても大丈夫だろう。そう考えた僕は迷宮内での出来ごとを、学園長のアプリコットさんに伝えていく。
「保護している生徒たちはどうしましょう?」
「お主たちが危惧しておるとおり、公共の場で引き渡してもらうのは避けたいのじゃ。まずは生徒たちに、会わせてもらえんじゃろうか」
「そこにある衝立の影から、中に入れるわよ」
「血が足りぬようなら、出来る限りの協力をするのじゃ」
「私には下僕がいるから、心配には及ばないわ。五片が持つ力を甘く見ないことね」
「ほう……それは凄いのじゃ」
ずっと冷静沈着だったアプリコットさんが、アイリスの左手を見て驚きの表情になる。他種族に詳しいだけあって、五片は始祖だけという情報を知ってたのかもしれない。
少しだけしか話をしてないけど、アプリコットさんは生徒たち一人ひとりを大切にしてるって、伝わってきた。とにかく保護してる五人に会わせて、安心させてあげよう。それに学園長から話をしてもらえば、中の子たちも安心するだろうし。
教務主任は会議室に残ってもらい、僕たちと学園長で影の中へ戻る。そして救出した女の子を見た学園長から、人魚族にまつわる秘密を聞くことになるのだった……
舞台は学園島へ。
次回「第8話 自慢の家族ですから」をお楽しみに!
◇◆◇
(2021/07/13)
アプリコットの身長を140cm台から130cm台に変更。
身長はアイリスより低いから、おおよそ百四十センチってとこだろう。
↓
身長はアイリスよりかなり低いから、おそらく百三十センチ台ってとこだろう。




