第5話 オーバーキルだったかも
誤字報告ありがとうございました!
クロウが迷宮内を飛び回ってくれたおかげで、最後の一人を発見できた。カエル型の巨大なモンスターに捕まって、迷宮の奥へ運ばれているらしい。
アイリスが影から戻ってきた時に危険が無いよう、カメリアとクロウは部屋に残ってもらう。そして僕とシア、更にスズランと精霊たちで追跡を開始。
〈ロック・ガトリング!〉
進路上にいたモンスターの集団へ、石で出来た銃弾をばらまく。走りながら狙いを付ける余裕なんてないし、一体ずつ倒す時間が惜しい。そんな時に便利なのが、こうした連射タイプの魔法だ。機関銃みたいな武器のない世界なので、この手の魔法はエトワールさんにも驚かれた。
モンスターが次々と光に変わりアイテムを落としていくが、僕たちはそれを無視して奥へと急ぐ。
「少しづつ臭いがきつくなってきたね」
「これだけ強い臭いだと、嗅いだだけで状態異常になりそうだ」
「捕まってる方はご無事でしょうか」
クロウの声に反応してたらしいから、他の三人と違って意識があるんだろう。だけどこの臭いの中だと、かえってそれが仇になってるはず。
部屋の前にいたモンスターをアスフィーで斬り伏せ中に入ると、商用バンくらいのサイズがあるカエルのモンスターがいた。部屋の奥にある出口に向かって、ノソノソ歩く姿が気持ち悪い。体は錆びた鉄みたいな色をして、背中に黄色いイボがいくつもついている。上から見たら集合体恐怖をおこしそう……
モンスターの口に咥えられてるのが、さらわれた女の子だ。こちらをボーッと見つめる顔からは生気が抜け、目もうつろになってる。かなり危ない状態みたいだし、まずは彼女を引き離さないと。
「あれは間違いなく変異種だ、慎重にいく必要があるな」
「あのモンスターを動けないようにできる?」
「やってみよう」
〈石の鎖〉
〈拘束〉
シアが魔言を唱えると呪文書が出現し、そこに描き込まれた魔紋が即座に構築される。そして【重畳】スキルで唱えられた次の魔言が発動。二段になった魔紋の帯が、ひとつ目の魔法に付与の効果を生み出す。石で出来た鎖がモンスターの体に絡みつくと、その体を地面に縫い付けた。
――グゲェェェー
モンスターは悲鳴のような声を上げたが、女の子の体に舌を巻きつけて離さない。これは斬ってでも強引に引き剥がすしかないか……
「あっ、まずい!」
「なんだこの煙は、目が開けられないぞ」
目に染みる臭いって、どれだけクサイんだよ! この黄色い煙には、催涙ガスみたいな成分が入ってるのかも。
〈ライト・ブリーズ〉
殺傷力のない弱い風を発動して、部屋の空気を一気に別の出口へ押し流す。背中にある黄色いイボは、臭気の塊みたいだ。ヘタに潰すとこっちにダメージが来てしまう。
「いまのでかなり警戒されてしまったな」
「あのまま突っ込んで助けようと思ったんだけど、まさかあんな手で来るとは思わなかった」
「とりあえず上からの攻撃は控えよう」
「そうなると設置系で下から突き刺すか、雷撃で感電死させるのが一番か……」
どちらにせよ、まずは人質の救出だ。彼女の状態を考えると、これ以上の失敗は許されない。こうなったら搦め手は諦めて、真正面からぶつかってしまおう。
「顔の横を斬ってみる、援護お願いね」
「了解だ」
アスフィーを大上段に構えて、モンスターめがけ疾走する。変異種といっても同じカエル型だから、弾力性のある身体をしてるはず。うまくやらないと他のモンスターと同じように、思った通りのダメージが通らないかもしれない。力より速さを意識して、走りながら集中力を高めていく。
刃の軌道が乱れないよう、まっすぐ振り抜くこと以外の思考は排除だ。理想の振り方を意識すればするほど、剣紋の力で動きに補正が加わる。その効果を信じて、目の前に一本の線を思い浮かべた。
こちらを凝視していたモンスターの視線が、シアの放った魔法に釣られて逸れた今がチャンス!
「せやッ!!」
――ゴパァーッ
顔の横にある少し膨らんだ部分がパックリと割れ、そこからドロリとした粘液がボタボタ落ちる。物質化したマナをあそこに溜めて、女の子たちに向かって吐き出してたのか。
――グゲェェェェー
傷ができてから少し遅れ、モンスターが悲鳴を上げた。痛みで我を忘れているのか、こちらへ向かって舌を伸ばそうとし、咥えていた女の子を離してしまう。
〈水の玉〉
さっきの魔法といい、ナイスアシストすぎるよシア!
横っ面に魔法をぶつけられて怯んだすきに、スライディングしながら女の子をキャッチ。そのまま出口へ向かって走る。そこには世界樹の杖を構え、次の魔法を準備してるシアがいた。
〈雷光の嵐〉
「シア様、魔法がモンスターの表面を滑り落ちています」
「雷撃、あるいは魔法耐性か!? やっかいな!」
「そういえばさっきの魔法も、あまり効いてないみたいだった」
最初に拘束しようとした魔法の鎖みたいに、実体を伴った攻撃は有効なんだろう。水の玉が当たった時も、衝撃自体は受けてたみたいだし。
「設置魔法で下から貫いてみるか?」
「なんかジャンプしそうな体勢になってるし、かわされるかもしれないよ」
「それならどうする、ダイチ」
さっきまでは人質を運んでいたから地面を歩いてたけど、カエル型モンスターはジャンプが得意だ。小さい個体なら剣のいい的になるんだけど、商用バンサイズの体だと一刀両断は無理だろう。
「シアはあの部屋を結界で封鎖して」
「任せておけ」
「スズランはミカンの【爆炎】をカンストさせて欲しい」
「畏まりました、マイ・マスター」
「ラムネはここの温度が上がらないように調整してくれる?」
下手に物理攻撃をして、背中の臭気袋が全部破れたりすると大惨事になるし、それも一緒に無力化してしまう方がいい。
「結界が完成したぞ、ダイチ」
「それじゃあ、いくよ」
〈ヘル・フレイム!〉
星を五つまで上げた魔法スキルが、部屋の中央に超高熱の火柱を発生させた。ジャンプして逃げようとしても無駄だよ、その部屋からは逃げられないから。
魔法の余波はシアの結界が防いでくれてるし、熱はラムネのスキルが緩和してくれている。それでもチリチリと肌を焼くような感覚があった。確実に倒すため、地獄の業火をイメージして魔法を発動したけど、オーバーキルすぎたかも……
――グェェェェェェ……
断末魔の叫び声を上げたモンスターが、蒸発するように消えてしまう。超高温で焼却すると有害成分が出ないって何かで読んだことあるから、臭いの原因物質なんかも全て焼けてしまったはず。迷宮の床や天井はすぐ元に戻るし、放置しておいて大丈夫かな。
とにかく僕も連れ去られた女の子も、臭い粘液でベタベタだ。特に女の子は口に咥えられていたせいで、全身が濡れてひどいことになってる。よく見ると服もうっすら透けちゃってるし、毛布にくるんで運んであげないと。
誘拐や拉致といえばハイ○ース(風評)




