第5話 生きとったんかワレ
四十センチくらいあった体長が十センチくらいに縮んでるものの、カメリアの手の中にいるのは間違いなく迷宮にいた黒い鳥だ。体の大きさを変えられるって聞いてたけど、小鳥サイズまで小さくなれるのか。
でも、なんでまた現れたんだろう。おっぱいサンドで成仏したんじゃなかったのかな。そもそもここはアイリスが作った影の中だし、外から入れるはず無いんだけど……
「浴室に侵入するとは、不道徳甚だしい。二度と甦れぬよう、ここで切り刻んでやる」
「あっ、待ってシア。なんか小さくて可愛いし、消しちゃうのは可哀想だよ」
「だがなカメリア、ここで倒しておかねば被害が広がるだけだぞ」
「駆除はいつでも出来るけど、まず今の状況を整理するのが先よ」
「うぬぬ、仕方がない。少し寿命が伸びたこと、感謝するがいい。ただし変な動きをしてみろ、その場で灰にしてやる」
シアの言動がちょっと悪役っぽくなってきた。僕も前に森で使おうとして怒られたけど、屋内で火の魔法はダメだからね。
「消えてしまった精霊が蘇るのも不思議だけど、そもそもどうして私の影に入れたのかしら」
「それなんですが、この子はどうやらカメリア様と繋がりを持ってしまったみたいです」
「それってカメリアの契約精霊になったってこと?」
「はい、そのようですマスター」
契約石なしで繋がりを持つなんて、僕とスズランみたいじゃないか。僕たちの場合は、お互いに惹かれ合って無意識に契約を結んでる。しかし今回のケースだと、おっぱいへの妄執が原動力になってるはず。それならスズランが第一候補になりそうだけど、精霊同士だから無理だったんだろう。
「よし、すぐに契約解除するんだ。それでこいつは消えるはず」
「ボクの契約精霊なんだから、シアが決めないでよー」
確かにカメリアの言うとおりだ。今のところ黒い鳥も大人しくしてるし、もしかしたら契約が成立したことで、性格が変わってしまったかもしれない。とりあえず彼女の意思を聞いてみないと……
「カメリアはどうしたいの?」
「えっと、せっかく契約してくれたんだし、できれば一緒にいたいんだけど。だめかな?」
「カメリアがそうしたいのなら飼ってもいいわよ。ただし、躾はしっかりすること。いいわね」
なんかペットを飼うみたいな感じの会話なのが面白いな。鳥の姿をしてるし、こうなってしまうのも仕方ないか。それにやっぱりアイリスって優しい。
メロンがいるから普通の精霊とは契約しないって言ってたけど、ちょっと変わった子が来てくれて良かったかも。なにか特殊なスキルとか持ってそうだけど、カメリアの助けになりそうなものってあるのかな。
「だったら、この子にも名前をつけてあげなきゃ。ねぇ、ダイチが考えてよ」
「えっと、僕がつけてもいいの?」
「うん! ダイチがつけてくれたら、イチカ達みたいに成長するかもしれないし」
「マスターが与えてくださる名前です、きっとこの子にもいい影響を与えますよ」
うーん、また変なことになりそうだけど、あんなに期待のこもった目で見られたら断れない。体の色は艶のある黒だし、クチバシも真っ黒だ。最初に見た時カラスの印象を持ったし、やっぱりそれをつけてみよう。
「それならクロウって名前はどうかな」
「それはどういう言葉なのだ?」
「迷宮で見たこの子って、僕たちの世界にいたカラスって鳥に似てたんだ。それの英語読みがクロウなんだよ」
「なんか響きがカッコイイし気に入ったよ! じゃあ君の名前は今日からクロウね」
カメリアがそう宣言した瞬間、黒い鳥の体が光を放つ。やっぱりこうなったかー。何かおきるって思ってたよ、うん。
僕に変な伏在スキルがないか、本気で調べたほうがいいかも。
そんなことを思ってるうち、光がスッと収まった。
「ふおぉぉぉぉぉー、みなぎってきたー!!」
「この子喋ったよ!?」
カメリアが驚きの声を上げながら固まってるけど、姿が変わらないまま話すなんて僕もびっくりだ。みんなも唖然とした表情でクロウのことを見てるし。
それにしても姿は鳥なのに人と同じ声で喋るとか、発声器官はどうなってるんだよ。しかも、かなりイケボなのがずるい! 僕だってそんな声で話したいのに。
「女性の胸に固執してたのは、やはり男だったからかっ!」
「精霊に性別なんて無いぜ! 俺様は俺様だからな、唯一無二の存在ってことだ」
「そうなの? スズラン」
「人と契約する精霊は、子を思う母の意識が強くなるので、みな女性ですよ。動物と契約する精霊については、申し訳ありませんが、わかりかねます」
確かにスズランて母親っぽいというか、母性がものすごく強いもんね。きっとそれが、まろやかな部分に出てるんだと思う。
「そういや、そっちの姉ちゃんとは契約できなかったんだが……よく見るとあんた、俺様と同類だな?」
「はい、私はこちらにいるマスターと契約している特級精霊です」
「なんだよそりゃ!? 精霊の格が上がるとそんな姿になれるのかよ! 俺様もそっちで頑張っとけば、自分のおっぱい揉み放題だったのに、失敗したぜ!!」
おっぱい好きは全く治ってなかった!!
むしろ喋れるようになった分、欲望がストレートに伝わってくる。
起きたら女の子になってたって、よくある創作物の主人公じゃないんだから、自分の胸を触っても仕方ないと思うんだけどな。仮に僕が女性になったらどうだろう?
あー、うん、大きかったら揉んでみるかも。
「クロウはボクの契約精霊ってことでいいんだよね?」
「おう! 俺様を包み込んでくれた柔らかさに忠誠を誓うぜ。よろしく頼むな、ご主人さま」
「それで、あなたはなにが出来るのかしら?」
クロウが見せてくれたスキルも、また特殊なものばかりだ。
鳥瞰:☆☆☆☆☆
夜目:☆☆☆☆☆
遠視:★★★☆☆
天駆:★★★★☆
[変化]
星が五つあるってことは、クロウも特級精霊ってことになるのか。しかも星が四つ埋まってる項目があるし、進化石も使わず自力で上級精霊になってたってことになる。おっぱいパワーって凄いぞ。
【鳥瞰】は契約者と視覚の共有ができる。つまりクロウに上空から偵察してもらえるってことか。なんかドローンみたいでいいな、これ。
そして【夜目】が暗い場所の視界確保で、【遠視】がいわゆるズーム機能。これがあったから、遠くから胸の大きさを見極められたっぽい。この三つは【鳥瞰】で共有できるから、カメリアの索敵能力が大幅アップする。
四つ目の【天駆】が、例の高機動飛行だ。やっぱり羽ばたきの力でなく、スキルで飛んでたんだな。そうじゃなかったら、直角に動きを変えるとか無理だもんね。
エクストラスキルの【変化】は、体の大きさを変化させていた能力。どうやら契約と命名で性能が上がってるらしく、今ならかなり大きな姿になれるとのこと。
「俺様の力はどうだ。そこいらの精霊どもには負けないぜ」
「すごいね、クロウ。だけどスズラン達やシアの精霊もボクの大切な仲間なんだから、ちゃんと仲良くしてね」
「任せときな! 特にスズランとは仲良くやれそうだ」
「それよりカメリア、あなたは先にお風呂に入ってきなさい。そのままだと風邪をひいてしまうわよ」
クロウが出てきたせいで忘れてたけど、そういえばバスタオルを巻いただけだった。いくら体が丈夫なカメリアでも、体を冷やすのは良くない。
そんな事を考えながら改めてカメリアの姿を意識すると、タオルの裾から覗く足とか露出した肩が色っぽすぎる。シアのセリフじゃないけど、実にけしからん。わがままボディーってやつだ。
「よっしゃー、俺様も付き合うぜ!」
「待てクロウ。精霊のお前は風呂に入る必要など無いだろ」
スズランはお風呂に入るけど、これは言わないほうがいいかな。なんでも僕のために体を綺麗にしておきたいらしい。お風呂上がりはスズランの落ち着く香りが強くなるから、毎日ぐっすり眠れるのはそのおかげかも。
「ご主人さまの体を洗ってやるのは、契約精霊の役目ってやつだからな。こればっかりは譲れないぜ」
「下心丸出しで言われても信じられるか! お前はここで待機だ」
「へへーん。俺様に命令するなら、もっとおっぱいを育ててからにしな。それじゃあ、あばよ……って、あれ? 動けないぞ。なんでだ!?」
「ボクお風呂に入ってくるから、後でいっぱい話そうね」
「あっ、待ってくれ! 俺様を置いていかないでくれよーーーーー」
何故か動けなくなったクロウの声が、リビングに虚しく響き渡る。スズランは笑顔でこの光景を見てるけど、何となく僕にも理由がわかってしまった。
クロウ(CV:某うさぎ喫茶店のオーナー)みたいな声のイメージで書いてますw
どうしてクロウは動けなくなったのか、明日公開予定の次話「全てがおっぱいで説明できる」をお楽しみに。




